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隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
第4章 ブレイピア決戦
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第8話 「強者の提案」


「遅え!!」


 ユウジの怒号と同時に、ティナの斧が弾き上げられた。


 甲高い金属音が戦場に響く。


 ガキィンッ!!


 火花が散る。


 二人はすでに数分間、互いに一歩も譲らない激戦を繰り広げていた。


 ティナの斧術は鋭く、無駄がない。

 低い姿勢から一気に踏み込み、斧の重みを乗せて斬り上げる。軌道は洗練されており、一撃一撃が確実に急所を狙っていた。


 だが――


 ユウジの剣は、それを力でねじ伏せる。


 荒々しく、野性的な剣術。

 型などない。ただ圧倒的な膂力と反射で振るわれる刃が、暴風のようにティナへ襲いかかる。


 ドォンッ!!


 斧と剣がぶつかるたび、地面が震えた。


 ティナは身を低くして横薙ぎに斧を振るう。


 ユウジはそれを剣の腹で受け流し、そのまま蹴りを叩き込んだ。


 ティナは後ろに跳び、瓦礫を蹴って再び突っ込む。


 斧が唸る。


 ユウジは笑う。


 ガキィン!!


 ガキィン!!


 ガキィィンッ!!


 斧と剣が何百回もぶつかり合う。


 火花が散り、石畳が砕け、周囲の建物の壁が衝撃で崩れ落ちていく。




 だが――


 ユウジの口元が、ゆっくり歪んだ。


「おいおい」


 剣を弾きながら言う。


「この程度でへばってもらっちゃあ……」


 ティナの呼吸がわずかに荒い。


 肩が上下している。


 そのわずかな変化を、ユウジは見逃さない。


「困るぜっ!!」



 その瞬間。


 ユウジの姿が消えた。


 ――否。


 消えたように見えただけだった。


 次の瞬間には、ティナの背後にいた。


 振り下ろされる巨大な剣。


 ティナは反射的に斧を構える。


 ガキィン!!




 だが――


 受け止めたのは、隻腕の右側だった。


 体勢が崩れる。


「ぐっ……!」


 ユウジの剣がそのまま押し込まれた。


 ドォンッ!!


 ティナの身体が吹き飛ぶ。


 建物の壁を突き破り、瓦礫の山へ叩き込まれた。


 粉塵が舞い上がる。




 ユウジはゆっくりと剣を肩に担いだ。


 顔には、恍惚の笑み。


「はぁ〜……」


 心底楽しそうに息を吐く。


「最高だなァ……」


 瓦礫の山へ向かって、大声で呼びかける。


「なあティナ!!」


 数秒の沈黙。


 そしてユウジは笑いながら言った。


「俺様は今!!とても面白い事を考えた!!」


 瓦礫の中。


 白い髪が揺れる。


 ティナがゆっくり立ち上がる。


 その姿を見て、ユウジは満足そうに笑った。


 そして――


 ゆっくり口を開いた。


「ティナ……」




「お前も【魔王軍】に入れ」




 ティナの目が見開かれる。


 ユウジは構わず続けた。


「お前は強え……」


「だが、もったいないんだよなあ」


 視線が下がる。


 ティナの右腕。


 ――そこにあるはずのない腕。


 ユウジはニヤリと笑った。




「その【右腕】」


「元に戻したくないか?」




 ティナの拳が強く握られる。


 ユウジはそれを見てさらに言葉を重ねる。


「もし腕が戻ったなら……」


「それはとても嬉しいことじゃないか?」


 ゆっくりと歩きながら語る。



「簡単に飯が食える」


「物が持てる」


「周囲の目が気にならなくなる」



 そして笑った。


「そしてなにより……」


 剣を肩に担ぐ。


「最高の状態で戦える」


「それは強者にとって素晴らしいことだ!!」


 一瞬。


 ユウジの目が遠くを見る。


「かつては俺もそうだった……」


 だがすぐに視線を戻した。


「ティナ!!」


 腕を広げる。


「お前も来い!!」


「そして俺と――」


 瞬間。


 閃光が走った。



 ガキィィン!!



 激しい金属音。


 ユウジの剣が斧を受け止めていた。


 ティナが目の前に迫っている。


 鬼気迫る表情。


 殺意そのものだった。


 そしてティナは言った。


「なるわけ……ない」




 剣と斧が弾かれる。


 火花が散る。


 二人は一定の距離まで下がり、睨み合った。


 ユウジは――


 笑った。


「だよな」




 その声には、どこか満足そうな響きがあった。


 数秒の沈黙。


 だがその膠着を破ったのは――ティナだった。


 瞬間。


 姿勢を極端に低く落とす。


 斧を構える。


 それを見て、ユウジの目が輝いた。


 剣に黒い魔力が集まる。


「技のぶつかり合いか!!」


 狂気の笑み。


「おもしれぇ!!」


 ティナは静かに息を吐いた。


 全神経を研ぎ澄ませる。


「……これで決める」


 そして――


 二人が同時に踏み込んだ。



「轟閃波!!」


「黒瘴斬!!!!」



 白き少女と黒き剣士が――


 世界を揺るがした。

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