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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
強欲との決着をつけるべき約束の地
454/503

◇ディストール本丸決戦Ⅲ

王とは、大衆の先頭に立って示す者。

「ギャオォォォオオンッ!!」



 ガブゥゥウ!



「ぬぐぅ!? 歪みし紛い物の進化といえど、その力は本物か……! だが、来るならば好きなだけ来るがいい! 全て我が受け持つ! この魔王ゼロラージャ、転生魔竜という進化の礎にて相手してくれようぞぉぉおお!! ドララララァァア!!」


 たった一人でエステナ教団のドラゴンへ向かっていったゼロラージャさん。いくら魔王であっても、相手が悪すぎるのは火を見るよりも明らか。

 同じぐらいのサイズのドラゴンが何体もゼロラージャさんへ噛みつき、鱗を抉って牙が突き刺さっていく。

 流石のゼロラージャさんも怯むけど、負けじと暴れてやり返す。どれだけの数で襲われようと、本当に一人で戦い続ける。


「ゼロラージャさん! 今すぐ――」

「止まるでない! 振り向くでない! 楽園を止めることは、我の宿願でもある! この場は我が背負うと言ったであろう! ウヌらはただ前を見て……元凶が潜む城を目指せぇぇええ!!」

「ッ……!?」


 本当は今すぐにでも加勢したい。だけど、ゼロラージャさんの気持ちを考えるととてもできない。

 どれだけダメージを受けようと食らいつき、私達の道を作り出してくれてる。助けに入ることよりも、出来上がった道を進むよう求めてくる。


 ――ここで足を止めれば、ゼロラージャさんのやってることが全部無駄になる。


「シ……シード卿と無事な人達は一緒に来て! トトネちゃん達は怪我したみんなをお願い! ゼロラージャさんが作ってくれた時間を……速く!」

「ミ、ミラリア……! 分かった! 俺が援護に入る!」

「こ、こっちは任せてください! 絶対に成功させますから!」


 振り向きたくても振り向いちゃダメ。みんなも心で理解してくれて、私の言葉を優先してくれる。

 戸惑い方からして、みんなだってゼロラージャさんだけにこの場を託したくない気持ちは同じ。それでも前へ進まなきゃいけない気持ちだって同じ。


「我は魔王にして転生魔竜! ウヌらもドラゴンであるならば、我が相手することこそ道理よ! 無還吐息(ゼロブレス)!!」

「ギャオォォオオオ!!」


 背後ではゼロラージャさんが戦ってくれてる声が聞こえる。こうして機会を与えてくれたから、それぞれの役目を果たすことだってできる。

 正直、心が痛い。今だって涙を堪えて駆けてるし、どうしても足取りが上手く前へ進まない。私やスペリアス様にとっても恩人であると考えれば当然だ。


 ――だけど、振り向かずに前を向かなきゃいけない理由がある。


「おい、ロードレオ! ディストールの王城へ天閃理槍を放て! こっちも悠長なことを言ってる暇はねえ! 早くしろぉおお!!」

【チィ……! こっからは見えへんが、ごっつい事態なんは確かやな……! せやったらそのまま王城を目指しとれ! チャージはとっくに終わっとる!】

【威力についても問題ないことは儂が保証する! ひたすら王城を目指し、結界が消えたら乗り込むんじゃ!】


 シード卿もこのチャンスを逃すまいと、シーバーで上空の箱舟へと連絡。その切羽詰まった口ぶりから、おおよその状況はレオパルさんやコルタ学長にも伝わってくれる。

 本当にここで決めないとダメ。ゼロラージャさんがここまで体を張ってくれたのに、失敗することも止まることも許されない。


 ――人の心って本当に辛いことの連続。でも、そうして乗り越えた先の勝利を信じるしかない。


【天閃理槍……発射(ファイア)ァァアア!!】



 ズグオォォォオオンッッ!!


 ――パリィィインッ!



「ッ! 天閃理槍が入った!」

【結界も破られたぞ! 振り返らずに……突っ込めぇぇええ!!】


 もう見えてるのは眼前の王城のみ。そこへ上空から天閃理槍という光の槍が突き刺さり、黒い闇の結界を打ち砕いてくれる。

 これでエステナ教団本丸への最後の道は拓かれた。ツギル兄ちゃんと一緒に声を上げ、シード卿達と一緒に王城を目指す。

 もう迷ってる場合じゃない。ここまで来たら向かってくる敵を全て斬り倒すまでだ。


「ば、馬鹿な!? 結界が破られただと!?」

「ドラゴンは何をしてるのだ!? カ、カーダイス様ぁぁああ!? お助けをぉぉおお!?」

「守りにかまけて、ロクに準備もしてなかったみてえだな! オラ! 全員突っ込むぞぉおお!!」

「任せておくんな!」

「魔王の旦那まで身を挺してくれたんだ! 負けられかっよぉおお!!」


 城内へ入れば、目につくのは慌てふためくエステナ教団。完全に不意打ちだったらしく、まともに戦える準備すら整ってない。

 対するこちらの士気はこれ以上にないレベル。ゼロラージャさんが繋いでくれた気持ちはみんなも同じで、背中を押されるようにドンドン城内へ攻め入っていく。

 切り札のドラゴンがいなければ驚くほど脆い。ここまで辿り着けたのも、ゼロラージャさんを含むみんなのおかげ。

 私だって負けてられない。先陣へと躍り出て、エステナ教団を斬り捨て御免。次々に戦闘不能へ陥らせていく。


【カーダイスさえ倒せば、こいつらも完全に沈黙するんだが……! 考えられるのは玉座の間か!?】

「それだったら、私が分かる! ここで一ヶ月は過ごしてたから!」

「なら総大将は任せたぜ! この場は俺達が受け――ッ!? あ、あそこにいるのは……!?」


 後はカーダイスさんを見つければいい。レパス王子もリースト司祭もいなくなった以上、あの人こそがエステナ教団の現総大将だ。

 ここにいるのは分かってるし、玉座の間なら私もどこにあるか分かる。シード卿達ならこの場は任せられるし、私とツギル兄ちゃんで先を目指すのが一番合理的。


 ――そう思って奥の階段へ目を向けると、向こうの方から姿を見せてくれた。



「ま、まさか……ディストールまで攻められるなどと……!? 妾がここまで追い詰められるはずが……!?」

「……見つけた、カーダイスさん。あなたが与したエステナ教団も、今この時をもってして終わらせる……!」

魔王の覚悟がようやく最後の一人を追い詰めた。

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