現代を生きる者達は、古代の脅威との決戦へ
いざ、最終章。
ミラリアと共に決戦の楽園へ。
エステナ教団との戦いを終え、たくさんのご飯と休息で英気はバッチリ。アホ毛のツヤとハリも絶好調。
夜も明けて、砦の中央でみんなとも合流。いよいよその時がやって来た。
「ランさんにシャニロッテさんにシード卿……そして、フューティ姉ちゃん。四人が一緒に来てくれるんだ。ありがとう」
「アタイ達だって、ミラリアと一緒に挑みたいからね。世界のためさ」
「他の方々も代表して、力になりますの!」
「行けねえ連中もいるが、心は全員同じだ。楽園だ神様だのに、この世界は壊させねえ。愛する女との未来のためにもな」
「ミラリアちゃんには本当に心強い仲間ができたのですね。私も感慨深いです」
一緒に箱舟へ乗り込んでくれるメンバーも決まったみたい。選ばれた四人は私にとっても大切な人達で、とても心強い。
全員とはいかないとはいえ、選ばれた四人もみんなの気持ちを抱いて一緒について来てくれる。世界中の望む希望は確かにここへ集っている。
「私達は故郷へ帰りますが、ずっと応援してますからね!」
「全部終わったら、またオラ達のところにも立ち寄ってほしいべ」
「グッドラック、ヘルシー! いつでも美味いご馳走を用意して待ってるぜ!」
「吾輩や一部の人間はこの地へ残ろう。後始末についても気にするな」
空間を繋いでくれたトンネルももうすぐ消える。残ったみんなにも役目がある。
私達が箱舟で向かうのは、そんな愛すべきみんながいる世界を守るため。歪んだ摂理の果てへ挑むため。
――目指すは楽園。今度はかの地を終わらせ、世界の滅亡を食い止めるために。
「さあ、そろそろ乗り込んでくれや。箱舟へ続くトンネルが閉じてまう前にな」
「地図のマッピングとルートも計算できてらァ。ここから先は楽園まで、港のねェ空の航海だぜェ」
別れを惜しんでる暇もない。何より、みんなにはまた会える。
この戦いだって勝利して帰る。破滅を呼び込む神となったエステナを倒し、みんなで生きて再び大地を踏みしめてみせる。
私だって生きてみんなにもう一度会いたい。そのためにこの決戦へ身を投じてるんだ。
――古から続き、スペリアス様やゼロラージャさんも繋いでくれたこの道筋。必ず先の未来へも繋げてみせる。
■
「ねえねえ、レオパルさん。箱舟は順調?」
「ああ、問題あらへん。方角も天候も良し。速度といった性能も正常。この調子なら、もうしばらくすれば見えてくるやろ」
楽園へ乗り込むメンバーはトンネルを通って箱舟の上へ。世界中を繋いでくれたトンネルも役目を終え、今は全部閉じてしまった。
もう引き返すという選択肢はない。箱舟はロードレオ海賊団の手で空を漂い続け、地図の中央にある楽園を目指す。
「ほ、本当に空を航行してるんだな……。落ちたら終わりじゃんか……。ロードレオの連中って怖くないのか?」
「ウチとトラキロに関しては通常運行やな。……そもそも泳げへんから、海におる時と危険度は大差あらへん」
「サイボーグというのも不便ですの」
「全部が全部完璧なんて話もねえだろ。……それは俺達が挑む神にしたって同じことか」
「言えてらァ。相手が誰だろうと、勝ちの芽は転がってるかァ」
到着まではまだ少し時間がある。みんなも心に余裕ができてきて、箱舟からの景色を眺めて思い思いに語る。
私も見下ろしてみれば、広がるのは守りたい世界。これまで世界中巡って旅した場所を大空から眺めるのも面白い。
楽園を目指す旅を始めた当初は、こんな戦いに巻き込まれるなどと思いもしなかった。自分の不思議な生い立ちまで知ってしまった。
そうした不思議いっぱいの旅の果てに、とうとうここまでやって来た。たくさんの仲間に助けてもらいつつ、本当に成し遂げるべきことが眼前へ迫ってくる。
「ミラリアちゃん、考え事ですか?」
「あっ、フューティ姉ちゃん。うん、ちょっとだけ。……いよいよ楽園も見えてくる。決戦前の振り返り」
「気負い過ぎる必要もありませんよ。ミラリアちゃんは魔剣のお兄さんを始め、大勢の協力があります。私だって今回は魔王として、出番があれば戦う所存です」
【魔王の王笏も持ってますし、先代魔王の力も受け継いでるのなら期待したくなりますね】
別れもあった。でも、大切な出会いが私をこの時へ導いてくれた。
倒すべき相手はエステナで、私だってエステナ。だけど、今の私は人間としてこの場にいる。
もうこの世界にエステナは必要ない。偽物として利用されてたフューティ姉ちゃんのように、その毒牙はまた未来を閉ざしてくる。
そんな結末だけは嫌。世界の誰も望みはしない。
――エステナという脅威はエステナが終わらせる。
「ッ!? レオパル船長ォ! 見えてきましたァ! だが、あれはァ……!?」
「ディストールの時と同じってことか……! これは箱舟がないと乗り込まれへんわけや……!」
覚悟も新たにしてると、トラキロさんとレオパルさんが箱舟の先端で声を張り上げてくる。
どうやら、目的地が近づいてきたみたい。他のみんなも一緒になり、前方へと目を向ける。
目に映るのは大きな山。あそこがかつて私も辿り着いた楽園だろう。逃げ出す時、かすかに目にした光景とも重なる。
「あ、あれが……楽園? だけど、とても楽しそうには……?」
「何やら禍々しい魔力の――いえ、生命のような胎動が……?」
「結界越しにも感じられるな……! 少なくとも、ヤバいことだけは確かだ……!」
そして、山頂にあるものこそが目指した場所。話には聞いてたけど、誰も寄せ付けない空気がこっちにまで漂ってくる。
アホ毛にも伝わる冷たい感覚。なのに、これまで感じたことのない生命が眠る気配。みんなも同じものを感じるあたり、その力の強大さも見えてくる。
――分厚い黒い結界に守られた楽園。エステナが待ち構える舞台がとうとう見えてきた。
さあ、最終決戦の幕開けだ。




