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第四話

 ヤハラ国の議会は開かれている。傍聴席の一つに座るシアの横で、アルドがうとうとしていた。シアはアルドをちらりと見てから、議会のなかで居眠りしている議員を探すと、くすっと笑った。もしかしたら、前日夜遅くまで資料集めや答弁作成に奔走していたのかもしれない。

 ヤハラの議会には質疑応答の時間がある。あまり質問する人はいないが、傍聴席からでも質問が可能だ。


「それでは、質疑応答を……」


 議長がそう言ったとき、シアは前のめりに手を上げた。指名されて立ち上がる。うとうとしていたアルドが目を覚ました。


「私たちはヤハラ国と友好関係にある、ベルーセという村から来ました。のどかないい村だったんですが、6年ほど前、ベルーセ村は突然侵攻されました。……このヤハラ国の統治下にある都市、ジャンボに」


 議会も傍聴席も大いにざわついた。「内政干渉だ!」というヤジが飛んだ。

 シアはゆっくりと首を横に振る。


「内政干渉はしません。私たちはただ、ベルーセ村の被害について伝えに来ただけです。どう対応なさるのかは、ヤハラの国の人々が決めることですから」


 シアは一度言葉を切って、アルドを見た。アルドはいつも通り、切れ長の涼しげな目で前を見ている。シアはまっすぐに議長を見つめる。


「ジャンボの人々は、ベルーセ村で略奪を行いました。一度や二度じゃない。ジャンボの全ての人々が、それに加担したとは思いません。……ジャンボは芸術の盛んな街ですね。ヤハラの首都でも、ポスターが貼ってあるのを見かけました。空を飛ぶ鳥と、女性の脚の絵が表紙になっている小説のポスターです。その小説には、彼らがベルーセ村で略奪したことが書かれています。……彼らはベルーセ村での略奪を作品にしているんです」


 議事堂に短い悲鳴とため息、ざわめきが広がった。両手を合わせて神に祈る人々が見えた。

 シアは淡々と言葉を続ける。

 淡々とした言葉ではあるが、天井の高い議事堂に、その声は響いている。


「先の戦争では、隣国ハッシャで女性への人権問題があったと聞きました。真相について、さまざまな意見があることは承知しています。……その上で、ベルーセ村での事件について、ヤハラの国がジャンボにいる加害者たちに裁きを与える必要があるのではないでしょうか」


 シアは先ほどの議会で発言していた議員の目を、一人一人見すえた。目を逸らす者もいれば、ペンを走らせる者もいる。腕組みをして、目を閉じている者もいた。


「もしもジャンボにいる加害者を、ヤハラの国が罰しないのであれば、過去の人権問題から変わっていないのでは? という疑念を、隣国ハッシャから持たれかねません。しかしジャンボの悪事を裁けば、ヤハラの国は力による侵略や略奪行為を許容しないというメッセージになります」


 シアはゆっくりと息を吸うと、ほんの少し声を高くした。


「ご清聴ありがとうございました。ヤハラの国が、ベルーセ村での事件をどのように解決されるかは、お任せします」


 シアは優雅にお辞儀をすると、再び傍聴席に着席した。

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