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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
新たな大陸と謎の海賊団
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◆闇瘴鳥フィアフライ

VS 闇瘴鳥あんしょうちょうフィアフライ

空を舞う恐怖がミラリアを襲う!

聖閃付与(セントアサイン)……! これでいつでも聖天理閃(せいてんりせん)が撃てる……!」


 敵の怪鳥は私の頭上。こっちは空なんて飛べないから、集中して待ち構えるしかない。

 鞘に納めた魔剣に回復魔法を付与させ、迎撃する準備は整えた。地の利が向こうにある以上、チャンスは少ない。


「グキャァァアア!!」

「ッ! 来た! 一撃で仕留めてみせる!」


 勝負は一瞬だ。怪鳥も高度を一気に下げて突っ込んで来たし、逃げることなど許されない。

 決めるはお互いが交差する瞬間。この機を逃しはしない。



 キンッ――ヒュン



「くうぅ!? 外した!?」

「グケェェエ!」


 だけど、私の居合は虚しく空を斬る。いくら私の居合が鋭くても、流石に空を飛んでる相手は分が悪い。

 怪鳥も元々は警戒心の強い魔物だったし、寸前のところで見切られて再度空中へ逃げられる。その動き自体もさっきのカラフライとは比べ物にならないほど速い。

 これは強敵だ。ただでさえ強い警戒心に速さが加わり、おまけに空も飛べて地の利もある。


「ゲバァァア!!」



 バシュンッ!



「な、何!? 何か吐いてきた!?」

【マズい! 避けろ! 闇瘴と同じ力を感じるぞ!】


 さらに厄介なことに、怪鳥は口から黒くて禍々しいものを吐き出してくる。

 ツギル兄ちゃんが言う通り闇瘴の一部なら、触れるとヤバいことだけは確実。なんとか回避してみれば、地面から湯気が溢れてそこにあった草を枯らしていく。

 そういえば、フューティ姉ちゃんも『闇瘴は苦痛や恐怖の力』とか言ってたっけ。おそらくはリーダーさんもあれにやられたのだろう。


「あんなもの食らったら、本当に死んじゃうかも……!? でも、こっちの攻撃は届かない……!?」


 正直、戦況は最悪だ。震斬(ブレスラッシュ)といった私の攻撃では、怪鳥まで届かせることができない。

 向こうの攻撃は届くのに、こっちの攻撃は届かないジリ貧。私も空を飛べればいいんだけど、そんな都合よく――


【ミラリア! 俺の揚力魔法を覚えてるか!? あれを足場に使え!】

「そ、そうか! 分かった! やってみる!」


 ――そう考えてたら、ツギル兄ちゃんのナイスアイデア。お社の地下から脱出する時にも使った揚力魔法ならば、宙を舞うことだってできるかも。

 空を飛べるわけじゃないけど、発動させた魔法陣を足場にして間合いを詰めることは可能。空中での不利は変わらないけど、今はやってみるしかない。


「揚力魔法発動。魔法陣……展開!」



 ブゥウン――タンッ!



「クケェエ!?」


 魔剣への聖閃付与(セントアサイン)はそのままに、二重掛けをする形で揚力魔法を付与。そこから居合で描いた魔法陣に足をかけ、こちらも空中勝負へと挑む。

 別に翼が生えたわけじゃないから、空中戦を維持するためには再度魔法陣を展開する必要がある。でも、これで間合いに入ることはできた。

 驚く怪鳥に対して居合の構えで突っ込み、空中で聖天理閃を決めにかかる。



 ザシュッ!



「ダメ! 浅い!」

「クゲェェエエ!!」


 ただ、やはり慣れない空中での居合は決定打にならない。

 居合とは本来、地上での踏み込みも含めた動きで切れ味が増すもの。揚力魔法はあくまで『一時的に一方向へ飛び出せる』だけ。踏み込むための足場にはできない。

 そのため、放った聖天理閃は怪鳥にかすっただけ。仕留めるどころか、かえって怒らせてしまう。


「クゲェ! ゲェェエエ!!」

「ひっ!? 爪、危ない!」

【その爪にも闇瘴の力を感じるぞ! 気をつけろ!】


 おまけに空中戦となったことで、自由に空を飛べないこっちが不利に。なんとか魔法陣で加速して回避するも、こっちは細かい向き調整まではできない。

 いくら空中で加速しても、鳥相手に空中戦は無謀すぎる。最初の一撃を外した時点で最大のチャンスを逃してしまった。


「ハァ、ハァ……! し、しんどくなってきた……!」

【踏ん張れ! 俺の魔法はいくらでも使って構わないから、攻撃だけは食らうな!】


 ただでさえ怪鳥の攻撃には闇瘴の効果が付与されてる。一撃でも食らってしまえば、そこに宿る苦痛や恐怖が体に流れ込みそうで怖い。

 ツギル兄ちゃんもそのことを分かっているからか、必死に私に呼びかけてくれる。でも空中でギリギリ持ちこたえるだけで、反撃の糸口すら掴めない。

 むしろ慣れない空中戦と居合による魔法の連続発動により、私の体力もかなり削れてしまった。『魔剣の力は私の気力に左右される』ってツギル兄ちゃんも言ってたけど、ここまで消耗したのは初めてだ。


 ――このままでは負けてしまう。


「な、なんとか立て直し――あ、あれ? 怪鳥、どこ?」


 もう逃げ回る余裕もない。思い切って反撃しようと体をひねって向き直ると、さっきまで背後にいたはずの怪鳥の姿が見えない。

 まさか、見失っちゃった? こんな空中のどこへ? 思わず周囲を見渡すけど、私の目には映らない。




【下だ! ミラリアァァア!!】

「クゲェェエエ!!」

「ッ!? し、しまった!?」




 そう思ってたら、ツギル兄ちゃんの声でようやく居場所を掴む。ただ、その時にはもう遅い。

 怪鳥は私の真下で口を開き、再び闇瘴を吐き出そうと狙いを定めてる。回避したくても、体に力がうまく入らない。


 もしかして、これで終わりってこと? まだ楽園も見つけてないのに? 何だったら、今でもランさん達が逃げ切れてない。

 こんなところで終わるだなんて嫌。だけど、この場を打開する術が――



 バシュゥンッ!



「クゲッ!?」

「よし、怯んだ! ミラリア! 今だぁぁあ!!」




 ――諦めかけていたその時、ランさんの声と共に怪鳥が体勢を崩した。

倒せなくても、助けることはできる!

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