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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
新たな大陸と謎の海賊団
80/503

◆闇瘴鳥フィアフライⅡ

味方の援護を受け、起死回生のチャンスを掴む!

「ランさん!?」

「驚いてる暇はないぞ! アタイだって、隙を作るぐらいはできる! おい、鳥公! こっちがいることも忘れんなよ!」


 怪鳥を怯ませてくれたのは、ランさんのライフルによる一撃。翼の一部が焦げ、空中でわずかに悶えている。

 でも、それも長くは続かない。すでに再生は始まり、今度はランさんに襲い掛かろうと狙ってる。


 ――そんなことは許さない。


「ツギル兄ちゃん! この一撃で決める!」

【ああ! 気合入れろよ!】


 私としてもこれが最後のチャンスだ。位置取りとしてもこっちが真上で、怪鳥の頭上を取れている。

 満身創痍の中での起死回生。ここで決めなければ、ランさんにまで被害が及ぶ。それだけは絶対に避けないといけない。


 ――もう優しくしてくれた人を失いたくない。


「ハァァアア! 聖天理閃!!」



 ズパァァアンッッ!!



「ゲッ!? ギャァ……!?」


 上空で魔法陣を下向きに展開し、急降下しながらの一閃。落下の加速とも合わさり、さらには怪鳥のバランスも崩れたまま。

 そこから全霊で放つ聖天理閃は今度こそ怪鳥の体を引き裂き、苦悶の声を上げているのが頭上で聞こえてくる。


「ふんぎゅっ!? ちゃ、着地……失敗した……」

「ミラリア!? 大丈夫か!?」

「わ、私のことより、怪鳥の方は?」

「どうやら倒せたみたいだ。あっちも墜落して倒れたまま、体から闇瘴っぽいのを噴き出してる」


 ただ、こちらも後のことを考える余裕すらなく、地面へ転がりながら着地する。とりあえず大丈夫だし、今気になるのは怪鳥の方だ。

 駆け寄ってくれたランさんにも確認すれば、確かに怪鳥の方も地面へ倒れ伏している。

 力なく横たわったその体から溢れているのは、巨大サソリの時と同じ闇瘴。しかも今回はフューティ姉ちゃんの聖女パワーなしでも浄化できているのが見て分かる。

 やはり、理刀流をマスターして聖天理閃を完成させたのは正解だったか。私の理刀流に魔剣の力が合わされば、闇瘴という脅威にだって立ち向かえる。

 理刀流にしたって、そもそもはフューティ姉ちゃんが剣術書を遺してくれたから覚えられたもの。この技だって無駄にしたくない。


「す、凄いな、ミラリアは……。アタイも闇瘴の恐ろしさは知ってるが、戦って勝つどころか浄化までできるなんて……」

「私の大切な人がこの技を覚えさせてくれた。……それより、ランさんに言いたいことがある」

「え? な、なにさ? ちょっと怖い顔しちゃって……?」


 こうやって無事に聖天理閃を決めるまで運べたのも、ランさんが隙を作ってくれたおかげ。そこは素直に感謝したい。

 だけど、どうしても素直になれないことがある。そのことがあるから、どうしても眉をひそめて物申してしまう。


「上手く行ったからよかったけど、ランさんも危なかった。ああやって囮になるような真似はやめてほしい。ランさんにもしものことが――あたっ!?」

「あんたは何を言ってんだか……。アタイが手を出さなきゃ、そっちこそあのままやられてただろ?」


 ランさんが怪鳥をライフルで撃ち、狙いがそちらへ向いてしまったことには物申したい。だって下手をすれば、ランさんが殺されてたかもしれない。

 そんなのは嫌。絶対に嫌。もう見たくない。

 そのことを指摘すると、ランさんが私の頭にチョップを加えてくる。ちょっと痛いし、自慢のアホ毛が崩れるからやめてほしい。


「あのさ……ミラリア。自分達を守るために戦ってる人間がいて、自分は指を咥えて見るばかり。そんなの面白くないし、できる限りの支援はしたくなるのが人情だろ?」

「人情……? で、でも、ランさんじゃあの怪鳥を倒せなかった」

「だったら、ミラリアはもしアタイの立場だった場合、素直に指を咥えて見てたってのかい?」

「……見てなかった。できる限りのことはしたくなる」


 でも話を聞いていくと、ランさんの言い分も分からなくはない。確かに立場が逆だったら、私だってランさんの力になろうと動いてた。

 どれだけ己の無力を理解しても、動きたくなる時はある。それが『人情』ってものだと思う。

 そう考えればチョップされるほど怒られたのも納得。ランさんの気持ちを考えれてなかった。


「まあ、アタイも助けてもらったのは事実さ。ちょいと叱った後だけど、そこは感謝させて頂戴な」

「うん。こっちも感謝してる。ランさんの援護がないと危なかった」

「だろだろ? そういう感謝は素直にしてほしいもんだ。……それにしても、どうしてまた闇瘴なんか発生したんだ? ここいらではカラフライが怪物化する事例なんて初めてだぞ?」


 自分なりにもランさんの気持ちには納得できたけど、今度は別の疑問点が浮上。闇瘴のことはエスターシャ神聖国と同じく、こっちの大陸でも有名な話らしい。世界的に問題視されてるも本当だったようだ。

 ただ、こういった怪物化は初めてとのこと。エスターシャ神聖国の巨大サソリについても『珍しい事例』って、リースト司祭あたりが言ってた。

 そのことが気になるのか、ランさんは当たりを見回しながら考えこんでいる。




「……ん? あれ? あそこに誰かいるような……?」

「誰かいる? 誰がいるの?」




 すると、ランさんが一ヶ所へ不思議そうに目を向ける。少し遠くの崖の上らしいけど、確かに人影が一つ見える。

 よく目を凝らしてギリギリ分かるぐらいだけど、私も注視してみれば――




「……えっ!? あの人ってまさか……眼鏡メイドさん!?」

ただのチョイ役では終わらない人。

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