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プロローグ:商才がないと知った日

前書き


「データによると、世界は常に変化するものなのです!」


ちーこは誇らしげにそう言った。

6年前、世界は崩壊寸前だった。すべてを終わらせるはずの「ルヴァンテールの心臓」は止まり、新たな時代が訪れた。


陽大とリリアは辺境の村で静かに暮らし、英雄たちは歴史の中へと消えた。

だが、世界は"平和"になったわけではない。

連邦の中枢では新たな権力が生まれ、腐敗は静かに広がり、

金と策謀、そして信念が交錯する**「商売の戦場」**が幕を開けようとしていた。


舞台は、商業都市ルクレイア。

貴族と商人、陰謀と信念が絡み合うこの街で、ひとりの少女が勝負に挑む。

戦争孤児として育ち、商人の娘となったレアナ・バレンティーノ。


相棒は、

直感で道を切り拓く「しゃべる希少生物」スピカ。

データと統計を信じる「ポンコツ完璧AI」ちーこ。


「でんと胸を張れ!お前ならやれる!」

「統計的に可能性は極めて低いのです!」

「おれの勘はハズれない!」


そんな二人に背を押され、

レアナは"商売"という戦場へと飛び込む。


待ち受けるのは、大陸最大の商会「ルーエン商会」の若き後継者ユリウス。

そして、裏で世界を支配しようとする権力者たち。


「さあ、データを更新するのです!世界は、また面白くなってきたのです!」


知恵と交渉、金と人脈——武器は剣ではなく、言葉と計算。

新たな時代の戦争が、ここから始まる。


「レアナ、お前には商才がない。」


その言葉が突き刺さった。


目の前に座るのは、育ての親であり、ルクレイアを支配する大商人——ダリオ・バレンティーノ。

彼の穏やかな口調と柔和な笑みは変わらないが、その目は冷静に私を見つめていた。


「なっ…そんなことない!ちゃんと考えてる!」


私は反論したが、ダリオは静かに首を横に振る。


「いや、レアナ。お前は確かに商売の仕組みを学び、数字も扱える。しかし——」

ダリオは手元の書類を持ち上げた。それは、私が先日仕掛けた取引の収支報告書だった。


「これはひどいな。」


その隣で、ダリオの右腕であるオスカー・ローレンスが肩をすくめた。

彼は元々連邦の外交官であり、策謀と交渉のプロフェッショナル。しかし私からすればただの嫌味な貴族だ。


「だって、確かに利益は出てるし…」


「いや、それが問題だ。出てはいるが、それではダメなんだ。」


ダリオの声が静かに響く。


「商売は、ただ利益を出せばいいわけじゃない。どのタイミングで売るか、誰に売るか、どう信用を築くか——そういう部分がお前には圧倒的に足りない。」


「でも!安く仕入れて、高く売るのが商売でしょ!?私、間違ったことしてない!!」


私は食い下がった。しかし、ダリオは淡々と指摘を続ける。


「レアナ。お前の取引は短期的には成功しているが、長期的に見ると失敗している。」


「えっ…?」


「例えば、お前が最近仕掛けた小麦の買い占めだ。」


——あっ。


「確かに、お前は市場価格を見て、安くなったタイミングで大量に仕入れ、高値で売った。表面上は大成功だ。」


ダリオはゆっくりと指を組み、鋭い目で私を見た。


「だがな、そのせいで周辺の商人たちは小麦を手に入れられず、価格が不安定になった。そして——誰もお前から買おうとしなくなった。」


私は息をのんだ。


「商売において、短期の利益は大切だ。しかし、信用と長期的な安定がなければ、最終的には淘汰される。お前はそこを理解していない。」


「そんな…でも、ちゃんと儲けは出たし…!」


「一度の成功が未来を保証するわけじゃない。」


ダリオの声は冷静だった。


「レアナ、お前は頭はいい。だが、“金が欲しい” という気持ちが先行しすぎている。」


「それの何が悪いのよ!?」


私は思わず声を荒げた。


「お金がなければ何もできない!商売って、そういうものでしょ!?安く買って高く売る、それの何が間違いなのよ!?」


すると、今まで黙っていたライナー・エグレストンが低く笑った。


「ハッ。確かに、お前の言うことは間違っちゃいない。だがな、商売で本当に勝つ奴は、“金だけを追う者” じゃない。」


ライナー——連邦の金融長官であり、金の亡者と呼ばれる男。


「商売とは、金を稼ぐことだけじゃない。金を“どう動かすか”がすべてだ。」


「動かす…?」


「お前は金を手にしたが、その使い方を間違えた。結果、次の商機を自分で潰したんだ。」


「…………。」


「それを“商才ゼロ”と言わずして、何と言う?」


私は何も言えなかった。


ダリオがゆっくりと椅子から立ち上がる。


「レアナ。お前に才能がないとは言わない。しかし、このままではお前は商人として生き残れない。」


彼の言葉が、胸に重く響いた。


「どうするかは、お前次第だ。」


ダリオはそう言い残し、背を向けた。


オスカーは肩をすくめ、ライナーはニヤリと笑う。


私は悔しさで拳を握りしめながら、天井を見上げた。


商才ゼロ……そんなわけない。


私にだって、商売で勝つ道はある。


……だったら、チートで成り上がるしかないじゃない!!

登場人物紹介(プロローグ登場キャラ)


レアナ・バレンティーノ:「商才ゼロ」と言われたが、なぜか負ける気がしない16歳の少女。


ダリオ・バレンティーノ:ルクレイアを支配する大商人で、冷静な判断でレアナの成長を見守る育ての親。


オスカー・ローレンス:嫌味な貴族の策士で、裏の交渉に長けた切れ者。


ライナー・エグレストン:「金の亡者」と呼ばれる金融長官だが、金の動かし方には異常に厳しい。


スピカ:なぜか人の言葉を理解する希少な鳥で、直感を信じる相棒。


ちーこ:統計とデータを駆使する浮遊するAIで、完璧を自称するがどこかズレている。



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