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隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
第4章 ブレイピア決戦
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第11話 時空間魔法の理


――重い一撃が、空気を裂いた。


ユウジの大剣が唸る。


振るわれるたびに、地面が抉れ、瓦礫が弾け飛ぶ。


だが


「……っ」


ユウトの姿は、そこにはない。


紙一重


わずかな差で、すべてを躱していく。


「おいおい!!」


ユウジの口元が歪む。



「躱すしか脳がねえのかよお!!」


「……チッ」




だがその言葉に、ユウトは返さない。


いや――返せない。


ただ、避ける。


避け続ける。


それだけで、限界だった。





数秒の静寂。


そして。


ユウジの気配が変わる。


大剣に、どす黒い魔力が絡みつく。


空気が歪む。


「――黒衝斬!!」


振り下ろされた刃から。


無数の斬撃が放たれる。


一つではない。


二つでもない。


幾重にも重なる、暴力の奔流。


空間ごと切り裂くような斬撃が、ユウトへと殺到する。


「……ッ!!」


ユウトは歯を食いしばる。


掌を組み、印を結ぶ。


――間に合うか。


いや、間に合わせる。


「時空間魔法――」


世界が、軋む。




「――加速神域」




瞬間


ユウトを中心に、空間が歪む。


時間の流れが、変質する。


遅くなる世界と速くなるユウトの身体。




だが───


「させるかあ!!!」


ユウジが叫ぶ。


大剣を地面に突き刺した瞬間――


加速する世界の中に、無数の魔法陣が展開された。


「……ッ!?」


空間の内側。


逃げ場のない領域。


そこに、無数の斬撃が“生成”される。


「躱し……きれない……!」


遅くなった世界の中で。


それでもなお、数が多すぎる。


回避が、追いつかない。


――一閃。


「ぐあぁっ!!!」


脇腹を裂かれる。


衝撃が体を貫く。


意識が揺れる。


加速神域が、音を立てて崩壊した。





地面に伏すユウト。


荒い呼吸。


滲む血。


その前に、影が落ちる。


ユウジだった。


大剣を肩に乗せ、ゆっくりと近づく。


「おいおいどうした?」


ニヤリと笑う。


「逃げてばっかりじゃあ、つまんねえなぁ!」


ユウトは、震えながら立ち上がる。


視線だけは鋭く、ユウジを捉えていた。


その瞬間


ユウジは足元の剣を蹴り上げる。


カラン、と音を立てて。


ユウトの前に転がった。


「ほら、構えろよ」


静かに


だがどこか、懐かしむように。


「昔みたいに戦おうぜ……兄貴」


剣を構えるユウジ。


その姿は。


かつての、あの日と同じだった。





ユウトの視線の先。


そこにあるのは、ただの剣。


だが


――重い。


まるで、茨のように。


触れれば、心を抉られるような。


震える手で、柄を握る。


握ろうとする。


だが、




――カラン。


乾いた音が響く。




剣は、再び地面に落ちた。


「……っ」


握れない。


腕が、動かない。


身体が、拒絶している。




「……あ?」




ユウジの目が見開かれる。


剣と、ユウトを交互に見る。


「もしかして……握れねえのかよ」


その声が、低く落ちる。


そして。


次の瞬間。


表情が歪んだ。


怒り、憤怒そして狂気。




「……ふざけんじゃねえ!!!」


大地が震えるほどの咆哮。


「オレは……兄貴を超えるために……」


拳が震える。




「アンタに勝つ為だけに剣を振るってきた!!!!」




叫びが、空を裂く。


だが。


ユウトは俯いたまま、何も言えない。


「なのにアンタはソレかよ!?」


「何のために今までオレたちは戦ってきた!?」


怒りが、ぶつけられる。


叩きつけられる。


「……そうか」


ユウジが、低く呟く。




「アンタがソレなら……仕方ねえなぁ!!」




瞬間─────


消えた。


次の瞬間には。


ユウトの懐。


「――ッ!!」


魔力を纏った拳。


躱せない。




「がっ――!!」


直撃。


体がくの字に折れる。


そのまま


瓦礫を突き破り、壁へと叩きつけられる。


粉塵が舞う。


崩れる音。


静寂。





「……そう……だよな」


崩れた視界の中で。


ユウトは呟く。


「俺のせいで……ユウジは……」


意識が、遠のく。


───残るのは、後悔だけ。





――その瞬間。


世界が、消えた。






「……は?」


現れたのは、ただ白い空間。


音も、風も、温度もない。


「ここは……どこや……?」


見渡す。


どこまでも続く白。


ただ。


コツ、コツ……


時計の針が落ちるような音だけが、響いていた。


数秒。


いや、数分か。


時間の感覚すら曖昧な中。


――足音。


誰かが、歩いてくる。


白の中から、影が滲む。


形を成す。


現れたのは。


紺色の長髪。


そして――


凛々しい目と整った目鼻立ちをした女。


ユウトの目が見開かれる。


女は、微笑んだ。


どこか懐かしむように。


「やあ、初めましてユウト君」


一拍置いて。


「……いや、久しぶり、かな?」


「アンタは……確か……」


記憶の奥。


ぼやけた輪郭。


だが確かに、知っている。


女は軽く頷く。


「そう」


静かに。


そして確信を持って。


「君をこの世界に呼び寄せた者」


一歩、近づく。


「そして――」


時計の音が響く。




「君に“時空間魔法”を与えた者だよ」




白い空間に、ただその声だけが静かに残った。

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