自然体
砂泊先生の頃から、当時の万生館道場では、技をかける時も、かけられる時も、力を抜くように指導されていました。
全身脱力してしまうと、人間は立つこともできません。
人が立っている時、人体は、骨格を土台にして、筋力やその力を伝える腱や筋で支えます。
真上から肩の上に重しを載せられたら、きっと踏ん張ると思いますが、荷重を支えるために必要な筋力以外に力を入れると、その分の負荷となります。
ウェイトリフティングで、主に背筋を使って膝上までバーベルを挙げる「デッドリフト」では、腹筋を力ませると、その分の重さがマイナスになるので、持ち上げられる荷重が少なくなると教えてもらったことがあります。
運動をするのに必要な筋力以外の筋肉の緊張は、マイナスの負荷になるわけです。
合気道の稽古では、伝統的な極め技を覚えますが、それは次の段階へ進むための基礎になります。
もともと武術である故に、極め技だけでも、たとえば、逮捕術になるほどですので、武技としては十分な威力です。
しっかりと技を掛けるためには、しっかりと掴みます。
弛く掴んで、返しの技を逃れようとすると、その技を受ける以前に、実戦なら、たぶん手刀などを受けて、戦いは終わっています。
無駄に力んだり、適当に技を掛けたりする人がいましたが、先輩格の有段の年配の方が、そうした基礎を理解せずに、後輩へ我見を押し付ける様は、見ていても苦痛でしたが、それを受ける当事者となったときには、堪えきれずに、反撃してしまいました。
「自分ができてないのに、自分の半端な技を教えるとか言って、人に強要すんなよ」みたいな。
とは言っても、それは最近の話で、たまたま同じ道場に通っていた人と再会してからの稽古の時でした。