039 -Ritsu-
相沢律、相澤蒼乃、小谷瀬遥、才川日向の四人はクラスにいる間よく一緒にいるが、あまり四人で出かけたことはない。それは遥の部活の日程があったり、日向の家の事情があったりするからだ。
十一月のとある日曜日。珍しく四人の日程があったため、久しぶりの親睦会だった。お目当てはボウリングだった。運動が苦手な日向が嫌がっていたが、強制的に連れ出した。
「ボウリングも久しぶりに来るかも」
律はドリンクバーにあったメロンソーダを飲みながら言う。隣で密着している蒼乃はソワソワした様子でレーンを眺めている。
「私は小学生の時、家族で来たきりかもしれないわ」
「あたしはバスケ部で夏にきたかなー! 日向は?」
「わたしは中学の時に家族で来たきりです」
四人でいるというのに、蒼乃の手が律の右手を掴んでいる。遥と日向は見慣れているからか、もう囃し立てることもしない。
「投げる順番どうする?」
遥がタッチパネルを操作しながら呼びかける。
「出席番号順でいいんじゃない?」
律が提案した。じゃんけんでもいいけど、分かりづらいから名前の順番でいいと思った。他の三人も了承したので、一番では蒼乃、二番手が律になる。
「ねぇねぇねぇ、せっかくだからなにか賭ける?」
テンション高く遥が提案をするが、日向が冷えた声で反対をした。
「嫌ですよ。御三方は運動神経がいいじゃないですか」
文学少女は眼鏡をおさえ、冷静に言う。
「ボウリングってそんなに運動神経関係なくない?」
一番運動神経がいい遥が言っても説得力はなかった。
「それじゃあ、一番になった人にだけ特典をつけよう! そうだなー、一週間英語のノート見せてもらうとか」
「それはいいね」
遥の馬鹿げた案に乗ったのは、もちろん律だ。蒼乃と日向は冷ややかな目を二人に送っていた。
「えーっと、それなら……勝者はみんなに良いところを一つずつ言ってもらうとか!」
「ただの罰ゲームじゃない」
しかし、他に提案が出なかったので、遥の言った良いところを一つ言うが採用されてしまった。
「二ゲームでいいよね。四人だし。よーし、蒼乃いってみよう!」
蒼乃の手が律から離れる。律は「頑張って」と離された手を振った。
ボウリングに運動神経が関係あるかは分からないが、間違いなくセンスは必要だなと律は思う。そういったセンスを持ち合わせているのが蒼乃だ。初回からスペアを獲得していた。遥のハイタッチに、蒼乃は少し照れながら返していた。
「蒼ちゃん、すごいね」
律も両手を上げてハイタッチをねだる。ハイタッチのはずが、両手を掴まれてしまった。
「いちゃいちゃしてるところ申し訳ないんですけど、次はりっちゃんの番だよ」
「はい」
蒼乃を引き剥がしボールを持つ。蒼乃が使っていたものより一つ軽いやつにした。腕力には自信がない。
「あっ……」
ボウリングのセンスが律にはないのかもしれなかった。一投目は見事ガターとなった。日向がほっとした顔をしている。
でも二投目でピンを八本倒した。上々と言えるだろう。
全部倒したわけじゃないのに、蒼乃が両手を差し出してくる。
「いやいや」
友達がいる前でハグは……たまにしているけれど、今は気恥ずかしさがあった。
「どうして恥ずかしがるの?」
有無を言わせずに抱かれてしまった。
「ちょっと! いちゃいちゃしてないで、あたしの素晴らしい投球フォームを見て」
遥に怒られる。しかし、よそ見をした遥は律と同じくガーターとなった。
「どうしたー、現役運動部!」
律はいちゃついた上に野次を飛ばす嫌な奴だった。しかし、運動部の意地があったのか律をわずかに上回る九本を倒す。
「どんなもんよ」
「私はスペアだけれど」
蒼乃に言われては、遥も返す言葉がない。遥は次に投げる日向に声援を送る。
律は蒼乃に抱きかかえられる形で座っていた。そんな姿を遥は笑って見ていた。良い友達だと思う。
「お! 日向もスペアじゃん!」
日向の投げたボールはスピードがとても遅かったが、狙いは正確でいい調子だった。
「ハイターッチ」
また遥が日向にハイタッチを求める。今度は恥ずかしがって応じていた。律も両手を差し出してみたが応じてもらえなかった。
「律に触ると怒られそうなので」
「怒らないわよ」
蒼乃にも説得力はなかった。
「ちょっとさ、君たち、いちゃついてもいいから、順番になったら投げてよね」
蒼乃が「はいはい」と言いながら、律を膝の上から降ろす。
「りっちゃんたちって外でデートしている時もこんな感じなの?」
「こんなとは?」
「べったりしてるの」
直近のデートを思い返してみる。
「してるねぇ」
いつも手を繋いでいるし、密着している。人がいなければキスもする。
「どう思う? 日向」
「胸焼けがしそうです」
話し込んでいると投げ終えた蒼乃が戻ってきた。惜しくもスペアは取れずといった感じ。
「律の番よ」
軽くハグをされる。これ、交代する度にやるつもりなのかな。日向が胸をさすっていた。




