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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
新たな大陸と謎の海賊団
97/503

◆海猛虎トラキロⅡ

ペイパー警部、捨て身の大作戦!

「オレの見立てじゃァ、ペイパー警部はミラリアちゃんよりも弱ェなァ。それなのに、何かできるって言うのかァ?」

「あ、ああ。できるとも。オレッチもあんまりやりたくはないが、とっておきの秘策が残ってる……!」

「ほォう? そいつは気になるなァ。なら、何をするのか教えてもらおうかァ」


 私とトラキロさんが戦っているところに、突如口を挟んできたペイパー警部。どうやら、まだ何か秘策があるらしい。

 もしかして、自爆とかそういうのかな? だとしたら止めてほしい。私がここまで来た意味がなくなる。ランさん達の親子が一緒に帰れない。

 なんだか腰に手を当ててるけど、何をするつもりで――




「そ、それ以上暴れてみろ! 俺がここでズボンもパンツも脱いで、スッポンポンになるぞ!? それでもいいのか!?」

「はあァ!? 何を言ってやがんだァ!? いいわけねェだろォ!? 血迷ったのかァ!? 焦んじゃねェよォ!?」




 ――などと心配してたら、予想外の言葉に気が抜けてしまう。トラキロさんも思わずペイパー警部の方に向き直り、必死にツッコミを入れている。

 私にだって何一つ分からない。ここでペイパー警部が下半身スッポンポンになって、何がどうなるのだろうか?


「お、親父!? 気でも狂ったか!? 止めてくれよ! 娘として恥ずかしいから! ほ、他にも人がいるんだぞ!?」

「う、うるさい! 今のオレッチにできるのはこれぐらいだ! ここでスッポンポンになって、全員が助かるならばいくらでも脱いで……!」

「いや、助からないよ!? 親父がスッポンポンになっても、事態は何一つ好転しないよ!?」


 これには娘のランさんも異議申し立て。私も同意せざるを得ない。

 だって、スッポンポンになっても強くなるわけじゃない。ただ焦って血迷ったようにしか見えない。


 ――ペイパー警部のことが心配になってきた。これまでと違う意味で。


「や、やめなよおじさん!? 私らも粗末なモノなんて見たくないからね!」

「おっさんのスッポンポンとか、一文の得にもならないしー!」

「ほら見ろォ! 捕まってる他の女どもまで嫌がってるぞォ!? 本当に焦んなよなァ!? オレの方が焦るだろォ!?」


 船の上で捕らえられたAランクパーティーの二人にしても、これは流石に嫌がってしまう。私もエスカぺ村で脱走計画をしてた時、村の男の人達を下半身スッポンポンにして怯ませたことはある。

 あれって、当人も辛いけど周囲も辛いみたい。男性のお股って、見せびらかすものじゃない。


「ねえねえ、ツギル兄ちゃん。私、どうすればいいの?」

【お、俺だって分からないっての。いったい何がどうしてこの状況でスッポンポンに――あれ?】

「ん? どうかした?」

【いや……なんだか、ペイパー警部がこっちに目配せしてるような……?】


 あまりに唐突過ぎる行動で呆気にとられ、とりあえずはツギル兄ちゃんにも尋ねてはみる。でも、流石にまともな答えは期待できない。

 ただ、ペイパー警部がチラチラこっちを見てるのに気付いてくれた。とはいえ、それが何を意味するのかは分からない。

 私だって、別にペイパー警部のスッポンポンは見たくない。ズボンに手を当てるのを止めてほしい。


【……あっ! そうか! ミラリア、今の内だ!】

「ん? え? あっ、そっか。……よし!」


 そう思って首をかしげてたけど、ここでようやく私にもペイパー警部の意図が読めた。

 あまりに唐突で奇天烈な行動をペイパー警部がとったせいで、周囲の人間は慌てふためいている。それはトラキロさんとて例外ではない。


 ――つまり隙だらけ。ペイパー警部の狙いはこれだ。


「だったら……今勝負する!」

【だが、あいつの体はミラリアでも斬れないほど頑丈だぞ!? そこはどうする!?】

「そこもいい方法がある! ペイパー警部が教えてくれた!」


 トラキロさんに気付かれるよりも早く、縮地で間合いを詰めて急接近。腰を低く落とし、いつでも居合を打てるようにする。

 あの頑丈な体を斬るのは難しすぎる。だから、私の方で別の対策を用意しておいた。


「ッ!? し、しまったァ!? オレとしたことが焦ったかァ!? だが、どのみちオレの体に傷をつけることは――」

「なら、体以外を斬る!」



 スパァンッ!



 直前で気付かれはしたけど、そのまま構わず斬り捨て御免。確かに私ではトラキロさんの体に傷はつけられない。

 でも、それ以外なら斬れる自信がある。よく考えてみると、トラキロさんが異様に薄着なのもこれが理由だったのかもしれない。

 生身の強度がどんな鎧よりも強固なら、あえて服を着ない方が守りを活かせる。逆に言えば『生身じゃない服』の方は私でも斬れる。


 ――エスカぺ村でやらかしてた瞬間通り魔的脱衣居合。まさか、あれがこんなタイミングで役に立つとは思わなかった。




「……って、うおおォ!? オ、オレのズボンとパンツがァァア!?」

「これでトラキロさんの方がスッポンポン!」

いや、絵面。

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