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アイザワ夫婦は全校生徒から祝福されている  作者: 妖精卿
アイザワ夫婦の初デート
5/8

005 -Ritsu-

 土曜日の夜。夕食も食べ、シャワーも浴びた後の自室。時刻は九時過ぎ。


 相沢律(あいざわりつ)は悩みに悩んでいた。ベッドの上に何枚も洋服を広げ、悩んでいた。原因はそう、〈デート〉という言葉だ。今日の昼まではいつも通り蒼乃(あおの)と出かけるつもりでいたが、夕方になって姉がデートの服の相談なんてしてくるから混乱(こんらん)した。


 経験豊富(ほうふ)な姉に相談する? いやいや、そんなことすれば根掘(ねほ)葉掘(はほ)り聞かれてしまう。悩んだ末、(りつ)幼馴染(おさななじみ)に電話をかけることにした。時間が遅くないならここまで来て選んでほしかったが、さすがに自重(じちょう)した。それに蒼乃(あおの)と付き合っているのに、(はるか)を部屋にあげていいのかなと悩んだのも一つだ。


『もしもし。りっちゃんが電話なんて珍しいね』


 メッセージを送ろうかも悩んだが、細かくアドバイスをもらいたかったため通話にした。


『何? もしかして蒼乃(あおの)とデート行くから服に悩んでるとか?』


 もしかしたらこの部屋には盗聴器(とうちょうき)が仕掛けられているのかもしれなかった。


「なんで分かったのさ」

蒼乃(あおの)からデートに行くって聞いてたから』


 いつの間にそんな話をしていたんだろう。蒼乃(あおの)(はるか)は、(りつ)が思っているよりも仲が良いのかもしれない。


『さすがにジャージとかで行かない限り、蒼乃(あおの)は何でも喜ぶと思うよ?』

「そういうことを聞きたいんじゃないの」


 具体的な案が欲しい。このままでは(りつ)は寝ずに()を明かすことになってしまう。


『いつも二人で遊んでるじゃん。絶対にりっちゃんの方が蒼乃(あおの)の好みを知ってると思うけどなぁ。そうだなー、きっとパンツよりスカートの方が喜ぶよ』

「そうなの?」

『あたしなら可愛い彼女にはスカートをはいてほしい。あ、でもパンツルックで変化球(ねら)われるのもいいかも』

「どっちなの!」


 電話先で(はるか)はけらけらと笑った。(りつ)をからかって遊んでいるようだ。


『りっちゃんは可愛いんだから、可愛い系の服を着れば可愛さ二乗(にじょう)だよ。ほら、白いワンピース持ってたでしょ? あれにしなよ。絶対ウケるって』


 ちょうどベッドに出しているうちの一枚だった。


「でもこれって(たけ)が少し……短くない?」

『だからいいんじゃん。あ、ストッキングとかはいちゃダメだからね。まだまだ夏なんだし、生足でいかないと』


 九月は夏なのか。三十度超えと暑いから夏でいいのか。生足なんて正直制服で見せている。今さらアピールするものなのかと(りつ)は疑問だった。


(かみ)もせっかくだからアレンジしなよ』

「私そんなに器用じゃないよ」

(れん)ちゃんにやってもらえば?』


 (れん)とは(りつ)の三つ上の姉のことだ。


「嫌だよ。あれこれ聞かれる。それにお姉ちゃんも明日デートだって言ってたから、頼んでもやってくれないと思う」

『そっか。じゃあ髪型(かみがた)はおいおい課題として……、あんまり深く考えずに楽しんできなよ』

「うん、そうする。ありがとね、はるちゃん」

『アドバイスした分、何があったかは教えてね』

「なっ、なんもないよ」

『まだ分かんないじゃん。きっと蒼乃(あおの)はりっちゃんが思っているよりもりっちゃんのこと好きだよ』


 (りつ)にとって少し重たい言葉だった。責任があった。その責任を()えるほど、(りつ)の覚悟が足りているのか分からない。


 その後、(はるか)は三十分ほど(りつ)のお(しゃべ)りの相手をしてくれた。考え過ぎないように気を使ってくれたのかもしれない。


 当然、長年の幼馴染(おさななじみ)である(はるか)のことを(りつ)は好いていた。それが蒼乃(あおの)に向ける好意とどう違うのか悩んでいる。


「そろそろ切るね。はるちゃん、ありがとう」

『全然。寝坊(ねぼう)しないようにするんだよ』

「約束は午後だよ。おやすみね、はるちゃん」

『おやすみ』


 通話が終わり、部屋に静寂(せいじゃく)(おとず)れる。ずっと耳に当てていたスマホ画面を見て気がつく。蒼乃(あおの)からメッセージが入っていた。


『明日楽しみにしてる』


 たったそれだけの言葉に、(りつ)は体があったまるのを感じる。蒼乃(あおの)からのメッセージが嬉しいと思えたことに安堵(あんど)した。


『私も楽しみにしてるね』


 明日の服も決まったことだし、……まずは服で散らかした部屋を片付けよう。片付けはあまり好きでなかったが、(りつ)の心は無意識に(おど)っていた。

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