ルームメイト・リンカーネイト
「えっと、失礼します。今日からルームメイトになる安藤寧人って言います」
「はじめまして、わたしは立花凛香。よろしくね」
「これから留学期間中、いろいろと迷惑をかけると思いますが、一緒に――」
「ぷっ、あっはは! そんなに堅苦しくしなくていいって! アメリカじゃそういうキャラはウケが悪いよ」
「え、そう、なの?」
「ここは異国の地なんだし、家族のように助け合っていかなきゃ。それじゃあ、英会話のトレーニングついでにお買い物しに行こっか!」
「ええっ、いきなり!?」
「お疲れ様でーす」
「お疲れ様でしたー」
『おう、君たちも遅くならないようにな』
「……」
「……こんなことってある?」
「それはこっちの台詞だよ、凛香」
「せっかく日本に帰って新しい生活が始まると思ったのに、寧人と同じ就職先で同じ部署になるなんて!」
「本当に偶然だったんだからしょうがないだろ。言っとくけど、勤務中はお菓子の食べカスをそこらに散らかさないでくれよ」
「あんたこそ、トイレをもっと綺麗に使ってよね!」
「会社のトイレは男女に別れてるじゃないか!」
「やあ凛香、待ってたよ」
「なんだ、やっぱり寧人か」
「やっぱりってなんだい。国の避難用シェルターは個人ごとに指定されてるんだからさ、一緒になるのは奇跡的な確率だよ」
「奇跡ねえ。それよりも寧人、食糧や防寒具は持ってきてる?」
「もちろんだよ。凛香が忘れてるといけないから、二人分用意してきた」
「あら、わたしも二人分持ってきたの。寧人はたぶん、慌ててると思って」
「……ありがとう」
「……ふふっ。やっぱりわたしたちって――」
「うわあっ!」
「きゃあっ!」
「もうミサイルが落ちたのか!? この揺れ、だいぶ近いぞ!」
「ああっ、天井が!」
「凛香、危ない!」
おーい、起きてるかい。
う、うーん……どうしたの? 何かあった?
そろそろ出発の時間だって。
あら、案外早いのね。
ああ、これから僕たちの新しい人生が始まるんだ。
新しい人生かぁ。それにしても、こんな所まであなたとルームメイトになるなんて思わなかったわ。
僕も同じ気持ちさ。これからも多分、長い時間をともに過ごすことになるだろうね。
……わたしと一緒で退屈しない?
まさか、君と一緒なら退屈なんてしないよ。
ありがと、今度こそ二人で幸せを掴もうね。じゃあ、わたしは先に行くから。
あっ、ちょっと待てよ! ずるいぞ!
「おぎゃあ!」
「おぎゃあ!」
『おめでとうございます。元気な双子の赤ちゃんですよ』
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