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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
新たな大陸と謎の海賊団
93/503

◇ロードレオ拠点救出戦Ⅲ

意外と簡単に抜け出せそうな一手。

「ミ、ミラリアちゃん? 腰の剣に語り掛けて、何をしてるんだい?」

「ペイパー警部、ちょっとこっちに寄って。今からあのグルグルの向こう側に行くから」


 ここはロードレオ海賊団のアジトだけど、目指すべき道はローラーとかいうグルグルの隙間から見えている。

 それならば後は簡単だ。魔剣へ転移魔法を念じ、そのまま居合で発動させればいい。



 キンッ――ヒュン



「うおっ!? これはさっきも使った転移魔法というやつか!?」

「その通り。これでグルグルの先に移動できた」


 ペイパー警部と一緒に道を阻むグルグルの先へ転移完了。さっきまでは挟み撃ちされてピンチだったけど、これでもう安心だ。

 進みたかった洞窟の奥への道が前方に見え、後方には――


「な、なんでヤンスか!? あの二人、どうやって向こう側に!?」

「お、恐ろしく速いとかじゃないでゴンス! 魔法か何かで場所ごと移ったでゴンス!?」

「こ、これじゃあ、カラクリで囲んだ意味がないでアリンス!」


 ――相変わらずグルグルに挟まれたままの変な語尾トリオ。あの三人が転移魔法を知らなくて助かった。

 もしも知られてたら、どうにか邪魔しようとしてただろう。転移魔法って、他の魔法よりも集中力を使う。だから、邪魔されなかったのは幸いだった。


「は、早く追うでヤンス! まずはカラクリを止めるでヤンス!」

「無理でゴンス! このカラクリ、一度起動させたら時間経過でないと停止しないでゴンス! なんでこんな設計なんでゴンス!?」

「侵入者に起動レバーを壊されても大丈夫なようにしてたんでアリンスよ! それが裏目に出たでアリンスゥウ!」


 しかもあの三人、なおもグルグルに挟まれたまま身動きできないらしい。どうやら、自分達でもしばらくは止められないらしい。

 三人でゴタゴタしてるけど、こっちにとっては好都合。このまま安全に先へと進める。


「なんだか、意外にあっさり抜けられたな……。だが、これで騒ぎ自体は確実に起こった。他の連中が駆け付ける前に、早いとこ奥を目指すぞ」

「うん。洞窟の奥から風も感じるし、多分もう少しで――あっ!」


 そんなわけで、変な語尾トリオにはグルグルに挟まれてもらい、私とペイパー警部は先を急ぐ。

 もうじき増援も出てきそうだし、ここからはコソコソよりもグイグイ行くのが一番。

 駆け足で奥を目指し、通路の先にある開けた場所に出ると――




「あっ!? あ、あなた達! ちょっと私達を助けてよ!」

「リーダーがやられて逃げたと思ったら、今度は海賊なんかに捕まるしー! こんなジメジメした場所は嫌ー!」


「ランさん……じゃなかった」




 ――ランさんより先に、女の人が二人助けを求めてきた。しかもよく見ると、私も見知った顔。

 確かAランクパーティーのメンバーで、リーダーさんが怪鳥にやられるのを見て逃げてた人達だ。

 あの後どうしてるのかと思ったけど、まさかこんなところでロードレオに捕まってたなんて。船の上にある檻の中から必死に助けを求めてくる。

 この場所は海にも面してるし、船を隠したり出発させるための場所っぽい。


「ロードレオ海賊団め……ラン以外にも誘拐してたのか。だが、肝心のランはどこだ?」

「その『ラン』って小娘は、もしかしてオレの後ろにいる奴のことかァ?」

「ッ!? まだ誰かいる!?」


 Aランクパーティー二人も気になるけど、肝心のランさんの姿が見当たらない。そう思ってたら、横の方から誰かが声をかけてくる。

 振り向いてみれば、そこにいたのは副船長らしき黒ローブの姿。かなりどっしりとした男の声で、やっぱりこれまでの連中とは風格が違う。

 そして、その後ろにいるのは――


「え!? ミ、ミラリア!? それに……親父!? な、なんで二人が一緒にいるのさ!?」

「ランさん!」

「野郎……! ランを……オレッチの娘を放しやがれぇえ!」


 ――ロープで体を縛られたランさんの姿だ。

 特に外傷とかはないけど、無事かと言われればそうでもない。黒ローブに手綱のようにロープを握られ、迂闊にこっちも近づけない。

 下手に動けばランさんに危害が及ぶ。そんなことは一目瞭然だ。


「ほォう? この小娘、テメェの娘だったのか。だが、世界を股にかけて治安を司るエステナ教団ペイパー警部の娘にしては、随分と手癖が悪いんじゃねェかァ? オレらロードレオ海賊団のスナイパーライフルを盗み出したりなんかしてよォ?」

「やっぱり、ランを攫った理由はそれか。そのスナイパーライフルにしたって、もうそっちで回収できてんだろ? だったら、もう娘のことは解放してやってくれないか? ……頼む」

「できるわけねェだろォ。言うなれば落とし前だァ。ダメ親父なテメェの代わりに、オレが躾けてやらねェとなァ」


 どうにかペイパー警部も昂る気持ちを抑え、ランさんの解放を求めはしてる。でも、黒ローブは全く聞く耳を持たない。

 確かにランさんも悪いことをしたけど、だからって誘拐していい理由にはならない。ランさんに説得が必要なら、それはお父さんであるペイパー警部の役目だ。


 ただ、私にはさっきから気になることがある。この黒ローブの人、顔とかは見えないけど、声はどこかで聞いたことがある。

 もうそこまで答えが出そうなのに出てこない。首を傾げながらちょっと考え込んでしまう。


「ミラリアちゃんがそっちについてたのは計算外だったなァ。実力が分かってる以上、交戦は避けたかったんだがよォ」

「……お前さんもミラリアちゃんとは面識があるってか。だったら、その黒ローブも脱ぎ捨てたらどうだい? オレッチもとっくに『ロードレオ海賊団副船長』って正体には勘付いてるよ」

「ダハハハ。娘の教育はダメでも、そういう勘の鋭さは流石だなァ……!」


 おまけにペイパー警部もこの人の正体に気付いてるっぽい。私ももう少しで答えは出てくるんだけど、本当に誰なんだろ?

 その答えを示すかのように、ペイパー警部が一歩前に出て黒ローブの本当の名前を口にしようとする。




「いい加減、茶番は終わりにしようぜ。……ロードレオ海賊団副船長のトラキロさんよ?」

ようやく本性を露にするのは、ロードレオ海賊団副船長のトラキロ。

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