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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
新たな大陸と謎の海賊団
91/503

◇ロードレオ拠点救出戦

ペイパー警部も一時加わり、いざランの救出へ。

「あそこの洞窟がロードレオ海賊団のアジトだ。この岩陰から様子を伺うぞ」

「誰かが立ってる。見張りなのかな?」


 ペイパー警部に案内され、やって来たるはロードレオ海賊団のアジト。浜辺の近くにある洞窟の入り口で、それっぽい二人が槍を持って周囲を見渡してる。

 言ってた通りだ。この場所で間違いない。


「あの見張り、かなり周囲を警戒してるな。おそらく、ランを誘拐して捕らえたことで、厳戒態勢を引いたんだろう」

「つまり、ランさんはあの中にいるってこと?」

「十中八九間違いないな。ただ、ロードレオがこういう統率の取れた動きを取る時、決まって連中の中でも最高幹部クラスが動いてる。オレッチの読みだと、副船長が指揮を執ってるはずだ」

「そういえば、ランさんを誘拐した人達もそんなこと言ってた」


 ペイパー警部もロードレオ海賊団の内情に詳しいのか、色々と考えてくれる。確かに私も副船長の存在はあの時に耳にした。

 多分、黒ローブの人がそう。凄いパワーの人だったし、変な語尾トリオも素直に従ってた。

 あの人もこの中にいると考えると、ますます油断などできない。息を殺しつつも緊張が走る。


「ねえ、ここからどうするの?」

「……ミラリアちゃんはあの二人の注意が逸れれば、近づいて無力化できそうか?」

「できる。意識が向かなければ、コッソリ確実にできる」

「なら話は早い。今からオレッチが見張りの注意を逸らせるから、その間に無力化してくれ」


 ここからの作戦についても、ペイパー警部には作戦があるらしい。岩陰で両手を組むように構え、右人差し指を見張りの方へと向け始める。

 何をするんだろ? これで注意を逸らせるみたいだけど――



 バシュンッ――ボンッ



「ん? なんだ?」

「そっちから聞こえたぞ?」


 ――次の瞬間、ペイパー警部の指先から炎が弾のように放たれた。その弾は見張り近くの岩に当たり、わずかに音を響かせる。

 見張り二人の意識もそっちに向き、今ならばこっちにも気付かれない。


「今だ!」

「う、うん!」


 何をどうしたのかは分からない。でも、やるべきことは決まってる。

 見張りの意識が逸れている隙を狙い、縮地で一気に接近。魔剣に電撃魔法を付与させ、後ろから回り込むように斬り抜く。



 スパンッ



「こ、今度は何が……!?」

「か、体が痺れて……!?」


 それにより、見張り二人の無力化にも成功。電撃魔法の痺れにより、そのまま砂浜へと倒れ伏せる。


【上手くいったな】

「うん。これで当分は目も覚めない」


 ツギル兄ちゃんとも確認するけど、命に別状はない。気絶してるだけ。

 いくらランさんを誘拐した悪い人達でも、殺してしまうのはいけないこと。私は虐殺をしに来たんじゃない。救出に来たんだ。


「す、凄い動きだったな……。速いのに静かだし、オレッチにはまるで動きが見えなかった……」

「速さには自信がある。それより、ペイパー警部が使ったのって何?」

「ああ、あれか。火炎魔法をオレッチなりにアレンジしたものだ。炎を弾丸のように射出することで、ロードレオが使うライフルと同じようなことができる。まあ、威力や射程は数段落ちるがな」


 仮にもエステナ教団のお偉いさんなだけのことはある。武器を持ってないと思われたペイパー警部には、独自の魔法という武器があった。

 ペイパー警部自身にも戦う力があるのは心強い。状況を冷静に見ることもできるし、この人とならランさんも助け出せる。


「それにしても、オレッチとしてはミラリアちゃんの対応の方に驚きだな。正直に言うと、見張りどもは『殺して無力化』させるんじゃないかと思ってた」

「そんなことはしない。敵を殺すのは、狩りとして生きる時やどうしようもない場面の時だけ。そこまで徹底的にしてたら、ただの虐殺」

「……成程ね。まあ、その考え方自体は立派だと思うさ」


 ただ、私への質問には失礼してしまう。こうして一緒に行動するのは初めてだけど、私はそんな野蛮じゃない。

 確かにこれまで失敗続きだったけど、この心にいつも抱くのはエスカペ村での日々で得た教訓。どれだけ難しくても、それらをもう破りたくない。


「オレッチも余計な詮索して悪かったな。とにかく、今はランの救出が先だ。このまま息を潜めて、アジトの奥を目指すぞ」

「ランさんがいるとしたら、この洞窟の一番奥とか?」

「その可能性は高いな。それにこの洞窟は、確か最奥が海と繋がってたはずだ。もしかすると、ロードレオはそこから船でランを連れ出すかもしれない。そうなったら手遅れだが、焦ってことを仕損じるわけにもいかないな……!」


 ともあれ、ペイパー警部も目下の課題は理解してる。どうにか冷静に状況を分析してるけど、言葉の節々にはランさんを早く助け出したい気持ちも見えてくる。


 きっと、私がディストール王国にいた時のスペリアス様も同じ気持ちだっただろう。

 それなのに私はあの時、ワガママ言って帰ることを拒んでしまった。あの時素直になっていれば、エスカぺ村の悲劇も起こらなかった。

 悔やんでも悔やみきれない。今考えるべきじゃなくても、脳裏からどうしても離れない。


【……ミラリア。今は眼前に集中しろ。もう二度と、あんな光景は見たくないんだろ? 誰にもさせたくないんだろ?】

「分かってる。私も気持ちを切り替える」


 ツギル兄ちゃんにも読まれていたのか、ペイパー警部にも聞こえないような小声で諭される。

 言ってることはもっともだ。私はランさんを助けて、ペイパー警部の親子があの日の私と同じ目に遭わないようにしたい。

 今はそれを優先し、静かに洞窟の奥へと歩みを進めるのみ。


「……待ちな、ミラリアちゃん。この先に敵が潜んでやがる」

「まだ一番奥じゃないよね?」

「ああ。だが、どうにも厄介なのが道を塞いでるみたいだ」


 少しずつ見つからないように奥へ進めてはいるものの、途中の一本道手前の角でペイパー警部から待ったが入る。

 この人、本当にこういうのが手慣れてる。火炎魔法の扱いとか状況の見方とか、ランさんのお父さんってのがよく分かる。

 そして、ペイパー警部も厄介がるこの先の人物というのは――




「副船長が捕らえた女達、おとなしくしてるでヤンスか?」

「ああ。事情は別々だが、俺らロードレオに逆らえるはずがないでゴンス」


「あっ。幹部っぽい変な語尾の人達」

なお、ネームドではない模様。

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