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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
神々が選定せし楽園上空
487/503

◇進化シーケンス:新生

大地も空も超えた宇宙にて、二人の神が未来を選ぶ。

「……私にも神様になれと? 世界をやり直すのを手伝えと?」

「ワタシのアナタへの評価は今も変わらない。むしろ、この戦いの中でさらに向上した。アナタの進化があったから、ワタシもこの姿へ至るまで進化できた。……ワタシにとっても、アナタのような逸材を手放すのは惜しい」


 内心、予想はしてた。エステナは『もう一人のエステナ』である私にも白羽の矢を立ててくる。

 別にレパス王子のように『都合のいい道具』として利用するつもりではない。語りかけて手を差し伸べる時の表情には、心から『私に協力してほしい』って感情が滲み出てる。


 楽園に留まり、苦痛を肥料に進化を続けるしかなったエステナ。

 エステナ本体から弾かれ、別パターンでの進化に至った私。


 ――どっちも元々は自我なんてないただの装置だったと思うと、不思議な気持ちもこみ上げてくる。


「アナタだって、全部の人間が友達ってわけではないでしょ? エステナ教団なんて、ワタシが関与しなくてもアナタにとっては反吐の出る腫瘍だった。……でも、新しい世界にそんなものは生まれもしない。ワタシ達が完全に制御すれば、愚行なんて生まれない。ワタシとアナタの進化が合わされば、どんなに苦しくても世界は再編できる」


 そんな私達が至ってしまった神様の領域。世界さえも再編できてしまう可能性。

 エステナは本気だ。本気で世界を一度滅ぼすつもりだし、私の協力だって求めてる。

 その先に臨むのは、愚かな過去も今も全部払拭できる進化の究極形。手にした力を最大限に活用し、世界の再編を望む。


 ――分離したエステナが手を組めば、途方のない話も現実味を帯びてくる。




「……その水晶、私にも貸して。返答の前に見せてあげる」

「……むう?」




 もっとも、私の答えは最初から決まってる。ただ、エステナにはもっと明確な形で『答えの理由』を示したい。

 エステナが世界中の光景を見せるために使った浮かぶ水晶まで近づき、今度は私が手を当てる。同じエステナだからこそ、使い方は教えられずとも理解できる。

 頭の中に思い浮かべるのは、私のことを想ってくれる人達の姿。滅ぼされそうな世界の中で、今も待ってくれてる大切な絆。


【ッ!? お、おい!? 空間に何か見えるぞ!?】

【あ、あれは……ミラリア様ですの!? ご無事ですの!】

【だ、だったら……一緒にいる白いミラリアみたいなのは……!?】

【……おそらく、彼女こそ私達が『女神エステナ』と呼びし者――この世界を滅ぼそうとする元凶の新たな姿でしょう】


 最初に映し出されたのは箱舟にいるみんなの姿。

 シード卿とシャニロッテさんにランさん。フューティ姉ちゃんも無事だったようで、人の姿に戻ってこちらへ顔を向けてくれる。


【ミラリアちゃん! こっちの声は聞こえとるか!? 今、どこにおるんや!?】

【ただでさえ高い空のまたさらに上だよなァ……!? 箱舟でも辿り着けねェぞォ……!?】


 レオパルさんやトラキロさんといったロードレオのみんなも、私を心配して声をかけてくれる。

 その姿を見てるだけで胸が熱くなってくる。私のことを心配してくれてるのが嬉しい。


【ミラリアなのか!? これは……戦いも最終局面か!?】

【オレッチ達は待ってることしかできないのか……!?】

【だが、心は一緒だべ! どこにいてもだべ!】

【オールライト、ヘールシー! 帰って来たら、またヘルシー野菜で宴をしよう!】

【ミラリアお姉ちゃん! 私達、ここから応援してますから!】

【スペリアスの娘よ! 君は優秀な子じゃ! 思うがままに振るうのじゃ!】


 世界各地で私を応援してくれる声も、映し出された光景を通して伝わってくれる。実際には触れられないけど、心の在りどころは確かだ。

 エステナ教団は確かに嫌な存在。でも、世界は嫌なことばっかりじゃない。

 こうして支えてくれる人がいる。何より、エステナの思想には『とんでもない矛盾』がある。


「……エステナ。あなたは完璧な世界を創りたいらしいけど、本当にそんなものが必要なの?」

「……この光景を見せて、逆にワタシを説得するつもり? だとしたら無駄な話。どれだけ慕ってくれる人間がいても、愚劣でなくなったわけじゃない。むしろ、この人達だって――」

「そうじゃない。……あなたが目指す理想は『すでに誰かが通った後』だって気付かない?」

「ッ……!?」


 もしかしたら今は私を慕ってくれるみんなだって、道を違えることだってあるかもしれない。でも『今のみんなと一緒に未来を生きたい』って気持ちは嘘じゃない。

 道を違えるかどうかだって、何が正しいのか判断するのも難しい。できることは、過去の行いを教訓として悩みながらも前へ進むこと。

 誰かの失敗を周囲が咎め、反省しながら正しいことを見つけていく。『答えなき答え』をみんなと一緒に探していく。今映し出された世界のように。

 それこそが私の至った一つの哲学。エステナの抱く『決まった答えに世界を変える』って願望とは真逆と言える。


 ――何よりその願望が招いた結末は、エステナ自身がよく理解してる。




「世界を『完全な形でやり直す』なんてのは、かつて楽園を創り出した人間と同じ願望。……あなたのやろうとしてることは、あなたを生み出して誰よりも憎んでる人達と同じこと」

一番煩わしく感じていた人間と彼女は同じになっていた。

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