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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
新たな大陸と謎の海賊団
90/503

その警部、推理する

仮にも警部と呼ばれる男の手腕。

「スナイパーライフル……? ランさんが攫われた時、スナイパーライフルは持ってなかった。家の中にあるはず」

「残念だが、どこを探しても見当たらなかった。ただ、これでロードレオ海賊団の動きの意味については見えてきたな」


 ペイパー警部は納得してるけど、私にはチンプンカンプン。

 スナイパーライフルがないと、何がどうロードレオ海賊団と関係するのだろう?


「ロードレオの狙いは二つ。一つはランが持ってたスナイパーライフルだ。オレッチもランから軽く聞いた程度だが、あれは元々ロードレオ海賊団が作ったものらしい。それをランが勝手に持ち出し、狩りの道具として使ってた。……連中はそれを奪い返すため、この家に踏み入ってきたと見える。わずかながら、オレッチ達以外の人間が踏み入った痕跡もあった」

「も、もしかして、私がランさんを追ってる間に……?」

「連中も鮮やかな手口を見せるもんだ。……そして、もう一つの狙い。こっちは単純だ。スナイパーライフルを盗んだランに制裁を加えるため……誘拐した」

「そ、そんな……!? じゃ、じゃあ、ランさんは殺されることも……!?」


 最初は分かんなかったけど、ペイパー警部が説明を繋げてくれたことで話も見えてくる。

 つまり、ロードレオ海賊団の狙いは『スナイパーライフルを盗まれたので取返し、盗んだ人間を痛めつける』ってこと。そのためにランさんを誘拐したり、他の人が家に侵入できるだけの隙を作ってた。


 親方さんの船で会った時とは思えないほど、色々と計算された手口だ。多分、あの黒ローブの人がいた影響なんだろう。

 あの人は変な語尾トリオより偉そうな立場にいた。あの人が加わったことで、ロードレオ海賊団の動きは一気に良くなった。


 ――私も完全に油断してた。ロードレオ海賊団が噂されるほど恐ろしい組織なのは間違いない。


「……くっそ! だからオレッチも忠告しておいたのに! 海賊が作った武器なんて使うなって! そんなものをあまり人前で見せるなって! もっと……もっとオレッチが強く言いつけておけば、こんなことにはならなかったのに……!」

「ペイパー警部……」


 これまでは冷静に調査してたペイパー警部も、事態のマズさを再認識して取り乱してる。壁に拳を打ち付け、自らの行いを悔いている。

 きっと、ペイパー警部もランさんには何度も説明はしてたんだ。でも、聞き入れてはもらえなかった。

 お母さんの死に目に立ち会えなかったことや、家族をないがしろにしてきたこと。それらがランさんにとって許しがたい出来事となり、二人の距離が開いてしまった。


「だが、元をただせばオレッチの責任か……! どうしてオレッチはいつもいつも、家族のピンチでその場にいてやれないんだ……!?」


 ペイパー警部自身もそのことは理解しており、悔しそうに心根を吐露してる。この人もこの人で、別にこの親子関係が良いとは思ってなかったんだ。

 お互いの思いがすれ違って、この結末を招いてしまった。まるで、私とスペリアス様みたいだ。


 ――でも、この二人はまだ間に合う。


「ペイパー警部、ロードレオ海賊団のアジトが――ランさんがどこにいるのか教えて。私、すぐにでもランさんを助けに行く」


 私と同じ結末にはさせない。ランさんとペイパー警部には、まだ話し合えるチャンスが残ってる。

 ランさんだってそのためにペイパー警部のところへ行こうとした矢先の出来事だ。今はそこにロードレオ海賊団が割り込んで邪魔してるだけ。

 障害で隔たれた道のりは、私が必ず元に戻す。


「……オレッチが言うことでもないが、ミラリアちゃんからすればオレッチ達家族なんて赤の他人だろ? それどころか、自分を捕まえようとする人間だ。なのにどうしてそこまで動こうとしてくれる?」

「それはさっきも言った。私、ランさんにお世話になった。だから助ける」

「……フッ、そうかい。リースト司祭から聞いてた話とは全然違うな。……オレッチも心に決めたぜ。今この時は最後までミラリアちゃんと共闘だ。頼んだぞ」

「うん。頼まれた」


 ペイパー警部とも顔を合わせ、共に協力の意思を確認できた。これで準備は整ったと言えよう。

 後はすぐにでもロードレオ海賊団のアジトへ乗り込み、ランさんを救出するだけだ。


「ロードレオ海賊団のアジトはオレッチでも目星は着いてる。ただ、乗り込む前にミラリアちゃんにはここから先の行動で約束してほしいことがある」

「約束? 何?」

「敵は複数、こっちは二人。人員を集めてる余裕もない。だから強引に乗り込むんじゃなく、コッソリと乗り込むんだ。ロードレオの連中に見つからないようにな」

「分かるけど、ちょっと自信ない……。私、アジトに着いたら焦って突っ込みそう……」

「その気持ちはオレッチも同じさ。だが、こういう時こそ冷静でないといけない。約束してくれるか? ランのためだ」

「う、うん。ランさんのためならそうする。それにしても、ペイパー警部は凄く冷静に見える」

「オレッチは仕事柄、いつ何時でも冷静さが求められててね。熱くなる時ほど、かえって冷静になるのが信条だ。本当はオレッチも荒れたいが、ランのためにも今は堪える」


 ペイパー警部にも考えはあるらしく、そのことは私も理解できる。

 救出といっても、ロードレオ海賊団との相手は極力避けた方がいいってことか。なんだか、狩りをしてる時みたい。

 でも、今回の相手は人間だ。まだどんな力を持ってるかも分からないロードレオ海賊団。底が見えないってのは怖い。


 ――だけど、ビビってる場合じゃない。今はペイパー警部と協力してランさんを助け出す。そのことだけを念頭に置く。




「覚悟を決めてくれたんなら、早速向かうとしようか。ロードレオ海賊団がアジトに使ってるのは、ここから東の海岸沿いにある洞窟だ。……今だけはオレッチもその腕を頼りにさせてもらうぞ」

今は敵味方関係なく、共通の目的を目指して。

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