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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
神々が選定せし楽園上空
478/503

◇進化シーケンス:胎動Ⅱ

偽神だったかつての聖女は、魔王となって少女と共に。

【箱舟から何か下りてくるぞ!?】

「緑色で大きな翼……まさか、あれって……?」


 絶望しそうな状況なのに、我に返って呆けてしまうその姿。色は違うけど、あの時見た姿と同じだ。

 紫色ではなく、緑色の鱗に翼を広げたドラゴン。素早く自在に宙を舞い、私のもとへ飛んできてくれる。

 そのまま背中に乗せてくれるこの人は――




「ミラリアちゃん、ツギルさん! ご無事ですか!?」

「フューティ姉ちゃん!」

【魔王の持つ転生魔竜の姿か……!】




 ――魔王として蘇ったフューティ姉ちゃんだ。ゼロラージャさん同様に転生魔竜へ変身し、私とツギル兄ちゃんを助けてくれた。

 緑色の背中はゴツゴツするけど、すくい上げてくれた時の動きにも優しさを感じた。語りかけてくれる声を聞けば、はっきりフューティ姉ちゃんだと認識できる。

 まさか、また魔王の力に助けてもらえるなんて。人の縁とは分からないけど面白い。


「先代魔王の記憶をもとにぶっつけでやってみましたが、問題なく宙を舞えるみたいです。これが代々の魔王が繋いできた進化ですか」

「ゼロラージャさんを含むこれまでの魔王にも感謝したい。私達は命の繋がりで生かしてもらってる」

【ああ、俺もそう思うよ。……ただ、敵さんは違うか。おそらく、前方のあれが新たな姿だ……!】


 フューティ姉ちゃんのおかげで九死に一生は得た。でも、戦いは終わってない。

 ツギル兄ちゃんはいち早く察知したらしく、私も前方へ目を向け直す。


 ――楽園があった山頂は完全に崩壊してる。その代わりとして、上空へ巨大な影が新たに三つ。


「あ、あれが……エステナ……!? お、大きすぎる……! さっきまでと違う……!」

「やはり、あれが女神――いえ、破壊神エステナなのですね。ただの球体に見えますが、魔王の私でさえ怖気そうなこの気配は……!?」

【大きさだけじゃない。形状もさっきと変化してる。球体も二個増えてるし、どんな進化を遂げたんだ……!?】


 三つの球体の内、一番大きなものはエステナ本体だろう。それに追従するように小さめの球体も二つ生まれてる。

 ただ『小さめ』と言っても本体と比べた場合の話。三つの球体は全部がさっきよりも巨大で、山頂にあった楽園がそのまま宙に浮かんだと言ってもいい。

 転生魔竜となったフューティ姉ちゃんどころか、箱舟よりもさらに大きい。感じる覇気も比例して大きくなってる。


 ――これがエステナの進化。楽園の残骸ごと取り込んだ姿は、まるで太陽とお月様のよう。




【ウゥ……ウガァァアア!! い、痛かった……物凄く痛かったぁぁああ!! でも……これなら負けない! 食べて食べてこれだけ大きくなったから、アリンコみたいな人間なんかに負けるはずない! ワタシにはやりたいことがある! それを成し遂げるためにも……全部壊してあげるからぁぁああ!! ウグアァァアアア!!】




 エステナも大声を張り上げ、私達への敵意は剥き出しのまま。むしろ、一層感情が昂ってるのが分かる。

 泣き叫ぶが如き慟哭は周囲の大気をも振動させ、離れたこっちにまで届いてくる。外面には岩が張り付き、さっきまでの胎動を象徴する姿とも異なる。

 この慟哭こそ、エステナの新たな進化の象徴とも言うべきか。自らの力に喜ぶことよりも、私達を『生存に対する脅威』として認識してる様子も見えてくる。


【こ、こうやってお手々を作れば、そんな船もドラゴンも叩き潰せる……! 大きなお目眼があれば、どんなものだって確認できる……! ワタシはエステナ! 進化の頂点に君臨する神様! 人間なんかに負けるはずが……ないんだからぁぁああ!!】



 ボゴンッ! ボゴンッ! ――ギロンッ!



「さ、さらに進化が……!?」

【左右の球体が手に……本体に眼球が……!? さっきより生物に近づいたが、あまりに不気味過ぎる……!?】

「あのような姿は、この世界の魔物でさえ存在しませんね……!」


 さらなる慟哭と共にエステナの身に起こるのは、脅威を排除するためのさらなる進化。宙に浮かぶ両手を作り出し、巨大な本体の中央は眼球となってギロギロしてる。

 空に君臨する巨大で異形の神様。私達人間なんて、エステナにとっては本当に蟻さんだ。


「……フューティ姉ちゃん、お願い。今は頼らせて。このまま私と一緒にエステナへ……!」

「もちろん、私だってそのつもりです。……魔王という王様が神様に挑める保障などありませんが、そんな道理は些細なこと」

【種族なんて関係ない。俺達の想いはこの世界を守ることだ。……その気持ちを一つにして、無茶でも何でも挑んでやるさ。破壊の神になぁあ!!】


 だからって逃げはしない。むしろあんなに巨大な相手が前では、世界中どこへ逃げたって同じこと。

 エステナがどれだけ強大な進化を続けようと――どれだけ世界の破壊を望もうと、譲れない想いがこっちにもある。


 ――今度はこの大空で相手する。どれだけ存在を増そうとも、エステナは私達『人間』の手で止めてみせる。




【この苦痛も……怨嗟も……アナタ達に味合わせてあげる! ワタシが本当に欲しいもの……ワタシの望む世界のためにも……ウゥ、ウグアァァアアア!!】

ラストダンスはまだ終わらない!

エステナ第二形態、大空にあり!

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