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妹は俺のもの(アレン視点)

「ほら、アレン。貴方の妹よ」


 出産から帰ってきた母が抱く小さな赤ん坊――エリーゼを見たとき、俺の体に電流が走った。


――この女は俺のもの。


 そう直感した。

 エリーゼは俺のものになるために生まれてきたのだと。


 幼い頃は良かった、兄様! といつも俺の後ろをついて回って、俺にベッタリだった。

 だが、最近のエリーゼは俺と距離を取るようになり。


「兄様、いい加減にして!! また私の友達に無断で会いに行って酷いことを言ったわね!! お陰様で私はもうお茶会に呼ばないと言われたわ!!」

「俺はエリーゼの為にしてるんだ、初対面の俺を口説くような女、お前の友達に相応しくない。あと、最近のお前の服装は地味だぞ、俺の妹ならもう少し俺好みの派手なのを着ろ、恥ずかしいぞ」

「嘘を言わないで!! 挨拶する前に罵られたって言ってたわ!! 容姿に対して罵ったそうじゃない!! 最低!! あと私はこういう落ち着いた色合いが好きなの!! どうして兄様の好みに合わせなくてはいけないの!! とにかくこのことは父様達に言うからね!!」


 こうして俺に反発するようになった。

 幼い頃は俺の言う事は素直に聞く良い子だったのに、どうしたものか。

 それに俺とエリーゼのやり取りを微笑ましく見ていた両親は「いい加減にしろ! エリーゼに干渉しすぎだ!」と俺を怒る。

 エリーゼは俺のものなんだから、俺に相応しくさせようとしているだけなのに、俺が頂くエリーゼの処女を守るためなのに、なんで怒られなきゃいけないのだろう。

 両親は嫌がるエリーゼを見て、俺がエリーゼに何か言う度に叱り、家でも俺とエリーゼの仲を邪魔するようになった。

 時が来たらエリーゼを抱こうと思っていたが両親が亡くなった後、いや俺が当主となった後に田舎の別邸に追い出してからだな。


 それから暫くして俺が学園を卒業した後にエリーゼに友人が出来たと話を聞いた。

 相手はクルーゼ伯爵家の娘らしい。俺は早速、会いに行ったさ、エリーゼに相応しくないと判断したらいつものように罵声を浴びせれば良い。


「エリーゼのお兄様なのですね。お会いできて光栄です」


 手本のようなカーテシーでお辞儀をするマリナという女はエリーゼに相応しい友人だと判断した。

 見目もエリーゼに負けるが上位の部類に入るだろう、昔の奴等は容姿からしてダメだったからな、それにエリーゼはマリナの事をかなり気に入ってるらしい。

 気に入ってる相手がいれば、エリーゼも俺の傍にいる時間が増えると判断した俺はマリナと親睦を深め、婚約を結んだ。

 マリナは落とすのは簡単だった。あまり男慣れしてないのもあったが読書好きらしく、俺が本の話題を出すと食いついてきて、続けざまに喜ぶ言葉を与えればすんなりと落ちたのは滑稽だった。

 順調と思っていた矢先、予測してない事態が起きた。


「兄様、紹介するわ。私の婚約者よ。父様の紹介で知り合ったの」

「クラウド・モーリスと言います。初めまして、アレンさん。以後、お見知りおきを」


 嬉しそうに男に腕を絡め、幸せそうに微笑むエリーゼに俺の頭は沸騰しそうになった。

 どうやら、俺がマリナを口説いてる間に父がお見合いを勧めやがった、なんてことをしてくれたんだ、あの爺は!!

 エリーゼもエリーゼだ!! 俺がいるのに他の男に現を抜かしやがって!! あんな地味な男のどこが良いんだ!!


「一々声を荒げて干渉してくる兄様と違って落ち着きがあって私の好きな事を認めてくれる方よ。それに私は彼を一目で好きになったの! 一目惚れって本当にあるのね!」


 エリーゼが喜々と語る話が信じられなかった。

 一目惚れだって? そんなのおかしいだろ? エリーゼは俺のものなのだから俺以外を愛してはいけないのに!!

 嘘だ!! 嘘だ!! 嘘だ!!!!!!

 ああ、きっと、これが俺がエリーゼ以外の女に目を向けてしまった罰に違いない。これからはエリーゼ以外の女を見ないようにしないと。

 あの女、マリナは婚約してしまった以上、無視は出来ないが、あの爺がエリーゼをお見合いさせた原因でもある。冷たく当たっても罰は当たらないだろう。

 これならエリーゼも俺に目を向けると思っていたが、エリーゼは相変わらず地味男に夢中で俺に目もくれない。そんな日々に俺の心は荒れ、癒やしを求めるようになった。

 そんな時に出会ったのがエリーゼにそっくりなミラだった。

 ミラを見た時、俺は考えた。エリーゼが俺のものに戻るまでの間の繋ぎにしようと。

 だけど、この考えが間違っていた。

 俺は同じ過ち――エリーゼ以外の女に目を向けてしまったことを繰り返してしまったのだ。

 だから、これは罰なのだ。

 エリーゼが俺を拒絶したのは俺がエリーゼから目を逸らしてしまった罰だ。

 俺のものであるエリーゼが俺を気持ち悪いと言うはずがない、嫌いなんて言うはずがない、二度と近寄るななんて言うはずがないのだから。


「エリーゼ、ごめん。愛してるのはお前だけなんだよ・・・・・・」


 今、俺は田舎にある別邸で謹慎させられている。使用人達から監視され抜け出せないがいつかエリーゼが迎えに来てくれると信じている。

 だって、エリーゼは俺のものなのだから。











「アイツの様子はどうだ? ・・・・・・・・・・・・そうか、反省する様子もないか。仕方ない、棺の用意をしよう。

 跡継ぎ? 安心しろ、弟と話して弟の次男坊、甥に継がせることにした。だから、アイツは不要だ」

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― 新着の感想 ―
どうしても感想がきもいとしか書けない(泣) ここまで拗らせている兄が怖い、というかきm。 そしてお父様容赦ない(笑)棺の準備ナイスだわ
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