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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
神々が選定せし楽園上空
466/503

仲間と共にする少女は、再びゲンソウの箱庭へ

再び挑むための準備はできた。

【――この気配。楽園まで辿り着いたようじゃな】

「うん……スペリアス様。今は結界に守られてる」


 楽園へ近づいたことに反応して、魔剣からスペリアス様の声が聞こえてくる。箱舟も丁度真上に位置するところまで飛来し、後は結界を打ち砕けば中へ潜入できるはず。

 そこからのことだって聞いておきたい。エステナを作った知識も頼りになる。


【結界は箱舟の天閃理槍があれば砕けるじゃろう。そこから中へ入れば、おそらく以前と同じじゃろうな。エステナに繋がるミラリアにだけ、ゲンソウによる幻影の世界が広がるじゃろう】

「むう……あの世界は怖い。対策はあるの?」

【理刀流があれば、後はミラリアが思う限りに振るえばよい。中も所詮はゲンソウの箱庭。ゲンソウを打ち破ることも、理刀流ならば可能じゃ】

「でも、中に入れるのは私だけだよね? ツギル兄ちゃんがいないと、完全な理刀流は使えないよ?」


 箱舟も理刀流も、この時のために用意された力。使い時なのは理解できる。

 ただ、私一人では限界がある。魔剣にツギル兄ちゃんが宿ってこその理刀流だ。

 私にだけ楽園の景色が見えたところで意味はないけど――


【安心せよ。『楽園を見れる』のがおぬしだけであって、実際には共に戦う仲間も傍におる。……信じるのじゃ。おぬしが現実で確かに紡いだ絆は共にある】

【俺はいつだってミラリアと一緒だ。そのことだけは忘れないでくれよ?】

「スペリアス様にツギル兄ちゃん……分かった。私、頑張る」


 ――本当に一人になるわけじゃないって分かったら、勇気を振り絞って挑むこともできる。

 今の楽園は都合がいいだけでタチの悪い幻影に囚われてるだけ。前回と違い、そのことを理解してれば恐れることはない。

 声が届かずとも、ツギル兄ちゃんは一緒にいてくれる。いつもの調子で理刀流だって使える。エステナが見せる幻影なんかに惑わされたりしない。


「ミラリア様。楽園にはわたくしとシード卿もお供しますの」

「実際に動けるのはミラリアがゲンソウとやらを打ち破った後だろうが、一緒にいるのは変わりねえ。……俺達も信じてる。神が相手だろうと揺るがねえミラリアの信念をよ」


 シャニロッテさんとシード卿も一緒に来てくれる。後々のことを考えて、みんなとも話し合ってくれた結果らしい。

 私としても、一緒に来てくれる人がいると嬉しい。むしろ、いてくれるだけでも頼もしい。


 ――私は一人じゃない。この世界に生きるみんなの気持ちを背負い、必ずこの戦いに勝利してみせる。




「……よし。準備できた。……天閃理槍をお願い!」

「よっしゃ! 任せとけや、ミラリアちゃん!」

「エネルギーシステム起動ォ! 天閃理槍……発射(ファイア)ァァアア!!」




 後は心のままに楽園へ乗り込むのみ。私が声を発すると、ロードレオ海賊団も箱舟を動かしてくれる。

 太陽の光を受けてた板が輝き、その力が収束するのが見て取れる。これが天閃理槍のエネルギーそのものということか。

 そして、箱舟の下部へエネルギーが回っていくと――



 ズガァァアアアアンッッ!!


 ――パキィィイインッ!!



 ――解き放たれる強大な光の槍。ディストールの結界を壊した力が、今度は楽園を守る結界へ突き刺さっていく。

 ここまで間近で見たのは初めて。その威力がどれだけ凄まじいものかはっきり分かる。

 分厚くて黒い結界にも穴を開けてくれた。ゲンソウを生み出した博士さんがこの時代まで託しただけのことはある。


「穴は開いたが……完全に砕けはしてないか!? あれだとまた閉じちまうぞ!?」

「ミラリアちゃん達! 後はお願いします!」


 ただ、結界の強度はこれまで以上。穴を開けるのが限界で、ランさんの指摘通りすぐにでも修復されようとしてる。

 ならば行くしかない。楽園まで乗り込まないことには、エステナへ辿り着くこともできない。

 フューティ姉ちゃん達が見守る中、私もシード卿やシャニロッテさんと手を繋ぐ。


「穴の中に飛び込むぞ! 落下の方はどうとでもなる!」

「わたくしとシード卿で揚力魔法を展開し、落下速度を落としますの! ミラリア様は先のことだけお考えを!」

「分かった。二人とも……お願い!」


 覚悟はとっくにできてる。それはみんなだって同じこと。

 箱舟から飛び降り、天閃理槍で開かれた穴を目指す。そうすれば楽園まで入り込める。


 ――これが最後の戦いの幕開けだ。



#####


 へえ……本当にここまで来ちゃったんだ。ワタシも会いたかった。

 まずは見せてあげる。アナタが心の中で願う最高の光景をもう一度。


 ――そこでどうするか、少し試させてもらうから。アナタが辿った経験と進化を見せてもらうから。


#####



 結界の穴へ飛び込んだ際、私へ語りかける声が聞こえてきた。思い返せば、以前も同じような声がした気がする。

 おそらく、これこそがエステナの声。今回ははっきり認識することができた。

 私がエステナであることを自覚したからなのか、エステナ本体がさらなる進化を遂げたからなのか。まあ、そんなことはどっちでもいい。


 ――今目にするべきは、エステナが『私を試す』ために用意した光景か。




「おお、ミラリア。帰ってきたのじゃな」

「オデ達も待ってたんだど」

「さあ、今度こそここでみんなで暮らしましょう」


「……エスカぺ村のみんな。懐かしい。……でも、今度はもう惑わされない」

まずはその幻影を終わらせる。

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