新しい商売を考えろ!
ルクレイアの市場を歩きながら、レアナは考え込んでいた。
(私は、ただ儲かるものを売りたいわけじゃない……)
ティーの売り上げは順調だった。だけど、それは「売れるものを売った」だけ。
本当にやりたかった商売とは何か。
「……どうすればいいの?」
その呟きを聞いたスピカが、ふわりと横に舞い降りた。
「考え続けてても答えは出ねぇぞ?」
「でも、適当に決めるわけにもいかないじゃない。」
「お前、今のところ“こうしたい”って思ってることは何かあるのか?」
「……うーん。」
レアナは腕を組んだ。
「売るなら、誰かの役に立つものがいい。でも、普通の商売じゃつまらないし……」
「じゃあ、“面白い商売”を考えりゃいいんじゃねぇの?」
「……え?」
レアナは思わずスピカを見つめた。
「お前、いつも言ってるだろ。金が大事だ、儲けなきゃダメだ、ってさ。でもな、“金のためだけにやる商売”より、“面白い商売”のほうが長続きすると思わねぇか?」
「……!」
その時、ふわりと白い球体が近づいてきた。
「データによると、“面白い商売”とは抽象的すぎる概念なのです!」
「ちーこ、タイミング良すぎ。」
「ちーこは完璧なのです!」
倉庫に戻ったレアナは、ちーことスピカを前に考え込んでいた。
「ちーこ、“成功する商売”のデータ、他に何かある?」
「統計的に、商売の成功パターンは大きく三つに分類されるのです!」
ちーこのセンサーが光り、浮かび上がるデータ。
1. 高品質・高価格のブランド戦略
2. 大量生産・低価格で市場を支配する戦略
3. 顧客に直接関わる“体験型”の商売
「へぇ……」
「レアナの資金力では、大量生産は難しいのです!」
「ってことは、ブランドを作るか、体験型の商売を考えるか……」
レアナはじっと考え込んだ。
「でも、高級ブランドっていうのも、ちょっと違う気がするのよね……」
「だったら、三つ目だな。」
スピカが軽く羽ばたく。
「お前、ティーを売ってた時、どうやって売れた?」
「……サロンで試飲してもらったら、すぐに興味を持ってもらえたわ。」
「ってことは、体験できる商売にすればいいんじゃねぇの?」
「……体験……!」
レアナの頭の中に、何かがひらめいた。
レアナは机の上に紙を広げ、アイデアを書き出していく。
「ええと、何かを体験できて、楽しくて、儲かる商売……」
彼女が考えたのは、「客自身が商品を作る商売」 だった。
「例えば、香草ティーを自分でブレンドできるとか?」
スピカがくちばしを鳴らして笑う。
「お前、やっと面白くなってきたな!」
「統計的に、“体験型ビジネス”はリピーターを生みやすいのです!」
「じゃあ、ティーだけじゃなくて……例えば、お菓子とかも?」
「いいじゃねぇか。客が楽しめる要素を増やせば、自然と流行るかもしれねぇ。」
レアナは勢いよくペンを走らせる。
「名前は……“レアナの手作り商店”!」
「統計的に、ネーミングがシンプルすぎるのです!」
「うぐっ……」
「“自分だけのオリジナルを作れる”という特別感を強調したほうがいいのです!」
「なら……**“オーダーメイド商店”**とか?」
「ありだな。」
「ちーこ、データ的にはどう?」
「統計的に、顧客に“特別感”を与える商売は成功確率が高いのです!」
「よし、それでいこう!!」
レアナは勢いよく立ち上がる。
「よし、さっそく試しにやってみよう!」
「で、何を作るんだ?」
「まずは……ティーとお菓子のカスタマイズショップ!」
「客が好きな香草を選んで、自分だけのブレンドティーを作れる!」
「さらに、好きな材料を選んで、自分だけのオリジナルお菓子も!」
スピカがくちばしを鳴らして笑う。
「お前、やっと楽しそうな顔してるじゃねぇか。」
「……うん!なんか、ワクワクしてきた!」
レアナは胸を張った。
(これなら、ただの商売じゃなくて、“私らしい”商売になるかもしれない!)
「ちーこ、スピカ、一緒にやってくれる?」
「ちーこは完璧なのです!」
「しょうがねぇな、お前の無茶に付き合ってやるか!」
「よし!“オーダーメイド商店”開店準備開始!!」