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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
始まりの村と追及の王国
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その王子、古代文明を求める

ミラリアにとっては何も分からない未知の世界。

そこのとある王子に尋ねられた古代文明の存在とは?

「ごめん、知らない。初めて聞いた」

「そうか……君なら何か知ってると思ったのだけどね」


 レパス王子に尋ねられた『古代エデン文明』という言葉。そんなもの、私は一度も聞いたことがない。

 本当に何の話だろうか? 『古代』だから昔の話? 『文明』ってどういうことだろ?


 そういえば昔、スペリアス様が『スキヤキ』という料理を作ってくれた時に『これが文明開化の味というものじゃ』とか言ってた。

 つまり、食べ物の話だろうか? それは気になる。美味しいものならば食べてみたい。


「ねえねえ、レパス王子。その古代エデン文明って美味しいの? 昔の食べ物?」

「い、いや……食べ物ですらないんだが……。大昔に存在した文明――つまり広い範囲における技術の一つで、特に高度な技術力を持ったものがエデン文明さ」

「なんだ、残念。食べ物なら食べたかった」


 ただ、現実とは非情である。エデン文明なるものは食べられないらしい。

 そもそも文明って、技術とかのことを言うのか。それならば、私の剣術やツギル兄ちゃんの魔術と一緒だ。スペリアス様から教えてもらった範囲でしか知らない。

 どうにも役に立てそうにない。せっかくよくしてくれたレパス王子に申し訳ない。


「……ただ、君が『エデン文明と認識していないだけ』という考え方はできるね」

「それって、実は私がエデン文明を知ってるかもってこと? そんなことない」

「いや、僕としてはあり得る話さ。そもそもデプトロイドを転移魔法で送った場所にしても、エデン文明との関わりが調査で分かったというのが根拠さ。僕はそういった場所にデプトロイドを派遣し、エデン文明の情報を集めているんだ」

「むぅ? あのお社、何か凄いところだったの? 確かに村の聖域ではあったけど……」


 でも、レパス王子のエデン文明に関する話はまだ続く。ちょっとしつこい気もするし、エスカぺ村が関わってるとは私には考えつかない。

 それでも何かしらの根拠はあるらしく、レパス王子は確信に満ちた表情をしている。


「ところで、そのエデン文明を調べてどうするの? この国にはデプトロイドみたいなものを作れる技術がある。エデン文明はそれより凄いの?」

「あのデプトロイドにしたって、エデン文明を紐解くことで完成したものさ」

「あれもエデン文明で作ったんだ。昔の人って凄い」

「それに、僕の目的はエデン文明の調査で終わらない。目指すべきゴールはもっと先にある」


 私としては今のディストール王国で十分凄い気もするけど、レパス王子は満足してないらしい。

 デプトロイドもエデン文明のものらしいけど、もっと凄いものもあるってことかな? 最終的に何が欲しいのかな?




「古代エデン文明はこの世界のどこかに存在するという『楽園』の文明だ。……僕が目指したいのは、世界の楽園そのものさ」

「ら、楽園……!?」




 話の続きを聞いて、私も思わず顔を乗り出して耳を傾けてしまう。

 私がエスカぺ村で読んだ書物にもあった、何の苦しみもない夢の世界――楽園。レパス王子もそのことを知っている。

 そして探求しているエデン文明こそ、その楽園に伝わる技術。私も直感的に理解できた。


 ――エデン文明を解明していけば、楽園に辿り着くことができる。


「君がデプトロイドを真っ二つにした時の剣術も、その腰に携えている剣の形状についても、この国どころか僕の知る世界にはないものだ。そして、デプトロイドを送った先にはエデン文明の手掛かりが眠っている。……それはつまり、君の生まれ育ったエスカぺ村という場所に『楽園に繋がる何かが眠っている』ということだとも考えられる」

「エスカぺ村に……楽園のことが……?」

「だからこそ、僕は君の話をもっと聞きたい。君でさえも知らなかった楽園に関する糸が、そのエスカぺ村という場所にあるはずだ」


 レパス王子もどこか興奮した様子で私と顔を合わせ、さらなる話を求めてくる。

 この人も私と同じだ。書物にしか存在しない未知なる楽園を追い求めてる。私だって凄く興味がある。

 私の居合術にしたって、もしかすると楽園の技術なのかもしれない。御神刀もそれと同じ。

 私が知らなかった外の世界には、私の知ってた内なる世界の技術が伝わってない。もしかすると、これらも本当にエデン文明のものかもしれない。

 もしも本当にエデン文明を紐解くことで楽園に繋がるのならば、是非とも力になりたい。


「……でも、私はエデン文明のことなんてエスカぺ村でも聞かされてない。これってどうして?」


 ただ同時に湧いてくるのは、心の中でモヤモヤとした不信感。もしもこれまでの話が本当なら、エスカぺ村こそが楽園に繋がる最大の手掛かりだったってことになる。

 村のみんなは私が楽園に行きたがってることは知ってた。知った上で私が村から脱出するのを止めに来てた。

 もしかして、エスカぺ村は楽園のことに詳しいのに教えてくれなかったってこと? 教えずに私を閉じ込めてたってこと?


 ――そうだとしたら、スペリアス様を始めとしたみんなはとんだ意地悪だ。教えてくれたっていいじゃないか。


「エスカぺ村が楽園のことを語らない理由は僕にも読めないな……。ただ、君の話が有益なことに変わりない。よかったらもう少し話を――」



 カン! カン! カン!



「え? 何? 何の音? 鐘?」

「この鐘は……警鐘か!? こんな時に何があったというのだ!?」


 レパス王子は話を聞いてくれようとするも、突然部屋の中まで聞こえる程の音量で鐘が鳴り響く。

 その音を聞いてレパス王子は慌てて部屋の窓から外を眺め始める。私も気になるし、一緒に見させてもらおう。


 窓の外に広がる景色はこれまたエスカぺ村とは全然違う。かなり高い場所からたくさんの建物が下に広がってるのも見える。

 これはこれで目移りするけど、鐘が鳴った理由はもっと別。大きな塀の向こう側に広がる影にあるっぽい。

 なんだかこっちの方にいっぱい近づいてくるみたいだけど――


「あれはまさか……ブルホーンの大群か!? 城下に迫っているだと!?」

「ブルホーン? 魔物の群れってこと?」

魔物が襲って来るのもまあ、お約束ってものですかね。

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