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隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
第3章 浜辺での因縁
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第2話 水着回!?



「「海だーーーー!!」」





 ほぼ同時だった。


 浜辺に足を踏み入れた瞬間、水着のユウトとライトが両手を上げて叫ぶ。

 波打ち際まで全力で駆け出し、子どもみたいにはしゃいでいる。



「ちょ、ちょっと待てって!」

「滑るぞユウト!」



 砂を蹴散らし、笑い声が潮風に混じる。




 ――ブレイビアビーチ。

 王都ブレイビアから南へ約五十キロ。

 宝石を砕いたように澄んだ海と、白い砂浜が広がる王国屈指の海岸地帯だ。



 沖合まで透明度は高く、晴れた日には海底の影すら見える。

 海産物は豊富で、夏には王都公認のレジャースポットとして賑わう。

 本来なら、“災厄”とは最も縁遠い場所――のはずだった。





「……お前ら、はしゃぎすぎだ」


 ゆったりとした声。


 浜辺の少し高い位置。

 パラソルビーチの下で、ギルドマスターがくつろいでいた。


 サングラスに、ダイビングスーツ型の水着。

 完全に南国を満喫する格好だ。


「ここは戦場になる可能性がある。気を抜くなよ」


「いやー、でもこの景色見たらテンション上がるやろ!」

「ですよね!」


 呆れたように、ギルドマスターはため息をついた。


 ――そもそも、なぜ彼らが水着姿なのか。


 それは、少し前のこと。





 ***


「で、クラーケンだが――」


 ギルドマスターは、地図を指し示しながら説明していた。

 全長二十メートル、足は二十本以上。

 十年に一度しか報告の上がらない、幻のSランク魔獣。




「……装備、このままでええんですか?」


 説明を聞き終え、ユウトが首を傾げる。


「海やし、普通の鎧やと動きづらそうやけど」



 一瞬、ギルドマスターが無言になった。


「……お前、水中戦の基本を知らんのか」


「え?」


「この世界で海や水中の討伐・調査をする場合、必須装備がある」


 そう言って、資料を一枚取り出す。





「水着だ」





 見た目は、どう見てもただの水着。

 だが内部には魔力のこもった石が織り込まれており、

 一日限定で外敵から身を守る防護効果を発揮する。


「軽量で、水の抵抗を受けにくい。

 金属鎧より、よほど理にかなっている」


「へぇ……」


 ユウトが感心する横で、

 アルナがわずかに顔を赤らめた。


 一方、ティナはきょとんとしている。


「……?」

 (よく分かんないけど、必要なんだな)


 ***







 浜辺で、ユウトがふと周囲を見回した。


「……そーいや、二人は?」


 その瞬間。


「遅くなってごめーん!」


 弾む声が響いた。


 振り向いた先にいたのは、アルナだった。

 赤を基調とした可愛らしい水着姿。

 動きやすそうだが、普段着ているローブ姿では分からない彼女の健康的なスタイルの良さがはっきり分かる。


 少し照れたように、視線を逸らしている。


「……っ!?」


 ユウトとライトが、同時に固まった。


「な、なに見てんのよ!」

 アルナが慌てて腕を組む。

「じろじろ見ないで!」


「い、いやその……!」

「目のやり場がな……!」


 そこでユウトが気づく。





「あれ? ティナおらんやん」


 アルナが、後ろを指さした。


「……ほら、出てきなよ」


「……」


「だいじょぶだから。

 ティナちゃん」


 その呼び方に、ほんの一瞬、間が空く。






 ***


 ブレイビアの水着売り場。

 アルナの提案で、女子二人は男子に悟られないよう買い物に来ていた。


「……それにしてもさ」


 ティナが、並ぶ水着を見て首を傾げる。


「装備なのに、なんでこんな……ぴったりしてて、飾りも多いの?」


「そ、それは……」


 アルナは顔を赤らめ、言葉に詰まる。




(男の人ウケがいいから、なんて……言えない!)



「さ、さあ?え、えっと! ほら! 私これにしよっかな!」


 話題を逸らすように、自分の水着を手に取る。


 その後、今度はティナの番だった。


「……あのさ」


 アルナが、少しだけ遠慮がちに言う。




「ティナのこと……

 “ちゃん”付けで呼んでいい?」




 一瞬の沈黙。


「……うん、いいよ」


 短い返事。


 アルナの胸の内で、ふっと何かがほどける。


(……よかった)


 二人の距離が、ほんの少し縮まった気がした。



 やがてアルナが、一着の水着を見つける。


「これ……ティナちゃんに似合いそう」


 白を基調に、フリルのついた上下。

 胸元には、冒険者保護用の綺麗な魔石。


「これなら……ユウトも、かわいいって言ってくれるよ」




「……っ!?」


 その名前が脳裏をよぎり、

 ティナは思わず顔を赤らめた。


(……なんで、今……)


 アルナはその様子を見て、内心で微笑む。


(戦闘の時はあんなに恐ろしいのに……

 こういう時、ほんと可愛いな)


 ***







 アルナの後ろから、

 純白のフリル水着を着たティナが、ゆっくり前に出てきた。


 胸元の魔石が、陽光を受けてきらりと光る。


「……どう?」


 少し俯きがちに、ティナが言う。


「……似合ってる?」






 その瞬間。


(か、かわいすぎやろ……!!)


 ユウトの思考が、完全に停止した。

 胸がうるさく鳴り、視線をどうしていいか分からない。


「に、似合ってんじゃねーか?」


 必死に誤魔化すが、声が裏返っている。


 ライトとアルナは、その様子を見て同時に思った。


(……この二人、やっぱお似合いだな)




 その後しばらく、

 四人は浜辺で遊んだ。


 浅瀬で水をかけ合い、

 砂浜に足跡を残し、

 ほんの短い“休日”を楽しむ。




 ――だが。


 海面が、不自然にざわめいた。


 遠く、巨大な影がゆっくりと浮かび上がる。


 ギルドマスターが、

 無言でサングラスを外した。


 その時だった。


「よっしゃ、次は泳ぎ勝負や!」

「負けねぇ!」


 ユウトとライトが同時に海へ飛び込む。




 次の瞬間――


 ドンッ!!


「「うわぁぁぁぁ!?」」


 巨大な水柱。

 二人の体が、ギャグみたいに吹き飛ばされた。


「……全員、配置につけ」


 低く、鋭い声。


「……早速お出ましか。」


 海の向こうで、

 “それ”が、姿を現し始めていた

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