表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/503

その聖女、萌える

あらすじ:聖女が萌えた。

 フューティ姉ちゃんが『燃えた』だかなんだかしちゃった翌日。今日も私は朝から秘密の場所で理刀流の修練だ。

 そんなわけで早起きして、朝食を口にするんだけど――


「ねえねえ、眼鏡メイドさん。フューティ姉ちゃん、どこ?」

「何やら陽が昇る前から調べ物をしたりで駆け回っております」


 ――フューティ姉ちゃんの方はとっくの昔に活動していた。今日は私も早起きだったのに、随分と元気である。

 とりあえず朝食は眼鏡メイドさんが持ってきてくれたし、こっちはこっちでやることをしよう。


「ところで、その『フューティ姉ちゃん』という呼称は?」

「フューティ姉ちゃんが燃え上がる魔法の言葉」

「は、はあ……。なんだかフューティ様も『しばらく暇を与えます!』などとおっしゃってましたし、私の知らないところで何が起こっているのやら……?」


 眼鏡メイドさんと会話するのってあんまりない機会だけど、詳しいことは話せない。もどかしいけど、まだフューティ姉ちゃんが一緒に旅すると決まったわけではない。

 とはいえ、肝心のフューティ姉ちゃんはなんだかやる気満々っぽい。きっと今でも、私と旅をするためにあれやらこれやらしてるんだ。それが何かは分かんないけど。


「ごちそうさま。私もやることやってくる」

「そう……ですか。まあ、私はただお仕えするメイドです。深入りは控えましょう」


 眼鏡メイドさんも特に言及はせず、私が食べた朝食の食器を下げて部屋を出ていった。

 ディストールにいた時からあの調子だったけど、メイドというお仕事はそういうものなのだろう。多分。

 ここは『切り替えが上手』ということにしておこう。


「ツギル兄ちゃん。早速修練に向か――」

【ハァ……。フューティ様の姿を見れないってのは、なんだか気力が削がれるな。あの眼鏡メイドさんも綺麗なんだが――】



 ガンッ!



【い、痛いって!? ちゃんとするからやめてくれ!】

「分かればいい」


 できることなら、ツギル兄ちゃんも見習ってほしいものだ。雑念ばかりの魔剣ってのも嫌。





「……技の精度も上がってきた。明日仕上げすれば、一通りはものになったと思っていい」

【俺もミラリアの剣術に慣れてきた気がするな。実際に振るわれる剣そのものだから、速さや鋭さをそのまま体感できる】


 そんなこんなで秘密の広場での修練二日目。実に順調な成長を感じる。

 この調子なら予定通り、明日には理刀流の技をマスターできそうだ。元々はスペリアス様から教わった剣術がベースなのもあって、習得自体は問題ない。


「もう夕方。……そういえば、ご飯食べるの忘れてた」

【フューティ様も今日は来なかったからな】

「もしかして、嫌われてる?」

【いや『忘れられてる』だろうな。ミラリアにお姉ちゃん呼びされて、変なスイッチが入っちゃったんだろ】


 なお、今日は昨日のサンドイッチのような差し入れはなかった。思わずフューティ姉ちゃんに嫌われてる思ったけど、そうではないらしい。

 やっぱり、私が『フューティ姉ちゃん』って呼んだから燃えてるんだ。血が沸き立つほど燃え上がってるんだ。

 この調子だと、本当に旅についてきそう。一緒に旅できるのは嬉しいけど、まだこっちは判断に迷う。


「……でも、私だってフューティ姉ちゃんと一緒がいい。もっとお話しだってしたい」

【今日の修練は一通り終わったんだし、話だけなら今からでもしに行ったらどうだ? フューティ様だって、ミラリアの言葉なら断らないだろ】

「……うん、そうする。むしろ、そうしたい」


 迷ってはいても、私の心はどちらかと言うとフューティ姉ちゃんが一緒に来ることに賛成気味。だけど、この判断がまた私の独りよがりじゃないかどうかも不安。

 とりあえず、話はしておきたい。今日の修練も終わったし、まずは洞窟を抜けてフューティ姉ちゃんの部屋に戻ろう。




「――というわけでして、オレッチもキナ臭いものを感じてます。昨今はロードレオ海賊団や魔王軍といった、ただでさえ見逃せない情勢の中でもあって――」


【待て、ミラリア。部屋にフューティ様以外の人間がいるぞ】

「男の人の声? 前にも聞いたことあるけど……?」




 そう思って部屋の手前まで戻ってくると、出入口になってる蓋の向こうから誰かの声が聞こえてくる。

 フューティ姉ちゃんでも眼鏡メイドさんでもない。でも、聞き覚えのある年輩の男の人の声だ。

 静かに蓋を開けて部屋の様子を伺ってみると、机で向かい合ってフューティ姉ちゃんが誰かと話してるのが見える。

 あの帽子とコートの姿は、エステナ教団の警備部隊長とかいう役職の――




「これまでディストール王国は国内の混乱で動けずにいましたが、新たに再編された上層部がこのエスターシャ神聖国にやって来てます。……それも同盟国などという友好的なものではなく、何かしらの疑いをかける様子で」

「ペイパー警部のお話を聞く限り、あまり良い状況でないのは事実のようですね。……私も気にかけておきましょう」

(あっ、これまた迂闊に後書き書けない雰囲気や)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ