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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
新たな大陸と謎の海賊団
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その少女達、共に狩りをする

スナイパー少女ランと共に狩りをすることになった剣客少女ミラリア。

「よーし! 火の始末も問題ないし、朝から早速行きますか!」

「本当に私と一緒に行くの? その……ちょっと不安」

「大丈夫だって。アタイがミラリアにちょっかい出すことはないからさ」

「そうじゃなくて、危なくないかなって……」

「むしろミラリアが一緒だから、危険な橋でも渡れるってもんさ。アタイはこの辺りにも詳しいし、ウィンウィンの関係ってね」

「ウィーンウィーン……?」


 ランさんと一緒に眠った翌早朝。寝床をしまって一緒に森を散策する準備に入る。

 私も最初は断ろうとしたけど、結局はランさんの勢いに飲まれてしまった。この勢いの良さはエスカぺ村の巫女さんに近い。


 色々と好意的にみられてるけど、やっぱり私の不安は拭えない。ランさんに悪意がないとしても、私と関わると不幸が付きまとってしまう。

 本当に大丈夫なのかな? ともかく、森にいる間は一緒にいよう。危険もいっぱいだし、昨晩のツキノパンダみたいなのにも対策はできる。


 ――ところで『ウィーンウィーン』って何だろ? 何か動くのかな?


【なんだか、妙なことに巻き込まれたな。一応俺達には楽園の調査だってあるんだが……】

「まあまあ、魔剣のお兄ちゃんや。今後も旅をしていくなら、こういう体験は練習になるでしょ?」

「確かに言えてる。とりあえずは一緒にウィーンウィーンって行く」

「……いや『ウィンウィン』だからね? 意味は……まあ、いっか」


 ともあれ、私としてももう少し収穫は欲しい。旅の練習になるのも事実。

 こっちの大陸は来たばっかりだし、これまでの大陸とは勝手も異なるだろう。早いうちに慣れるのも一興だ。


 ただ、ランさんはやっぱり楽園の話をしたがらない。ウィーンウィーンな話を出したのも話題を逸らすためっぽい。

 そんなに楽園のことが嫌いなのかな? もしかして楽園の出身――ってことは流石にないか。私のことに驚くのと辻褄が合わないし。




「おっ? 早速いい獲物が見つかったな。ミラリア、ここの草場に隠れるぞ」

「獲物? 何? ……鳥?」




 少し森の中を歩いてると、前方遠くに沼地が見えたところでランさんが待ったをかけてくる。

 なんだか、鳥が四匹ぐらい集まってるっぽい。どうやら、あの鳥が今回の獲物のようだ。


「あの鳥もデカゲーターとかみたいに困らせてるの?」

「いや、害獣的な討伐対象じゃない。ただあの鳥はカラフライと言って、羽は衣類の材料としてメジャーだ。肉も市場によく流通してて、ポートファイブのメイン貿易品になってる」

「つまり狙い目ってこと?」

「そういうことさ。ただ、中々厄介な相手でね。警戒心が強く、迂闊に近寄るとすぐ逃げられる。今アタイ達がいる場所だって、気づかれないギリギリのラインだ」


 ランさんはやっぱりこういう狩りに慣れてる。まだ遠くからなのに、もうかなり分析できてる。

 これは私もランさんと一緒でよかったかも。私一人じゃあのカラフライって鳥を仕留められそうにない。


「ここからどうするの? ランさんのスナイパーライフルで仕留める?」

「いや……場所が悪いな。ここからだと障害が多い。いっそ飛び立った時が狙い目だが、そこまで粘るのも気力がいる。……そこでミラリアには役目を与えよう」

「役目? 何?」

「ここと反対方向へ回り込み、剣で威嚇しながら走ってカラフライ達に近づいてくれ。流石にバレるだろうが、飛んで逃げるはずだ。そこをアタイがズドンと行く。そういう作戦でオッケー?」

「成程、理解した。カラオッケー」

「……いや、言葉変わってるんだけど? まあ、分かってくれてるならいいか」


 そして、こちらの作戦についても立案された。カラフライを仕留める準備はこれにてオッケー。略してカラオッケー。

 ランさんには不評な略称だったけど、私もやることが決まれば後は早い。一度ランさんとも離れ、遠回りしながら反対側へと回り込む。

 震斬(ブレスラッシュ)といった私の遠距離攻撃も射程外だし、ここはランさんの作戦に従うのが一番だ。


【こうしてると、本当にエスカぺ村で生活してた時みたいだな】

「あの時は流通とか関係なく、自分達が生活する分だけ考えてみんなで狩りや加工をしてた。でも、外の世界ではみんなが狩りしたり関与するわけじゃない。今の私達みたいに代わりにやる人がいて、お金や社会が回っていく。私も少し理解してきた」

【お? ミラリアにしては考えるようになったじゃないか?】

「むぅ……『ミラリアにしては』ってのは余計。それに、もうじき作戦位置に到着する。ここからは集中しないといけない」


 こういう狩り自体はエスカぺ村でも慣れてるけど、そこから人といった社会への関わり方も見えてきた。

 世の中って上手くできてると思う。エスカぺ村での生活は、外の世界の縮図だったのかもしれない。

 だから、この狩りでも気は抜かない。狩ることは生きるための行為。いつもの感覚を思い出し、息を潜めながら機を伺う。



 ダッ!



「クエッ!? クエェェェ!」


 縮地を使って一目散に突撃。いくら私の脚をもってしても、この距離で気付かれれば流石に間に合わない。

 カラフライ達は私に反応して翼をはばたかせ、空へ逃げようとする。でも、逃げた方角ではランさんがライフルの狙いを定めてる。



 バシュゥンッ!



「クエェ……!?」


 作戦通り、逃げた一羽をランさんのライフルが射止める。火炎魔法が弾丸となり、見事にその頭を貫いた。

 他のカラフライは逃げちゃったけど、一羽仕留められたからこれで良し。沼地の辺りに落ちたカラフライを見て、私とランさんも駆け寄る。


「ナイス誘導、ミラリア! やっぱ、あんたといると効率がいいね!」

「ランさんのおかげ。作戦も仕留めるのもお見事」

「そりゃどうも。さて、まずはこのカラフライを解体するか。その後はアイテムポーチに入れて……」


 実にいい戦果と言えよう。この調子で狩りを覚えていけば、今後の旅でも役に立つ。

 ランさんは慣れた手つきで翼などを切り分けてるし、こういうのも見て覚えるのが大事。この後どうやってギルドに引き取ってもらうのかも参考に――




「な、何よ、あのバケモノ!? カラフライって、あんなに大きくないでしょ!?」

「もう寝げるしかないしー!? リーダー置いてきちゃったけどー!」




 ――しようと眺めてると、森の奥から女の人が二人、逃げるようにこちらへ走ってきた。

何やら不穏な気配が?

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