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◆闇瘴虫ペインピオン

VS 闇瘴虫あんしょうちゅうペインピオン

邪悪な力で強化されたサソリと対決だ!

「ツギル兄ちゃん、集中して。フューティ様にデレデレしないで」

【わ、分かってるっての。ともかく、俺を扱えるかはミラリアの腕次第だ。そっちも気合入れろよ!】


 ちょっとツギル兄ちゃんの態度にイラッとしちゃったけど、今やるべきことは決まってる。眼前に迫る巨大サソリを倒し、フューティ様の聖女パワーで浄化してもらうことだ。

 闇瘴というものを取り込んでるらしく、そのせいで普通のサソリよりパワーアップしてる。サイズもデカいし、これは侮れない。


「外皮も堅そう。トゲも大きくなってるし、刺されたら絶対痛い」

【痛いどころか、死ぬだろうな。毒も持ってるし】

「普通のサソリでも危ないのに、あんな風にするなんて。闇瘴って怖い」


 サイズ的にはオークロプスほどは大きくはなってない。それでも、ただでさえ危険なサソリがここまで大きくなったのは脅威と言う他ない。

 尻尾のトゲはもちろん、ハサミだって大きい。それどころか、所見でも防御力は並の鎧より上。これは迂闊に斬りかかると、手痛いカウンターを受けそうだ。


「ミラリアちゃん! 無理はしないでください!」

「大丈夫。こっちも相手を伺ってる。……炎閃付与(フレアアサイン)


 この場にはフューティ様もいるし、あまり時間をかけて巻き込みたくはない。とりあえず、大きくなっても相手が虫なのは変わらない。

 一度一瞬だけ抜刀し、刀身に炎撃魔法を付与。これなら堅い外皮にも対抗できる。相手が虫である以上は焼き斬れる。

 さらに遠くから離れて斬撃を飛ばすのではなく、直接斬りかかれば威力は倍増。機を伺い、縮地で一気に間合いを詰めにかかる。

 そしてすれ違いざまに――



 ズパァンッッ! ボォォオン!!



 ――居合一閃、斬り捨て御免。居合による斬撃と共に着火させ、外皮を裂きながら内側も焼きに行く。

 手応えは十分。炎の斬撃は確かに巨大サソリを捉えた。これは決まっただろう。


「チュギィィィイ!!」

「え!? なんで!? まだ動けるの!?」


 かと思って振り向いてみれば、巨大サソリはまだ鳴き声を上げてこちらに襲い掛かってくる。

 ハサミで私を捕まえようとしてくるので、こっちも縮地で距離をとって急いで回避するしかない。


 それにしても、さっきの炎を付与した居合は確かに決まったはずだ。相応の手応えはあった。

 だけど斬った箇所をよく見てみれば、何やら黒い霧に包まれながら修復されている。もしかして、あれが巨大サソリのパワーにもなってるってこと?


「あれが闇瘴です! あのサソリは闇瘴を取り込むことで巨大化だけでなく、再生能力まで手にしているのです!」


 フューティ様も近くで声をかけてくれて、やっぱりあの霧こそが力の根源――闇瘴だということが読み取れた。

 これはエステナ教団も慌てるわけだ。あんな力が野放しになれば、エスターシャの街も大変なことになってしまう。


【これは想像以上の相手か……! ミラリア! 気を抜いたらやられ――】

「でもあの黒い影……。なんだか、あの時と同じような……?」


 本当は集中しないと危ない相手なのは分かってる。だけど、それ以上に気になることが頭の中をよぎってしまう。

 こんな巨大サソリと戦うのは初めてだけど、さっき溢れた黒い霧にはどこか見覚えがある。

 あれは確か、お社の地下に封印された影の怪物と――



 ザシュンッ!



「あぐっ!? し、しまった!?」

【だ、大丈夫か!? 油断してる暇なんてないぞ!】


 ――などと少し思考が逸れたのがマズかった。巨大サソリが尻尾をこちらへ振り回し、先端の毒針で襲い掛かってきた。

 そのせいで右腕に傷を負ってしまう。深い傷ではないけど、痺れる感覚が右腕から広がっていく。


「ゆ、油断した。これ、どうすればいいの!? 居合、使えない!」


 右腕をやられたのは手痛すぎる。私の攻撃は魔法も含め、全て右手から放たれる居合が起点だ。

 その右腕が上手く動かせないと、私には何もできなくなってしまう。ツギル兄ちゃんが言う通り、戦闘中に油断しすぎた。

 このままでは負けてしまう。いったい、どうすればいいのだろうか?


「ミラリアちゃん! 私の元に来てください! 早く!」

「フューティ様!? う、うん!」


 どうしようもないピンチで軽くパニックになる私の耳に入るのは、少し離れたところで様子を伺っていたフューティ様の声。気を取り直し、なんとか指示通りに駆け寄る。

 巨大サソリはまだこちらを狙ってるし、このままだとフューティ様ごとやられてしまう。でも、今の私やフューティ様では太刀打ちできない。

 これが四面楚歌というものか。



 スゥゥゥウ



「あ、あれ? 痛くない? 右腕も動く?」

「私の方で回復魔法により、応急処置は施しました! これならまだ戦えます!」


 ピンチと毒で冷や汗を垂らしてたけど、フューティ様の元へ戻ると魔法をかけて怪我した右腕を治してくれる。

 これが聖女の力ってことか。回復魔法自体はスペリアス様やツギル兄ちゃんも使えたけど、ここまで即効性があるものではなかった。


「ただ、あくまで応急的なものです! それでも……今はミラリアちゃんしか頼れません!」

「うん、分かってる。ありがとう。……今度は油断しない」

【ああ、気合入れていけよ。……だが、魔法を宿した魔剣でも、あのサソリにはダメージが入らないぞ? どうする?】


 これで再度挑む準備はできた。だけど、悠長なことは言ってられない。

 右腕も楽になったとはいえ、フューティ様がしてくれたのはあくまで応急処置。時間が経てばまた痛みが襲ってくる。

 魔剣による魔法剣でもダメージが入らないし、何かもっと別の手立てが必要になってくる。


 ――あの邪悪な力を纏ったサソリを倒すには、それを払う力が必要になってくる。




「……ツギル兄ちゃん、魔力を魔剣に集中させて。試したい技がある」

旅立ってから最初の強敵を前に、直前で学んだ新技を試す時。

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