◆新生体エステナ・エゴⅢ
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人とは何か? 神とは何か?
その定義をどこに置くかは、古の時代より問われ続けた議論。
今ここに戦う二人の神は、本当に神と定義できるのか?
――その答えもまた、決着の先にある。
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ヒュン! ヒュン! ――ガキィィン!
ビュン――ズパンッ!!
「くぅ、ううぅ……!? 瞬間移動がほぼ完全に見切られてる……!? 人間の反応速度でこんなことって……!?」
「今の私は人間だけど……一人じゃない……!」
【二人分の意志の力……受けてみろよ……! 自称神様が……!】
正直、消耗もあるからかなり苦しい。でも、集中力は切らさない。
ツギル兄ちゃんも必死になって意識を保てるようにしてくれるし、エステナにも焦りが見えてきた。負けてなんかない。
エステナの瞬間移動を先んじて察知し、予測箇所へ居合を放てるようにもなってきた。持続さえしてくれれば、研ぎ澄まされた集中力で道を開ける。
――最早進化だ神様だなんて関係ない。この戦いの勝者が世界の命運を決めるまでだ。
「甘く見ないで……舐めないで! ワタシに反応できても……これならどう!?」
ブゥゥ――ヒュン!
「ッ!? また槍を!? しかも瞬間移動と!?」
【慣れてきたのは向こうも同じか!?】
この土壇場が感性を刺激したのか、合体の維持にもエステナの動きにも慣れてきた。でも、動きに慣れてきたのはエステナも同様。
これまでは併用できなかった瞬間移動と召喚魔法陣を同時に扱い、遠近両方で搦め手を交えてくる。
魔法陣の数も一つで終わりではなく、次から次へ発現させて槍を発射してくる。そこにエステナ自身の剣劇も合わされば、手数が多いなんて話でも収まらない。
「でも……負けなぁぁあい!! エステナァァアア!!」
クンッ――キンッ!
タンッ――ヒュンッ!
「これも躱してくる……!? 人間が二人合わさった程度で……ワタシを惑わすなんてぇぇえ!! ミラリアァァアア!!」
それでも食らいつけるのは、原理を超越した意地とでも言うべきか。私とツギル兄ちゃんが合わさることで、奥底どころか人の壁さえ超えた力を発揮し続ける。
お互いに絶対負けられない戦いは、気が付けば神速の攻防へ。互いに出せる極限が宇宙という壮大な空間に浮かぶこの場所で衝突を続ける。
普段住んでる世界でいつも空を照らしてくれる太陽。その光に照らされた星々に囲まれながら、私もエステナもお互いの名前を心の底から叫び合う。
ブゥゥ――ヒュン! ズパンッ!
「あぐぅ!? エ……エステナァァアア!!」
タンッ――クンッ! スパァン!
「うぎぃ!? ミ……ミラリアァァアア!!」
私もノーダメージとはいかないけど、エステナだって同じこと。やられたらやり返し、やり返したらやられ返される。
細かい技の応酬なれど、心にあるのは共通して『負けるわけにはいかない』って気持ち。お互いに譲れないものがあるから、元が同じ存在でも対立するしかない。
――この気持ちも対立も自我ゆえ。元々が創世装置だった私達二人は、確かな心を持ってぶつかり合う。
【ッ!? ミラリア! エステナの背後――】
「分かってる! このタイミング!」
キンッ――ヒュン!
「消えた!? まさか転移魔――」
強いて違いを挙げるなら、こっちはツギル兄ちゃんも一緒ってこと。お互いの思考をリンクさせ、エステナも広い視野で捉えられる。
いくら強力な技をいくつも発動できても、数の多さからわずかに疎かとなる場所だって出てくる。
こんなギリギリのタイミングでやるのは難しいなんてレベルじゃない。ゼロラージャさんと戦ってた時より段違いに厳しい。
――それでも成し得てみせる。奇襲の奥の手である『転移魔法による瞬間移動』だ。
ズッパァァァアアンッ!!
「あぐがぁ!? ガァァアア!?」
「と……届いた……!」
戦闘中にこの魔法を使うのは、ツギル兄ちゃんとの合体中でも一か八か。下手をすれば逆にエステナへ勝機を与えてしまうけど、限界ギリギリの集中力が繋いでくれた。
エステナの瞬間移動ほど即座な展開は無理だけど、激しい攻防の中に垣間見えた緩急差。そこを突いたからこそ届いた一閃。
宙を舞うための翼を片方斬り落としたことで、悶えながらバランスを崩すエステナ。この好機を逃す手はない。
こっちも揚力魔法で足場を作りつつ、転落するエステナへ追撃の構えを取る。次の一閃で終わりにしてみせる。
ブゥゥ――ヒュン!
「ッ!? 今度はエステナが消え――」
「ミィィラァァリィィアァァアア!!」
ズッバァァァアアンッ!!
「ひぎぃ!? ぐぅぅうう!?」
【あいつ……あの体勢から反撃を……!?】
ただ、エステナもエステナでこっちの上を行くように食らいついてくる。
落下しながら床へ叩きつけられる直前、再び瞬間移動。今度は向こうが私の背後を取り、背中を二刀でバッサリ斬り裂いてくる。
計算してやって来たわけじゃない。負けたくないという本能がエステナの自我を活性化させ、ガムシャラに私を追い詰める動きへ駆り立ててる。
必死なのは双方同じ。極限の集中さえ、私だけの特権じゃない。
「い、痛い……マズい……! い、今ので集中力が……!?」
【立て! 立ち上がるんだ、ミラリア! エステナは今もまだ――】
「ハァ、ハァ……! ミラリアァ……! ミラリアァァアア!!」
お互いに床へ落下して叩きつけられるも、こちらはダメージで蓄積してた負荷まで一気に押し寄せてしまう。おかげで横たわったまま立ち上がれない。
対するエステナも息こそ切らしてるけど、鬼気迫る形相で逆転狙いの追撃。役に立たなくなった翼を自ら切り離し、トドメを刺そうとこちらへ駆け寄ってくる。
両手に握った二刀を頭上で交差。ガムシャラ故に下手な技を使う余裕もなく、威力重視で私を真っ二つにするつもりだ。
二刀が振り下ろされた場合の威力は、私どころか魔剣ごと叩き壊しかねない。
「これでおしまい! アナタ達じゃワタシには勝てない! この……女神エステナにはぁぁああ!!」
限界での全力がエステナの本能をプッシュして、最後の一閃へ導いてくる。これに対処できなければ本当に終わりだ。




