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隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
第1章 始まりの日
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第1話 出会い



「ちょっと通るで〜」



舞台は王都ブレイビア。

現代日本とは異なる異世界に存在する、アスガルド大陸の中心に位置する活気あふれる首都だった。石畳の広い通りが放射状に広がり、高い城塞壁が街全体を囲んでいる。


壁の内側には中世の趣を残した石造りの建物が並び、尖塔の教会や騎士団の駐屯所が点在する一方で、魔法の恩恵が街の空気を少しだけ現代的に変えていた。


街灯は青白い魔法灯が灯り、夜でも人通りは絶えない。冒険者ギルドの本部が街のほぼ中央に構えられ、そこに集まる冒険者、商人、傭兵たちの喧騒が一日中途切れることはなかった。


ギルドの建物は特に賑やかだった。重厚な木の扉が常に開け放たれ、内部はクエストボードの前で依頼を探す者、カウンターで報酬を受け取る者、仲間と次の計画を話し合う者で溢れている。


壁際の掲示板には魔物討伐から魔族残党の探索、護衛任務まで、さまざまな紙が貼られ、FランクからSランクまでの難易度が色分けされていた。



空気には酒と汗と革の匂いが混じり、誰かが大声で笑う声や、剣を研ぐ金属音が響き渡る。


その喧騒の中を、一人の青年が静かに歩いていた。


彼の名は【ユウト】

金髪、糸のように細く閉じた目は穏やかで、どこか掴みどころのない印象を与える。178センチの長身に68キロというやや細身の体型は、鎧を着た冒険者たちの中では明らかに浮いていた。

服装もシンプルな旅人用のローブとマントで、腰には短剣すらなく、代わりに小さな革袋に詰まったポーション瓶が揺れている。


ユウトはカウンターでいつものようにポーションを納品した。


彼の作るものは、彼の得意魔法である、

支援魔法を封じたバフ・デバフポーションだ。飲めば一時的に味方の動きを速めたり、敵の判断を鈍らせたりする

——支援魔法を応用したもので、ギルドの受付嬢からは「また売れ筋ですね」と笑顔で受け取られる。


「毎度おおきに。今日も助かるわ。」



ユウトは軽く手を挙げ、銀貨の入った袋をポケットにしまう。

彼は冒険者として登録はしているが、クエストボードに近づくことすらほとんどない。



理由はシンプルだった。

前世で、彼は過労の果てに自ら命を絶った。

精神的疲労が限界を超え、何もかもが嫌になった末の選択。

あの経験が、転生後のユウトに深く刻み込まれている。


「もう二度と無理はせん」

「自分のペースで生きる」


それが彼の信念だった。だから命を賭けた冒険など、絶対に選ばない。ポーション販売という安全で安定した稼ぎ方で十分だと思っていた。

カウンターを離れ、ユウトはふと視線をクエストボードに向けた。


そこに、一人の少女がただ棒立ちしていた。

肩までかかる白髪。鮮やかな赤い瞳。158センチほどの小柄な体躯に、やせ細った印象なのに、背負った巨大な斧が異様に存在感を放っている。

ただ…



右腕は肩から先がなく、傷跡が痛々しく残っていた。




彼女はクエストボードをじっと見つめたまま、微動だにしない。周囲の冒険者たちがちらちらと視線を投げかけ、ひそひそと囁き合うが、誰も声をかけようとはしない。


ユウトは、なぜか足を止めた。


彼女の姿が、どこか前世の自分を重ねて見せてしまったのかもしれない。あの頃の自分も、疲れ果てて棒立ちのように動けなくなっていた時期があった。



「……おい、ちょっとええか?」



自然と声が出ていた。

少女が、ゆっくりと振り向く。

赤い瞳がユウトを捉え、静かに一言。


「……何。」


ユウトは軽く肩をすくめて、いつもの柔らかい笑みを浮かべた。


「いや、ずっとボード見てるだけやん? クエスト探してるんか?

俺、ポーション売ってるんやけど、もし冒険するならバフかけてあげるで。

時間稼ぎのデバフも得意やし。

……まあ、無理にとは言わんけどな。」



ティナは一瞬、視線を逸らした。

そして、短く、冷たく返す。



「……一人でいい。」



ユウトは苦笑しながらも、なぜか引き下がれなかった。



「一人でいいって、ほんまか?

あんな斧、片手で振り回すん大変やろ。

俺の魔法なら、敵の動き遅くしてサポートできるで。それと…」



「……お前、なんか一人で抱え込んでる感じするわ。」



ティナの赤い瞳が、わずかに揺れた。

その瞬間、二人の視線が絡み合い——

王都ブレイビアの喧騒の中で、静かに、運命の歯車が回り始めた。

1話読んでいただきありがとうございます!

拙い文ですが、ぜひ!感想などを頂けると嬉しいです^^

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