表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
新たな大陸と謎の海賊団
68/503

その海賊、高度な技術を持つ

親方を人質に取られ、あわや劣勢。

「さあさあ! おとなしくするでヤンス!」

「さもないと、この男の頭にライフルで風穴――」



 シュパパパンッ!



「……え? ええぇ!? ラ、ライフルが斬れてるでアリンスゥゥウ!?」


 リーダーっぽい変な語尾トリオが親方さんを人質に取り、ライフルを突きつけている危険な状況。何かゴタゴタ言ってるけど、危ないから撃破優先。

 離れた位置から震斬(ブレスラッシュ)の遠当てを使い、三人のライフルを斬る。これで脅威はなくなった。

 フューティ姉ちゃんの時は一緒に旅するかの判断に迷って先延ばしにしてたけど、こういう時は迷わない。敵の話に耳を傾ける必要もない。


「まだやる? もう武器もほとんどないけど?」

「ぐぬぬぬ……!? な、なんでヤンスか? この剣客小娘は……!?」

「だ、だが、これはマズいでゴンス……!」

「こ、こうなったら、奥の手のアレをするしかないでアリンス……!」


 腰を落として居合の構えをとりながら、威嚇の構えだって解かない。もう海賊団に武器はないけど、まだ何か仕掛けてくるっぽい。

 それならそれで、私も相手するまで。何か奥の手があるならば、こっちも油断せずに神経を集中させ――




「に……逃げるでヤンスゥウ!!」

「野郎ども! 撤退でゴンスゥウ!!」

「ウチの船に戻るでアリンスゥウ!!」


「……ふえ?」




 ――てたんだけど、次の瞬間に変な語尾トリオの号令により、海賊達は一斉に自分達の船へ戻っていった。

 要するに、奥の手ってのは『逃げる』ってこと? まあ、戦術としては正しいと思う。


 ――でも、襲ってきといてなんだかマヌケ。


「早く船のブースターをいれるでヤンス!」

「船長も副船長もいない以上、とても勝ち目がないでゴンス!」

「とにかく報告でアリンス! 副船長ならアジトにいるはずでアリンス!」


 海賊達は船に戻ると、ゴタゴタしながら大急ぎで船を出していった。

 よく分かんないけど、あの船には特別な機能があるっぽい。船の下から水流が吹き出し、来た時以上のスピードで逃げていく。


「外の世界って、まだまだ凄い技術がある。侮れない」

【海賊は低俗で野蛮な連中って聞いてたが、やけに技術力だけは高かったな。まさか、あれらもエデン文明だったりするのか?】

「どうだろ? エスカぺ村やレパス王子の技術とは違う気もするけど……?」


 危機も去り、ツギル兄ちゃんともこっそり話をしてみると、あのロードレオ海賊団が使ってたライフルや加速する船の技術が気になってくる。

 エスカぺ村にあった魔法やレパス王子のデプトロイドといった技術とは違うけど、エデン文明も何がどこまであるのかも判明できてない。

 ロードレオ海賊団にイルフ人らしき耳の長い人はいなかったとはいえ、エデン文明を追うことは楽園にも繋がる。調べておいて損はない。


「ねえねえ、親方さん。あのロードレオ海賊団って、普段はどこに――むぎゅ!?」

「あ、ありがとう! 君のおかげでわしらは助かった! 感謝してもしきれない!」

「まさかあの悪名高きロードレオ海賊団を一人で倒すなんて! 嬢ちゃんは俺らの英雄だ!」


 そう思って親方さん達に尋ねようとすると、振り向きざまに抱き着かれてしまう。

 寄ってたかってギュウギュウされるから、ちょっと息が苦しい。


 ――後、あんまりみんなで私を褒めないでほしい。


「私は向かってくる敵を倒しただけ。偶然乗った船を、偶然襲ってきた海賊から守っただけ。……感謝されるほどじゃない」

「な、なんだい? どこか機嫌が悪いような……?」

「もしかして、嬢ちゃんはツンデレってやつかい?」

「別に機嫌は悪くない。……後、ツルペタじゃない。ちょっとはある」

「ああ、いや……『ツルペタ』じゃなくて『ツンデレ』って言ったんだけど?」


 本当は感謝されたことを素直に喜びたい。でも、心のどこかでそれを拒んでしまう。

 『ツンデレ』だか『ツルペタ』だか知らないけど、ともかく私が大勢からの感謝を拒む理由は存在する。


 ディストール王国では剣技の腕から勇者ともてはやされても、結局はレパス王子に利用されてるだけだった。

 あの時の甘えが結果としてエスカぺ村を滅ぼし、フューティ姉ちゃんの死にも繋がってしまった。


 ――だから、たくさんの人に感謝されるのが怖い。あの時の記憶が蘇る。


「……まあ、今はそっとしおこう。彼女にも事情があるのだろう。詳しいことはポートファイブに着いてからにしよう」


 私の顔が曇って見えたのか、親方さんはそれ以上聞かないでくれた。他の人達もまとめ、一度私を一人にしてくれた。

 正直、こっちの方が楽だ。大勢の人にもてはやされるより、ちょっと距離を置いてもらう方が助かる。


 ――だって、私に関わると不幸なことばっかり起こるから。


【……なあ、ミラリア。気持ちは分からなくもないが、感謝された時は素直にしてもいいんだぞ?】

「でも、私は甘えたくない。また甘えて、同じことを繰り返したくない……」

【逞しくはなったが、ちょっとトラウマになってるか……。どうしたものか……】


 一人にしてもらった後、船の柵に突っ伏して海を眺めながらツギル兄ちゃんにも慰めてもらう。

 私もこれが正しいとは思ってない。これはこれで孤独になりそうで寂しい。

 でも、しばらくは誰かと深く関わらず、私と魔剣(ツギル兄ちゃん)だけで行動したい。


 ――もう、エスカぺ村やフューティ姉ちゃんみたいな別れはたくさんだ。

なお、海賊団自体は秒で撤退させた模様。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ