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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
神々が選定せし楽園上空
480/503

◆慟哭体シュリキーグ・エステナⅡ

#####


本当に人間ってしぶとい。これまでの歴史で滅びかけても生き残っただけはある。

でも、そんな足掻きはこれで終わりにする。ワタシが神様として、明確な誓いのもとにリセットする。


#####

 エステナの眼球を射抜いてくれたのは、箱舟の上にいるランさん。集約された火炎魔法をスナイパーライフルで放ち、正確に急所を捉えてくれた。

 本当に見事な腕前だ。楽園へ攻め込むメンバーに選ばれたのは伊達じゃない。


「おい、お前ら! カワイ子ちゃんだけにええカッコさせとったら、海の荒くれロードレオ海賊団の名折れやろがい! ウチらも徹底的に撃ち込むんや! あのデカブツがどっか他所へ逃げる前になぁぁああ!!」

「ガトリングガン持って来ォいィ! オレのブラスタークロウもだァ! ありったけの火力をぶち込んで、目玉の神様を海の藻屑にしちまいなァァアア!!」

「ヤンスゥゥウウ!!」

「ゴンスゥゥウウ!!」

「アッリンスゥゥウウ!!」


 ロードレオのみんなも同じように動きを見せてくれる。

 箱舟の上に乗り出しながら、様々な武器を用意。狙いはエステナ。まだ海の上にいる前に勝負をつけようと、箱舟に搭載した全戦力で相手するつもりだ。



 ドガァァアンッ! ギュゴォォオンッ! ドガガガガァ!



【い、痛い!? やめてって言ってるのにぃ!? ウゥ……ウガァァアアア!?】


 巨大化したが故、エステナというマトは大きい。ランさんと一緒になり、箱舟からの総攻撃。あまりに様々な攻撃が飛んでくるから、エステナも両手で目を押さえてその場で震え始める。

 どんなに体を大きくしても、エステナは『自我を手にした生命』だ。私達人間の延長線にいても、同じ線の上にはいる。

 行いにしたって、同じ目線で判断できなくもない。


 ――みんなの力を合わせれば、神様にも挑めるという事実。そこだけはずっと信じており、実際の形となる。


「エステナ! あなたは『痛いのはやめて』と言ってるけど、それは私達も同じ! あなたがやられて嫌なことを、あなた自身もやってる! それでいいと思ってるの!? 本当に満足なの!?」

【ウ、ウウゥ……ワタシから切り離された分際が言ってくれる……! ワタシがやってることは……やってることは……!】


 どれだけエステナが人間や世界に恨みを抱いても、怒り任せに壊し尽くしていい道理だってない。自分がやられて嫌な思いを――蓄積された憎悪を、世界中へ振りまくなんて間違ってる。

 こうしてエステナ自身が多数に襲われてる今ならば、もしかするとこの声が届くかもしれない。届くのならば考えを改めてほしい。


 ――甘っちょろく見えても、私だってエステナ。同じエステナが悶えて狂う姿は見たくない。


【ワタシのやってることは……これから先の世界で本当に必要なこと! ウグアァァアアア!!】



 ドギュゥゥウウウン!!



「め、目から何かが!? ビーム!?」

無還吐息(ゼロブレス)とも同じ波動を感じるぞ!?】

「まさか、魔王の技さえも学習して……!?」


 だけど、私の声はどうしてもエステナには届かない。ワガママを言って暴れるように、慟哭を続けながら今度は箱舟も含めて薙ぎ払おうと仕掛けてくる。

 目を押さえていた手を放し、その中央から放たれるのは最初のビームとは質が違う一閃。光さえ飲み込もうとするそれは、フューティ姉ちゃん(魔王)無還吐息(ゼロブレス)と似通ってる。

 闇雲に放たれたから当たりこそしなかったけど、無還吐息(ゼロブレス)の脅威は私も身に染みて実感してる。当たるわけにはいかない。


【アナタ達の生存本能と一緒! ワタシだって生きたい! 生きてやりたいことがある! そのためには……この世界が邪魔なの! 人間も世界も……もう一度リセットしたいのぉぉおお!!】


 エステナには『世界を壊した後』における何かしらの目的もある。私達が未来を望むように、エステナにも望む未来がある。

 どんな苦痛に苛まれても、その先にあるものを掴みたい気持ちだって同じ。同じ自我を持つ者同士であっても、譲れない願いが対極にある以上、衝突は避けられない。


「あなたの目的全ては理解できない……! でも、世界を壊すつもりなら同じこと! みんな! お願い!」

【まだまだエステナの攻撃は荒い! 距離を保ちつつ、徹底的にぶち込むんだぁぁああ!!】

「任せなって! アタイも怖気てなんていられない! 出たとこ勝負ってもんさ!」

「こっちにはまだどデカい一発も残っとるんや! トラキロ、準備できとるか!?」

「砲門調整はできたでさァ! 神様だろうが、こいつは焦るだろがァァアア!!」


 どうしても避けられないならば、こっちも徹底的に挑むまで。箱舟のみんなとも声を合わせれば、繋がる覚悟が感じ取れる。

 ガトリングガンやスナイパーライフルで牽制しながらも、箱舟は次の一手をすでに準備してる。下部に設置された大砲は前方へ向きを変え、エステナへ狙いを定めてる。


 ――結界さえ貫くあの一撃ならば、エステナにも届いてくれる。




「天閃理槍……発射(ファイア)ァァアア!!」



 カッ――ズグオォォオオンッ!!




 レオパルさんの合図で放たれのは、箱舟の切り札――天閃理槍。太陽の光が槍となり、黒く煮えたぎる神様目がけて飛んでいく。

 その破壊力は私の知る限りで最強。仮に手で守っても、そのままエステナまで突き刺さるほど。

 今のエステナは無防備なまま。このまま届けば、撃ち落とすことも――




【が、学習した……光さえ飲み込む魔王の闇の使い方を! ワタシを消せるなんて思わないで! こっちこそ消してあげる! これでも……食らえぇぇえええ!!】



 ドギュゥゥウウウン!!



「馬鹿なァ!? 天閃理槍が……搔き消されたァ!?」

「さっきの無還吐息(ゼロブレス)みたいなビーム……!? 天閃理槍の光まで……!?」




 ――できたはずなのに、エステナは身を守るためにさらに思考を重ねてくる。

 無還吐息(ゼロブレス)が持つ『全てを飲み込む力』をエステナ自身が理解し、攻撃ではなく相殺に持っていく判断。その様子を見ても、攻撃と防御の使い分けができ始めてるのが伺える。




 ――マズい。エステナの進化が――脅威が止まらない。

#####


人間がどれだけ進化しようと、ワタシという神様はその上を行ってみせる。

進化が人間の特権と思わないで。これはあらゆる生物に与えられた権利だから。

ワタシだって同じ。ワタシは滅ぼされたくない。やりたいことだってある。

だから、もっともっと進化する。生きるために進化を続けて戦い抜く。


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