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隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
第1章 始まりの日
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第3話 〜道中・ゴブリン戦〜


受けた依頼は、Eランク。

「ゴブリン討伐」。


数は四、うまくいけば五。

駆け出しでも受けられる、拍子抜けするくらい簡単なやつや。


……まあ、妥当やろ。


戦闘職やない俺と、

身元不明で登録もしてへん片腕の女の子。

いきなり危険度上げる理由は、どこにもない。


王都ブレイビアの門を抜けると、

街の喧騒は一気に遠のいた。


石畳が土の道に変わり、

畑と低い森が続く、よくある郊外。


「……静かやな」


そう言うと、

ティナは前を見たまま小さく頷く。


「ブレイビアが、騒がしすぎる」


「それは確かに」


しばらく、足音だけが続く。


この沈黙、

気まずいわけやないけど――

放っといたら、ずっとこのままな気がした。


歩きながら、俺はそっと尋ねた。

「なあ、あんた……名前、なんて言うんや?」


ティナはちょっとだけ眉をひそめ、振り返る。

「……ティナ」

短く、淡々と返すだけだ。


「ティナか……ええ名前やな。よろしくな、ティナ」

俺は笑みを浮かべながら歩く。

だが、数秒後に気まずい雰囲気が漂うそこで


話題、変えよ。


「そういやさっきから思ってたんやけど」


「……なに」



「これまで、どんな感じで生きてきたん?」


ほんまに軽い調子で聞いたつもりやった。


「どこから来たんか、とか」

「どれくらい一人でやってたんか、とか」


ティナは、少しだけ歩調を緩めた。


……ほんの一瞬。


「……必要?」


「いや、義務とかやないで」

「単なる興味や。相棒やしな」


「……」


間。


「魔族を、狩っていた」


「うん」


「食べて、寝て」

「動けなくなるまで、戦っていた」


「……そっか」


それ以上、続かへん。


「村のこととかは?」


「……」


あ、これは踏んだな。


「悪い。今のは――」


「気にしていない」


淡々とした声。

でも、言葉が短すぎる。


「もう、ないから」


それだけ。


俺は、それ以上聞くのをやめた。


――聞かれ慣れてる答えや。

しかも、答える気のないやつ。



「そういやさっきから思ってたんやけど」


「……なに」


「俺の喋り方、そんなに気になる?」


ティナが、ぴたりと立ち止まった。


振り返って、

まっすぐ俺を見る。


「……変」


「即答やな」


「この国の言葉じゃない」

「聞き取りにくい」


「関西弁や」


「……?」


「あー……俺の故郷の喋り方みたいなもんや」


「ここには、他にいない」


「せやな」


ちょっと苦笑する。


「耳障りやった?」


「……少し」


正直やな。


「でも」


一拍置いて。


「……分かりやすい」


「お」


「嘘をつく時と、つかない時」

「声の調子が、違う」


……鋭いとこ突くなあ。


「よう見てるやん」


「……見ている」


「せやったら、この喋り方も慣れてくれ」

「直す気、ないねん」


「……頑固」


「お互い様やろ」


そう言うと、

ティナはほんの一瞬だけ、目を伏せた。


「……ユウトは」


「ん?」


「なぜ、自分から冒険にでない?」


歩き出しながら、ぽつり。


「冒険に出れば、良いのに」


「それ、よう言われる」


俺は空を見上げる。


「…無理してまうからな」


「……無理?」


「せや」


「俺は、壊れたことあるねん」

「一回な」


ティナは、それ以上聞いてこんかった。


代わりに、前を向いたまま言う。


「……なら、私の後ろにいて」


「斧は、私が振るう」


「おおきに」


「その代わり」


赤い瞳が、ちらりとこっちを見る。


「勝手に、死なないで」


「了解」


森の奥から、

かすかな物音が聞こえた。


低い唸り声。

枝を踏み折る音。


「……来たな」


「……うん」


ティナの手が、斧の柄を握る。


俺は、そっと魔力を整えた。


――Eランク、ゴブリン討伐。


拍子抜けするくらいの依頼のはずや。


せやけど。


「最初の一戦や」


小さく呟く。


「……行こか」





───────




森に一歩、踏み入れた瞬間やった。


「……三」


ティナが、低く呟く。


俺が気配を掴むより早い。

次の瞬間、茂みが揺れた。


ゴブリン。

粗末な槍を持ったのが二。

少し遅れて、奥から一匹。


「――来るで」


言い終わる前や。


音が、跳ねた。


ティナの足が地面を蹴った瞬間、

乾いた破裂音みたいな踏み込み。


速い、やない。

短い。


距離が、一気に消える。


最初のゴブリンが、槍を突き出す――

その半拍前に、斧が振り下ろされていた。


ゴン、という鈍い音。


刃じゃない。

側面。


ゴブリンの身体が、

“吹き飛ぶ”って表現が一番近い。


「ぎ――」


声になる前に、

木に叩きつけられて動かなくなった。


二匹目が、悲鳴を上げる。


逃げようと、身を翻した瞬間――

ティナの身体が、もう横にいる。


斧が、横薙ぎ。


空気が唸る。


当たったのは、胴。

結果は、同じ。


三匹目は、

事態を理解する前に終わった。


踏み込み。

一振り。

終わり。


時間にして、五秒もない。


……俺は、魔力を構えたままやった。


解除するのが、遅れるくらい。


「……終わった」


ティナが、淡々と言う。


息は、乱れてない。

肩も上下してへん。


斧を地面に下ろして、

周囲を一度だけ確認する。


完全に、狩りの動作や。


「……」


正直、言葉が出えへん。


瞬発力。

パワー。

判断の速さ。


どれも“強い”やない。


過剰や。


「……支援、いらんかったな」


俺がそう言うと、

ティナは一瞬だけ、首を傾げた。


「……使う時間が、なかった」


「せやな」


それ以上でも、それ以下でもない。


Eランクのゴブリン討伐。

拍子抜けするくらい、簡単なクエスト。



――やけど。


俺は、内心で確信してた。


この子は、

“本気”を一度も出してない。


斧の刃を、

一度も見せてへんのやから。


「……これで、終わり?」


ティナが、こちらを見る。


赤い瞳。

さっきより、ほんの少しだけ――

警戒が薄れている気がした。


「せやな」


俺は苦笑する。


「次は、もうちょい出番欲しいわ」


「……期待しないで」


「それは無理や」


森を抜ける風が、

少しだけ冷たくなった。


初クエストは、

問題なく終了。


せやけど――

俺の中で、何かがはっきりした。


えらい相棒を引き当ててもうた。

第3話お読み頂きありがとうございます。^^

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