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{レパスとリーストのその後}

三人称視点


ミラリアに敗れたレパス王子とリースト司祭のその後。

◇ ◇ ◇



「ご気分はいかがでしょうか? レパス王子?」

「……リースト司祭か。良いわけないだろう? ミラリアに斬り刻まれて、今はこの水の中で体を癒すしかない。くうぅ……楽園の力で再生能力を得ても、この痛みは堪える……!」


 ミラリアとツギルが旅立った頃、エステナ教団聖堂ではバラバラとなったレパスの修復が行われていた。

 本来ならば生きていることさえ不可能な状況。ミラリアの怒りをそのまま受けたとも言えるレパスだが、薬液に浸かりながら生きながらえていた。

 それがエデン文明の力であり、楽園に眠る秘術だとその場にいる者達は述べる。レパスの傍にいるリーストはその力を信じ、率先してレパスへと与えていた。


「この体が修復したら、またミラリアを追うぞ。僕にこれほどの屈辱を与えて、生きられると思うな……!」

「では、こちらも世界中にあるエステナ教団支部を使いましょう。『聖女フューティ様を殺した大罪人』と名目をつければ、ペイパー警部とて動くでしょう」

「ああ。なんとしても見つけ出せ」


 レパスの頭に浮かぶのは、自らを斬り刻んだミラリアの姿。恐れているのではなく、ただ屈辱からくる怒りだけが湧き上がっていた。

 本来レパスにとってのミラリアは『楽園を独占する際の邪魔者』という話だったが、もはやその事情も変わった。レパスはただ怒りに任せ、その矛先をミラリアに向けることしか考えていない。

 もうそこにディストール王国王子という立場は感じられず、あるのは復讐に取りつかれた怪物の姿。そんなレパスを前にしても、リーストはいつもの笑みを崩さない。


「では、フューティ様の死体よりも、ミラリアの追跡が優先で?」

「両方だ! 両方やれ! ……ぐぅ!? 話の読めない奴だ……。体が元通りならば、殴って従わせたところを……!」

「それは私も避けたいところです。レパス王子やディストール王国を敵に回す真似はしたくありません。言われた通り、双方の追跡を同時進行いたしましょう」


 どれだけレパスに罵声を浴びせられても、リーストの態度も表情も変化しない。ただ言われるがまま、ただただ黙々と命令にだけ従う。

 それはディストール王国との衝突を避けての考えであろうが、それを含めてリーストの態度は従順に徹しすぎている。

 聖女フューティにしても、リーストには『使える手駒』としか見えていない。死したその身でさえ、なおも利用しようと企んでいる。その眼には人が人とは見えていない。

 ミラリアがこの場にいれば、そう考えていたことだろう。


「それよりレパス王子。あなた様に施したエデン文明の肉体改造ですが、まだ先がございます。それができれば今以上の力だけでなく、苦痛に苦しむこともなくなるでしょう」

「なんだと? ならば最初からそうしておけ。痛みを感じることもなくなれば、相手がミラリアだろうと負けるはずがない……!」

「では、この治療と共に改造も行っておきましょう。我らエステナ教団、どこまでもレパス王子に着き従います」


 あまりに従順すぎるリーストに対しても、レパスは勘繰ることなく話を信じ続ける。ミラリアへの復讐に目が眩み、考えて選択することさえできていない。

 ミラリアが己の立場に悩みつつも道を選ぶ中、かつてその少女を利用していた男は思考も選択も拒んで進み続ける。


「フューティの死体についても、お前らの力で利用することができるのだろう? 力になる技術があるなら出し惜しみするな。僕の野望を成し遂げるためだ」

「承知しました。フューティ様は聖女の役に突けるほど、女神エステナにも通ずるお方。たとえ死んでいたとしても、我々エステナ教団の――エデン文明の力があれば、レパス王子のお役に立ちましょう」


 レパスとリーストの狂気はミラリアだけでなく、殺されたフューティにまで向けられている。

 その身も心も怪物なった者達が目指すのは、楽園の力を元に世界を手中とすること。ミラリアと同じく楽園を目指す者でありながら、目的の終点は全く異なる。


 ――だが、その者達が相対する時はいずれまた訪れる。



◇ ◇ ◇

「再開を望む神聖国」はここまでです。

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