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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
新たな大陸と謎の海賊団
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その少女、本心を語る

ミラリアだってお話ししたい。

「人の感謝の気持ちを素直に受け取る……。そ、そう教わりはした」

「だったら、素直に受け入れればいいじゃんか? 他のことは頑張って覚えてるのに、どうしてそれだけしないのか気になったもんでね。それも、どこか自分に無理するようにさ」


 ランさんに言われてみれば、確かにエスカぺ村で教わった中にも感謝に関するものはあった。

 感謝されるということは、相手の気持ちに応えたということ。お礼といった感謝の気持ちを受け止めないと、相手の気持ちも宙ぶらりんのままになる。

 もらい過ぎはいけないけど、もらわないのもダメなこと。そういうふうに教わりはした。


「そ、その……色々と事情がある。そこの話はしたくない」

「まあ、別に話さなくてもいいさ。だが、ミラリアはそのせいで人との距離を置き過ぎてる。こうやって話してると普通に喋れるし、本当はもっと話したいんじゃないかい?」

「それは……お話しはしたい」


 気がつけば、なんだかランさんのペースで話が進んでしまってる。でも、悪い気はしない。

 私だって、話すこと自体は好き。フューティ姉ちゃんとお話しするのだって、あんな結末さえなければ続けたかった。

 だけどずっと嫌な結末ばっかり見てきたから、どうにか人と距離を置こうと意識が働く。実際にこうして話をしてても、そのことが頭をよぎって距離を置きたがってしまう。


 ――本当はお話が好きなのに、感謝されるのも嬉しいのに、自分で線引きしてずっと避けてしまう。


「何があったのかは聞かないが、そのために好きなことや教えてもらったことをわざわざ避けるのは違うんじゃない? こんなことでミラリアが無理する必要なんてないと思うよ?」

「……確かに無理してる。自分でもチグハグなことしてた」

「まあ、アタイも深くは関われないさ。だが、ミラリアには色々と助けてもらってる。そんな人に無理はしてほしくないかなー……ってね。ちょいとしたお節介さ」


 思い返してみると、本当に人と関わるのを避けるならば誰とも話さなければいいだけ。楽園に関する情報だって、人に聞かずに一人で調べればいい。

 それでもそうしなかったのは、私が心のどこかで人との接点を求めてたから。何より、私一人じゃどうにもならないから。


 『人は誰かに助けてもらわないと生きていけない』ってのは、エスカぺ村でも学んだこと。それが大事だと分かってるからこそ、私は自然と人との関りを求めてたのだろう。

 今でも私と関わって誰かが傷つくのは怖い。でも、それに怯えてばかりはやっぱりいけない。


 ――場面ごとの加減も覚えないと、私は成長できない。


「さーて、アタイも少しお節介が過ぎたかね。時間も遅いし、今日はもう帰るとするか。あっ、なんだったらミラリアもウチに来る?」

「え? ランさって、ポートファイブに住んでるの?」

「うん、そうだよ。ギルドに非登録なのも、そもそもがこの港町の人間だからってのもあるのさ。どうせアタイ一人しかいないし、遠慮なく寄ってきなよ」

「……分かった。お呼ばれする」


 気がつけば、窓の外も暗くなっている。ランさんの家にもお呼ばれしたし、ここはお言葉に甘えよう。丁度いい機会だ。

 私もランさんにはお世話になってるし、この人が相手なら人との接し方の練習にもなりそう。

 逃げてばかりじゃダメだ。感謝の言葉もしっかり受け止め、他人と接することができるようになりたい。これはそのための第一歩だ。

 そんなわけで、私はランさんと一緒に家路へと向かう。


「プハァ……おォ? ミラリアと……誰だったかなァ?」

「あっ、トラキロさん。こっちはランさん。お仕事は終わったの?」

「あァ。ミラリアのおかげで、闇瘴による被害は問題ねェよォ。感謝してるぜェ」

「それは良かった」


 部屋を出れば、丁度トラキロさんと出くわした。マナの聖水による闇瘴対策も一段落したらしく、廊下で紙で撒いた何かに火を点けて咥えている。

 あれって何だろ? 変な臭いもする。ちょっと苦手。


「おじさん……トラキロさんだっけ? あんま廊下でタバコなんか吸わないでよ。苦手な人だっているんだし」

「おうおう、すまねェなァ。……ところでランちゃんだったか? 背中に背負ってるその長筒は何だァ?」

「ああ、これ? スナイパーライフル。残念だけど、知らない人には教えてやんないよ」

「……そうかい。まァ、仕方ねェなァ」


 私が鼻を抑えてると、ランさんがトラキロさんに物申してくれた。何やらタバコというものの火を消すと、ランさんとちょっとした話を始める。

 やっぱり、スナイパーライフルのことはトラキロさんでも気になるんだ。海を渡って商売してても、ロードレオ海賊団が作った武器までは出回ってないか。

 ただ、ランさんもトラキロさんに詳細までは説明しない。適当に流すと、そのまま私の手を引いてギルドの外へと向かう。


「ねえねえ、ランさん。トラキロさんにはスナイパーライフルの自慢しないの?」

「アタイ、あの人のことは知らないからね。たまにギルドで顔を合わせる程度で、それ以上の関りなんてない。そんな人間に詳細は語れないさ」

「でも、私には話してたよね?」

「ミラリアは話しやすいからいいの。お世話になったりしたりの間柄だし」


 理由を尋ねて聞いてみれば、ランさんはあっけからんと述べてくれる。なんだか、ランさんにとっての私は少し特別なようだ。

 なんだかんだで関わっちゃったし、本来の『あんまり人と関わらない』って考えからは完全に逸れてる。でも、これでよかったと思う。

 結局、私の本心は『人と関わりたい』ってことと『一人は寂しい』ってことだ。変に線引きできるほど器用でもない。


 ――もう不幸は嫌だけど、それでも私は人の輪の中にいたい。

なお、トラキロは今回流されてばかりな模様。

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