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隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
第4章 ブレイピア決戦
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第6話 新 時空間魔法


 ユウトは半ば引きずられるようにして、王国城の奥にある一室へと連れて来られていた。


 扉が勢いよく開く。


「ここです!!」


 中に入るなり、アスミがくるりと振り返った。まるで子供が自分の秘密基地を見せびらかすかのように、両手を広げて部屋を紹介する。


「ここが王国城の魔術研究室です!」


 ユウトはゆっくりと辺りを見回した。


 いくつも並ぶ質素な木の机。その上には、魔力を帯びた石や古びた資料、書きかけの魔法陣の紙などが無造作に散らばっている。研究室というより、誰かの執念が積み重なったような場所だった。


「……」


 しばらく眺めていたユウトは、ふと首を傾げる。


「この部屋、他に研究員おらへんのか?」


 アスミの肩がピクリと動いた。


「えっ、あっ、その……!」


 少し慌てた様子で手を振る。


「も、もう一人います! いますよ! ただ、その……現在他国に出張中でして!」


 ユウトは数秒アスミの顔を見つめ、ふっと息を吐いた。


「……班員少ないんやな」


「ち、違います!!」


 アスミは頬を膨らませる。


「う、ウチは少数精鋭なんです!!」


 拗ねたように腕を組む姿に、ユウトは苦笑した。


 だが、アスミはすぐに気を取り直すようにパンッと手を叩いた。


「さあ、本題に入りましょう!」


 そう言うと、机の上に置いてあった石を次々と手に取り始める。そしてユウトの周囲に円を描くように、丁寧に配置していった。


「な、なんやこれ」


 困惑するユウト。


 アスミは眼鏡をクイッと上げ、さも当然のように言う。


「この魔力のこもった石……【魔石】と呼びましょうか」


 そして得意げに続けた。


「これが無いと【禁術】は使えないのです!」


「そ、そうなんや……」


 ユウトは曖昧に頷く。


「で、俺はいつまでここに立ってればええの?」


 するとアスミは、まったく迷いなく答えた。


「2週間です」


「2週間!?」


 ユウトの声が裏返る。


「それやと……防衛戦に間に合わんわ!!」


 だがアスミは、まるでその反応を予測していたかのように胸を張った。


「ええ! ですがユウトさんには【時空間魔法】がありますので!」


 人差し指を立てる。


「寝ずに頑張れば三日で終わります!」


「……は?」


 ユウトは完全に面食らった顔をした。


 拳をゆっくり握る。


 ――時空間魔法。


 その代償の重さを、ユウトは誰より知っている。


 だがアスミは、そんな彼の表情など気にも留めないように続けた。


「ですがユウトさんが苦しむ必要はありません!」


「……どゆことや?」


 アスミはふふーん、と鼻を鳴らした。


「今までの時空間魔法【加速神域α】では、範囲内の負荷対象をユウトさんだけにしてたそうですが……」


 魔石を指差す。


「今回はこの【魔石】達だけを負荷対象にすればいいんです!」


「つまり――」


 眼鏡がきらりと光る。


「ユウトさんは寿命を削ることなく!! 時空間魔法を使えるようになります!!!」


 ユウトの目が大きく見開かれた。


 ……そうだった。


 今までは無意識に、自分だけが負荷を背負う形になっていた。


 それはユウトの心の奥底にある、ある感情のせいだった。


 ――自分を捨ててでも戦う。


 その考えは、いつの間にか彼自身を縛る“呪い”になっていた。


 負荷を他に移す。


 そんな発想すら浮かばなかったのだ。


 ユウトはハッと我に返る。


「……そ、そうやな」


「も〜!!」


 アスミが頬を膨らませた。


「ユウトさん! それ返事になってないですよ!」


 ぷんぷん怒りながら、また魔石を調整し始める。


 しばらくして。


「ふぅ……」


 アスミは額の汗を拭った。


「準備完了です!」


 ユウトはゆっくり掌印を組む。


 深く息を吸った。


「時空間魔法――」


 そして静かに詠唱する。


「開」


「加速神域α」


 瞬間。


 魔法陣が展開された。


 赤い光が研究室を染める。魔法陣は数秒後、ユウトの周囲で高速回転を始めた。


「おおぉ〜!!」


 アスミが目を輝かせる。


「これが時空間魔法……!」


 恍惚とした声を漏らす。


 だが、その興奮は長く続かなかった。


 パキッ


 小さな音が響く。


 次の瞬間。


 魔石にヒビが入り始めた。


 パキパキパキッ!!




「ユウトさん!!!」




 アスミが叫ぶ。


 だがユウトは極限の集中状態に入っていた。声に反応するのが数テンポ遅れる。


 ――アスミの声でようやく意識が戻った。


 その数秒後。


 ユウトの視界がぐらりと揺れる。


「ユウトさん!大丈夫ですか!」


 アスミが駆け寄る。


 ユウトはよろめきながらも立ち直った。


「ああ……大丈夫や」


 そう言ってみせるが、アスミの不安な表情は消えない。


「このままじゃ……」


 アスミが弱く呟いたその時だった。





 ギィ……


 研究室の扉が静かに開く。


「難航しているようだね」


 現れたのは王国騎士団団長――ユーリだった。


「首尾はどうだい? アスミ」


 アスミは俯きながら答える。


「……失敗です。魔石が耐えられませんでした」


 ユーリは顎に手を当て、数秒考える。


 そしてふと顔を上げた。




「なら」


「僕の魔力を使いながら、僕と魔石を負荷対象にすればいいんじゃないかな?」




 その言葉を聞いた瞬間――


「……ふざけんな!!」


 ユウトが声を荒げた。


「勝手に自分の命入れてんじゃねえよ!」


 だがユーリは冷たく返す。




「それは【君も】じゃないか?」




 ユウトが言葉に詰まる。


 ユーリは静かに続けた。


「もはやこの問題は、君だけの話じゃない」


「……王国の、いや人間全員の命に関わる問題なんだ」


「それでもや!!」


 ユウトは反論する。


「お前だって、大切な部下や王様がおるやん!! それに――」


 ユーリはユウトの肩に手を置いた。




「大切な人は、君にもいるだろ?」




 ユウトの喉が詰まる。


 脳裏に浮かんだのは――


 ティナ。


 ユーリは少し目を伏せる。


「それに……僕は【もともといない人間】なんだ」


「もし命が消えても、悔いはないさ」


 アスミが顔を伏せる。


 二人の間に何かある。


 だがユウトにはまだ分からなかった。


 沈黙を破るように、アスミが声を上げる。


「そ、それなら私だって魔法使いの端くれです!!」


「団長とユウトさんだけカッコつけないでください!!」


 ユーリが小さく笑った。


「フフッ……そうだね」


 その中性的で整った笑顔を見たユウトは、なぜか無性にイラッとした。


「? どうしたんだいユウト」


「なんでもねーよ!」


 ぶっきらぼうに答える。





 やがて三人は、三角形を描くように魔石を囲んで立った。


 ユウトが二人を見る。


「それじゃあ準備はええか?」


「はい!」


「ああ」


 ユウトは息を整える。


「いくで……」


 掌印を組む。


「時空間魔法」


「開」



「加速神域Δ《デルタ》」




 魔法陣が再び展開される。


 戦争まで――


 あと三日。

お待たせ致しました!

6.5話を出した後の7話でブレイピア決戦、開戦致します!!

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