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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
神々が選定せし楽園上空
489/503

◆新生体エステナ・エゴ

#####


胎動に始まり慟哭を経て、神はより完全な形で新生した。

無意識衝動(エス)に目覚めた女神(アテナ)自我(エゴ)へ挑むのは、鏡合わせ(ミラー)となるもう一人(Re)女神(アテナ)

兄という魔剣を手にして、星を超えた宇宙の中で始めるのは、世界を別つ最終決戦。

この戦いの結末が、世界の命運をそのまま決める。


――ラストダンスは剣舞と共に。


#####


VS 新生体しんせいたいエステナ・エゴ

「「ハァァァアアア!!」」



 ガキィィイイン!!



 同じ掛け声を上げ、同じように手にした刀を振るう私とエステナ。初手は互角で、辺りに衝突音が響き渡る。

 向こうは二刀で私は一刀の居合。手数はエステナに分があるものの、剣速ではこちらが上。総じて互角といったところか。


「アナタにだけは負けない……! ワタシから零れて生まれた分際で……いい気にならないでぇぇええ!!」

「ッ!? こ、この太刀筋は!?」

【ミラリアの動きを見切ってるのか!? これまでの戦いで学習して!?】


 ただ、エステナもこれまでとは別格と言っていい動きで対処してくる。こちらが納刀してガードに回ると、すかさず牽制を加えての追撃。

 剣なんて初めて握るはずなのに、動きはまるで熟練の剣客と同等。スペリアス様にも引けを取らない。

 エステナ最大の武器である『学習と急速な進化』が、最初のわずかな攻防だけでも読み取れる。


「アナタの技は全部学習してきた……! 進化を続ける私を前に、勝てるはずがない!」

「甘く見ないで……! 進化はあなたの特権じゃない……! それに……まだ見せてない力だってある!」

「ッ!? こ、このスピードは!? さっきまでより速い!?」


 それでも、私だって負けない。負けるわけにはいかない。

 今回は初手からツギル兄ちゃんと合体し、見切りも速度も段違いに向上。消耗なんて関係なく、ここで全てを決めるためだ。

 ツギル兄ちゃんから力を与えてもらい、研ぎ澄まされた集中力。エステナの進化にも食らいつき、こちらも技を昇華させていく。

 エステナがたった一人で進化を続けようと、こっちだって進化できる。ツギル兄ちゃんと一緒ならば、どんな実力差だって埋められる。


 ――気を抜けば負け。そんな限界極地な状況が、私をこれでもかと奮い立たせる。


「小賢しい……忌々しい……! どう足掻こうと無駄だって理解できないの!? だったら思い知らせてあげる! いくら元が同じでも、アナタはワタシが生み出した不純物……こんなことはできないでしょ!?」



 バサァア!



「つ、翼が生えた!?」

【本当に……女神みたいな姿を……!?】


 戦局は拮抗してて、エステナの攻め手も完全には届かない。そこに焦りか憤りを感じたのか、向こうはさらなる一手へ踏み切ってくる。

 一度私と距離を置き、両腕を開いてからさらなる進化。白い私の姿に黒い翼を生やす姿は、まるで本当の女神みたい。

 もちろん、ただ翼が増えただけじゃない。エステナ自身も自在に宙を舞い、上下の動きを加えられるようになってしまう。

 人どころかあらゆる生命の進化を取り入れた生態系の頂点――神様。苦痛によって極まった進化は、想像できる全てをその身で体現できるということか。


「アナタに魔法は使えない。生み出す時、不要なゲンソウは極力取り除いた。……だから、こんな技は真似できない! 真似できない技にどこまでついてこれる!?」



 ブゥゥウン――バシュンッ!



「この魔法陣は!?」

【フューティ様が使っていた槍の召喚!?】


 同じ剣技という土俵では攻め切れないと感じたエステナ。そこで考え出されたのは、距離を置いての魔法攻撃。

 しかも使ってくるのは、魔法陣から槍を召喚するというかつてのフューティ姉ちゃんも使ってたもの。あれにしたってセアレド・エゴが使っていた魔法だから、本体のエステナが使えてもおかしくない。

 確かにこの技は私には真似できない。でも、ついて行けないわけじゃない。



 ブゥゥ――パリィィイン!



「魔法陣ごと……斬り砕いた!?」

「真似できなくても、対処はできる……! この魔法だって一度は目にしてる……!」


 スペリアス様から授かった理刀流は、ゲンソウの(ことわり)さえも超える。いくら相手が『ゲンソウの頂点』と言えるエステナでも例外じゃない。

 次々に魔法陣を召喚されようとも、槍の発射前に斬り砕いて封殺。エステナの攻撃は苛烈だけど、合体した今ならまだついて行ける。

 向こうが神様としてその力を振るうなら、こっちは徹底的に人の技で抗ってみせる。それが今の私にできる全て。


 ――目指すはエステナを倒した先にある未来。そのためならば、ツギル兄ちゃんとどもにここで全てを出し切ってみせる。




「……なーんちゃって。それで破ったつもりなの?」

「……? 何を言って――」



 ブゥゥ――ズバンッ!!



「あぐうぅ!?」

【ミ、ミラリア!? 後ろから!?】




 エステナにも動揺を見せられたと思ったのも束の間、唐突に背中へ走る焼けるような痛み。どうやら背後から攻撃されたみたい。

 さっきまで魔法陣の槍に気を取られて油断したか。気が付けばエステナもこっちの視界から消えている。

 攻撃してきたのはエステナ自身。手に持った刀で斬りかかってきたことは理解できる。

 ただ、今のは私にも見切れなかったこと。エステナは本当に『一瞬のうちで』私の背後へ回り込んでいた。

 この技はまさか――




「これが最初のゲンソウ――本来生み出したかった力。人を転移させることこそ本懐。それは術者であるワタシも例外じゃない……!」

「まさか、自分自身を魔法陣に通して……!?」

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