023 -Aono-
その日は少し夜更かしだった。十月七日。蒼乃が律と付き合い始めて一ヶ月だった。まだ浮かれ気分の抜けない蒼乃は意識的に夜更かしをした。
六日の二十三時五十分を過ぎたあたりからずっとスマホで時刻を確認していた。
我ながら幼稚だなと蒼乃も思う。たった一ヶ月しか経っていないのだ。どんなカップルだってそのくらいは頑張れば続けられるだろう。
それでも蒼乃にとっては特別な記念日であった。誰に祝われなくてもいい。自分で小さなお祝いをできればよかった。
十分なんて律の写真を眺めていればあっという間だった。日付が変わった瞬間、写真相手に「好き」と伝える。
目を一瞬瞑っての「好き」だったので、その通知がきた瞬間を見逃してしまった。メッセージアプリの通知が二件。二件目がスタンプだったので用件は通知欄から判別できなかったが、送り主は律だった。
暗い部屋の中でガバッと体を起こす。律から。何で。どうして? 寝ている時間なのではとか考えながら、何も考えずに通知をタップした。
『まだ起きてる?』
既読をつけるとすぐに新しい文が送られてきた。
『ちょっとだけ電話してもいい?』
断る理由なんぞどこにもあらず『もちろん』と秒で返す。電話が鳴った。紛れもなく律からの電話だった。
『ごめんね、蒼ちゃん。起こしちゃった?』
「いいえ、私も起きてたから。どうしたの、こんな時間に」
『えーっと。ほら。今日で一ヶ月じゃん? 私たちが付き合って』
律は言葉を刻みながら言う。顔は見えないけど照れているのが分かった。
『蒼ちゃんの声を聞いてから寝たいなぁって。思ったの』
「私も律の声聞きたいって思ってた」
自分だけが重いのだと思っていたから、すごくすごく嬉しかった。
電話先で二人で笑い合う。親に聞こえたら怒られてしまうから小声でだ。
「嬉しい……。大好き。律」
『私も大好きだよ。蒼ちゃん』
このまま話していたい。電話を切りたくない。
「ありがとう」
嬉しくて仕方がない。この気持ちを律に上手く伝える言葉を蒼乃は持っていない。
『私からかけといてなんだけど、時間が時間だから切るよ。また明日……というか今日たくさんお話しようね』
「えぇ。またね」
通話が切れる。ロック画面にキスをした。




