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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
新たな大陸と謎の海賊団
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そのメイド、暗躍する

元凶となる闇瘴を発生させていたのは……?

「え? 何? 知り合い?」

「う、うん。私のこともお世話してくれたメイドさん。遠くだけど、多分あの人」


 少し離れた崖の上に姿が見えたのは、私も何度か見たメイド服姿。ディストール王国では私の世話役として、エスターシャ神聖国でもフューティ姉ちゃんと一緒してた眼鏡メイドさんだ。

 どうしてあの人がここにいるんだろ? まさかエスターシャ神聖国でも居場所がなくなって、今度はこっちの大陸に来たのかな?

 なんだかあの人とはよく出会う。ただ、崖の上で何かしているようにも見える。ここからだとよく見えないけど。


「アタイも気になるな……。ちょいとここから様子を見させてもらうか」

「そのライフルで? まさか、眼鏡メイドさんを攻撃したりしないよね?」

「安心しな。アタイもそこまで野蛮じゃないよ。スナイパーライフルについてるスコープには、海の男達が使う望遠鏡と同じ機能がある。これを使えば遠くのものでもハッキリ見えるのさ」


 目を凝らして眺めてると、ランさんがライフルを眼鏡メイドさんの方向へ構え、一緒についてるレンズのついた筒で覗き始める。

 そういえば、親方さんも同じようなのを使ってたっけ。これなら遠くが見れるらしいし、私も確認してみたい。


「ん? なんだあれ? あのメイド、黒い玉みたいなのを持ってるが……?」

「私にも見せて」

「あ、ああ。でもまさか、あの黒い玉は……?」


 ランさんにライフルのスコープと呼ばれる筒を覗かせてもらい、私も眼鏡メイドさんの姿を見させてもらう。

 成程。本当に遠くが見える。これは便利だ。とはいえ、今は眼鏡メイドさんが何をしてるのかの確認が先。

 私の目にも映ったのは、眼鏡メイドさんが崖の上で黒い球を掲げる姿。そこから黒いモヤモヤが漂ってるのが見えるけど、あれってもしかして……闇瘴?


「あっ。崖からいなくなった。こっちに気付かれたのかも……?」

「いずれにせよ、これ以上の確認はできないか。ただもしかすると、あのメイドが持ってた玉こそが闇瘴の発生源なのか?」

「……だとしても、今の私には考えてる余裕もない。何より、リーダーさんの容態が気になる」


 正直、頭の中で不安はある。もしかしてあの眼鏡メイドさんこそ、闇瘴を放出していた張本人なのだろうか?

 まさか、エスターシャ神聖国での巨大サソリも眼鏡メイドさんの仕業だったりするの? やって来た時期とも一致してる。これってただの偶然?

 いや、今はこれらの考察をするより、リーダーさんをなんとかしないと。


「リーダーさん、大丈夫?」

「ハァ、ハァ……く、苦しい……た、助けてくれ……」

「アタイも持ってる薬をつぎ込んだが、まるで効果がない。これは早くギルドに連れていって治療しないと……!」


 駆け寄って様子を見てみれば、相変わらず苦しんだまま。顔色の悪さどころか、全身に黒い斑点まで浮かんでいる。

 ランさんでも治療できないなら、それこそギルドに連れて行くしかない。この症状はヤバい予感しかしない。


「急いだ方がいい。今から転移魔法でギルドまでひとっ飛びする」

「転移魔法って、確かさっきも使った――」



 キンッ――ヒュン!



「着いた」

「速っ!? ここ、本当にポートファイブのギルドじゃんか!?」

「うおおぉ!? 急に誰か出てきたと思ったら、ミラリアちゃんに確かランちゃんだったか!? それに倒れてるのはAランクの冒険者だったか!? 何があった!?」


 そんなわけで、眼鏡メイドさんのことやら何やらも後回し。魔剣による居合で転移魔法を発動させ、ギルドの中まで瞬間移動。

 丁度親方さんもいてくれたので話も早い。リーダーさんを助けるためにも、早急な事情説明が必要だ。


「このAランクパーティーのリーダーさん、闇瘴にやられた。なんとか治せない?」

「闇瘴にだと!? だ、だとしたら一大事じゃないか!?」

「おいおいィ……。帰ってきたと思ったら、とんでもねェ騒ぎを持ち込んできたなァ……」


 私が闇瘴のことを口にすると、親方さんも大慌て。その声を聞き、ギルド内にいたトラキロさんもこちらへ寄ってくる。ただ、その様子からかなり警戒してるのが分かる。

 ギルドにいる他の人達にしても、どこか余所余所しく怯えてる。


 闇瘴がどういうものか詳細は分からない。でもエスカぺ村ではこういう時、みんなで助け合って乗り越えてた。

 私が風邪で寝込んだ時も『馬鹿なのに風邪で寝込んだ』などと言われながらも、みんなが心配して看病してくれた。外の世界にはそういう習慣がないってこと?


「し、しかもこの闇瘴の浸食具合……!? これはもう、とてもじゃないが助からないな。残念な話だが……」

「ハァ、ハァ……い、嫌だ……死にたくない……!」

「そ、そんな!? どうにかして助けられないの!? 親方さん!」

「ミラリアちゃんよォ。どのみちこいつは行け好かねェ態度を取ってた野郎じゃねェかァ? 必死こいて助ける義理もねェだろォ?」


 一番しっかり診てくれる親方さんにしても、リーダーさんを治すことには匙を投げてる。トラキロさんに至っては、リーダーさんを助けることさえどうでもいいと考えてる。

 確かに私もこの人には魔剣を取られそうになって怒ったこともある。だからって、見捨てていい理由にはならない。


 ――命を安く見ちゃいけないって、スペリアス様にはずっと教わってきた。その教えは今も変わらない。


「と、とはいえ、闇瘴がかなり肉体を汚染してる。わしらでは手の施しようがない」

「な、なら、どうすれば助けられる!?」

「エステナ教団が持つマナの聖水があれば見込みはあるが、あれは貴重な品だ。聖女フューティ様しか扱ってないし、ポートファイブの教団支部では……」

「マナの聖水……!?」


 私としては、リーダーさんを助けることが最優先。死んじゃったら話も何もできない。文句が言いたい時は終わった後に言う。

 そのために必要なのは、マナの聖水という特別な聖水。それがあれば、親方さんでリーダーさんを治療できるそうだ。


 ――ならば話は早い。人の命がかかったこの場なら、託してくれたフューティ姉ちゃんも納得してくれるはずだ。




「親方さん! これ、マナの聖水! 使って!」

対処するための手段は、すでに姉のように慕った聖女から託されていた。

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