表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

信用を守れ!ネガティブキャンペーンを跳ねのけろ!

市場には、今日もひそひそとした話し声が広がっていた。


「オーダーメイド商店、材料の品質が怪しいって本当?」

「なんか、仕入れ先が不明らしいよ。」

「へぇ…それはちょっと怖いね。」


レアナはぐっと拳を握る。


(おかしい…昨日までは順調だったのに!)


開店直後の成功が一転し、今日はまるで客が来ない。


「データによると、この噂は昨夜から急激に広まり始めたのです!」


ちーこがセンサーをピカッと光らせながら言う。


「たった一晩で市場全体に広がるのは、不自然なのです!」


「ってことは……誰かが意図的に広めた!?」


レアナの表情が険しくなる。


(まさか……ユリウス!?)


昨日、彼は市場の向こうから静かにこちらを見ていた。

あの落ち着いた表情——まるで**「次の一手を打った」** かのようだった。


「……ユリウスが、私を潰そうとしてるの?」


レアナがポツリと呟くと、スピカがバサッと羽を広げた。


「おい、決めつけるのはまだ早ぇぞ。」


「でも、考えてみて! 彼なら商売の仕組みを熟知してるし、こんな噂を流せる人脈もあるはずよ!」


「でんと胸を張れ、商売は“確証”がなきゃ動くべきじゃねぇ。」


「……っ!」


確かに、今のはただの憶測に過ぎない。

でも、他に心当たりがあるわけでもない——。



「ちーこ、具体的にどこで最初に噂が広まったのか分かる?」


「統計的に、最初の発生地点は“市場の裏手にある商人街”の一角なのです!」


「市場の裏手……?」


「あそこは、小規模な商人たちが情報交換する場所だろ?」


「つまり、そこにいる誰かが、最初にこの話を広めたってことね!」


レアナはすぐに駆け出した。


市場の裏手に入ると、そこには数人の商人が談笑していた。

その中で、一人の男がやけに慌てた様子で周囲を気にしている。


(……あいつか!?)


レアナはゆっくりと近づき、自然に話しかける。


「ねぇ、ここの商人街で、オーダーメイド商店の材料が怪しいって話をした人 って誰か知らない?」


「え、えぇ!? な、なんのことかな?」


(あ、確定……)


スピカが低く笑う。


「おい、お前。目が泳ぎすぎだろ。」


「……!」


「ちーこ、こいつの商売履歴は?」


「データによると、この商人、最近“同じ香草ティーを扱い始めた”ばかりなのです!」


「つまり——ライバル潰しのために、ネガティブキャンペーンを仕掛けたってこと?」


「……っ!」


男の顔色が一気に悪くなる。


「やれやれ、こういうのが“信用を失う商人”ってやつか?」


スピカが肩をすくめた。


「私の店の材料はレイゼン商会から正式に仕入れてるの。証拠もあるわ。」


「そ、そんな……」


レアナは男を睨みつけ、静かに言った。


「もう二度と、こんな卑怯なことしないでね。」


男は青ざめながら、逃げるようにその場を去った。



市場の噂は、レアナの反撃によって収まった。


「これで信用問題はクリアなのです!」


「まぁ、多少の影響は残るだろうがな。」


スピカがそう言った瞬間——


「……疑いは晴れたみたいだね。」


静かな声が聞こえた。


レアナが振り向くと、そこにはユリウス・ルーエン の姿があった。


「ユリウス……!」


彼は落ち着いた表情で、静かにレアナを見つめる。


「僕が仕掛けたと思ってた?」


「……まぁ、最初はね。」


レアナは少しバツの悪そうな顔をする。


「君の商売は、まだ未熟な部分が多い。でも、だからこそフェアに競争する価値がある。」


ユリウスはそう言うと、微かに微笑んだ。


「僕は正々堂々と勝つ。そうじゃなきゃ、商人としてのプライドが許さないからね。」


「……!」


(この人は……本当に「商売人」なんだ。)


レアナはユリウスに対する見方が少し変わる。


そして——


「じゃあ……次の戦い、フェアに受けて立つわよ!」


「楽しみにしてるよ。」


ユリウスはそう言い残し、去っていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ