表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
第4章 ブレイピア決戦
34/39

第10話 真打登場 後編・蠢く策略


――兄弟が刃を交えようとする、その裏で。


王都ブレイビアは、すでに戦場と化していた。


至る所で悲鳴が上がる。


瓦礫が崩れ、炎が上がり、血の匂いが広がっていく。


放たれた魔獣たちが、街を蹂躙していた。


「ぐああああっ!!」


巨大な影が振るった拳によって、数人の冒険者が一瞬で吹き飛ばされる。


地面を転がり、壁に叩きつけられ、動かなくなる。


それを見て、後衛の一人が震えた。


「な、なんだよあれ……」


視線の先。


そこにいたのは。


デーモンオーク。


通常のオークとは比べ物にならない体躯。


筋肉は膨れ上がり、皮膚は黒ずみ、眼は狂気に染まっている。


一歩踏み出すだけで地面が軋む。


その存在に。


冒険者たちの足が止まる。


恐怖。


明確な「死」のイメージ。


デーモンオークが、ゆっくりと拳を振り上げる。


目の前の冒険者へ。


振り下ろされれば、即死。


――その瞬間。


首が跳ねた。


鮮血が弧を描く。


巨体が遅れて崩れ落ちた。




「ボサっとしてんじゃねえ!」




振り返る暇もなく。


そこに立っていたのは。


レッカ。


赤い長髪を揺らし、剣を振り抜いた姿勢のまま、鋭く周囲を睨む。


「次来るぞ、構えろ!!」


だが…その背後。


空気が歪む。


二つの影が、同時に襲いかかった。




「――オラァ!!!」


轟音。


背後から振り下ろされた巨大な斧が、二体の魔獣をまとめて叩き潰した。


血と肉片が飛び散る。


その中心に立っていたのは。


ラセツ。


黒髪短髪、無骨な巨躯。


斧を肩に担ぎながら、低く息を吐く。


レッカは一瞬だけ目を向ける。


「……悪い」


短く礼を言う。


ラセツは周囲を見渡した。


「魔獣の数が多すぎる……これじゃ埒が明かない」


街のあちこちで、同じような戦いが起きている。


だが異常だった。


本来、この辺りに出現するはずのない――


高ランクの魔獣ばかり。


王国兵士だけでなく、歴戦の冒険者たちですら押されている。


これは、偶然ではない。


「……仕組まれてるな」


ラセツが低く呟く。


レッカも歯を食いしばる。


「だろうな……クソが」


その時だった。


風が、止んだ。


――何かが、いる。






場面は変わる。


王都ブレイビア上空。


空の遥か高みから。


一人の影が街を見下ろしていた。


「ん〜……」


優雅に微笑む。


その瞳は、まるで遊戯を楽しむ子供のよう。


魔王軍幹部――イデア。


「やはり、あの二人……厄介ですねぇ」


視線の先には。


レッカとラセツ。


想定以上の戦闘力。


想定以上の抵抗。


だが、イデアは口元を歪める。


「ですが……時間の問題」


指先で顎を軽く叩く。


「そろそろワタクシも動きましょうか」


その瞬間。




――キィンッ!!!




鋭い金属音が空を裂いた。


イデアの表情が一瞬で崩れる。


「……なっ」


目の前。


空中に。


人影が現れていた。


赤い長髪。


鋭い眼光。


剣を振り抜いた姿勢。


「てめえが……元凶か」


レッカ。


「なっ……なぜここまで!?」


イデアの声が揺れる。


だがレッカは答えない。


ただ。


間髪入れずに斬りかかる。


空中であるにも関わらず。


その動きは地上と変わらない。


否。


それ以上に鋭い。


「オラァッ!!」


剣閃が空気を裂く。


だが…イデアはそれを、紙一重で躱す。


その目が細められる。


「ほう……」


わずかに楽しげな声。


「アナタのその魔術……面白いですねえ」


レッカの瞳が揺れる。


イデアは続ける。



「空間に漂っている魔力を圧縮し……自身と対象の距離を一瞬で縮める」


「転移に近い挙動……ですが厳密には違う」



口元が歪む。


「――“距離を消している”のですね」


レッカの目が見開かれる。


「それが……どうした!!!」


再び踏み込む。


一直線。


迷いのない斬撃。


だが、イデアは微笑んだ。


「ですが――【弱点】があります」


ヒラリと回避。


そのまま。


レッカの背後へ滑り込む。


「非常に高速、かつ鋭利……」


掌に魔力が集まる。




「ですが……あまりに【直線的】すぎる」




放たれる衝撃波。


「なっ……」


直撃。


レッカの体が弾き飛ばされる。


空中で制御を失い。


そのまま、地上へと叩き落とされていく。


「ちく……しょう……」


意識が遠のく中。


視界が暗転する。


上空。


それを見下ろしながら。


イデアは静かに笑った。


「邪魔も居なくなったことですし……」


ゆっくりと手を上げる。


「そろそろ始めますか」


その手に、膨大な魔力が集まる。


そして、自らの身体へ打ち込んだ。


光が弾ける。


形が歪む。


骨格が変わり、肉が軋む。


数秒後。


そこに立っていたのは。


――ある男に酷似した姿。


「ククク……」


歪んだ笑み、その姿のまま。


ゆっくりと。


王城の方向へと向き直る。


静かに、だが確実に。


崩壊の足音が、近づいていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ