中編
「アレンさん、彼は、心優しい彼は貴方のせいで苦しんでるんです!! 早く解放してあげてください!!」
エリーゼにそっくりな少女は涙をボロボロと流しながら私に訴えてきます。
私は私でエリーゼに瓜二つであること、突然、婚約破棄してくれと言われた事に困惑していました。
しかも時間帯は昼休み、場所は中庭。私達だけでなく他の学生の皆さんもおります、彼女の声を聞いて何事かと此方に注目しています。
ああ、本当にどうしましょう!!
「貴方、マリナに何をしているの!?」
そんな私と彼女の間に用事を終えたエリーゼが入ってくれました。
エリーゼの登場に安心する私でしたが。
「「え? 私?」」
今度はエリーゼと少女が双子かと思うほど似ている事に驚き、お互いの顔を見合わせていました。
「つまり、貴方は私の婚約者であるアレンと交際をしているのですね?」
「・・・・・・・・・・・・はい」
あの後、別の場所へ――人がいない空き教室に移動した私達はエリーゼそっくりの少女――ミラの話を聞いています。
自分に似ているエリーゼを見て、何か思うところがあったのでしょうか、今では借りた猫のように大人しくなっております。
エリーゼも居心地悪そうにしています。容姿だけでなく髪型、背格好も同じ。双子だと思ってしまうほど自分に瓜二つの兄の浮気相手である彼女にどう接するべきか悩んでいるのでしょう。
ミラはアレンより一つ下の、私達と同じ伯爵家のご令嬢でした。
アレンとは、とある本好きの貴族によって月に一回行われる読書会で会ったそうです。
その読書会には以前、私もアレンに誘われ参加した事がありますが、自分がどれだけ本を読んだか珍しい本を読んだというマウント合戦の場だったので誘われてもお断りするようになりました。
彼女も兄に誘われ読書会と聞いて来たものの、マウント合戦にうんざりしていた所にアレンに声をかけられたそうです。
「それが切っ掛けで親しくなったのね」
「はい。異様な雰囲気に呑まれてるワタシを察して優しく声をかけられて、それから親しくなりました。ですが婚約者が居ることを知って距離を取ろうと思ったのですが婚約者であるマリナさんは横暴で我が儘、妹に嫉妬して嫌がらせをしていると婚約破棄したくても家の関係で出来ないって・・・・・・」
「そんなわけないでしょ!? マリナと兄さんの婚約はお互いを想い合っての婚約よ!!」
「に、兄さん?」
「話すのが遅れたわね。私はエリーゼ・ナッツ。貴方とお付き合いをしているアレンの妹です」
ワザと妹の部分を強調するようにエリーゼはアレンの妹だとミラに告げると彼女は顔をさっと青くさせてしまいました。
その様子に話を続けるのは不可能と判断した私とエリーゼは両親にこの件を話し、話し合いをする事にしました。
ミラも自分の両親に洗いざらい話しますと、その話し合いに参加する旨を伝えました。