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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
強欲との決着をつけるべき約束の地
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◇ディストール本丸決戦

いざ、決戦の舞台はかつて滞在したディストールへ。

エステナ教団決戦、第三フェーズ。

 エスターシャのことはユーメイトさん達に一任。戦線も落ち着いてきてるし、私が出る幕もない。

 シャニロッテさんからは『一緒に行く』とも言われたけど、ディストールまではそれなりの距離がある。私一人で動く方が好都合だ。


【俺も気になるが、急いでもかなりの時間がかかるな……】

「とにかく、頑張って走ってみる。みんなが道を作ってくれてるとも――」

「ミラリアお姉ちゃん! こっちです!」

「ふえ? トトネちゃん?」


 それでも急がないと陽が暮れてしまう。そう思いながらもエスターシャを出て街道へ向かうと、待っていたのはトトネちゃん。

 脇にある林から顔を出し、私のことを手招きしてくれる。


「本来の道は戦いが激化してて危険です! でも、私達イルフ人なら木々の合間を縫って案内できます! カミヤスさん、お願いします!」

【任せるやい! オイラの能力があれば、この先にあるディストールってところまでひとっ飛びだい!】



 ビュゥゥウウン!



「カミヤスさんの風魔法……!」

【イルフの里で見せてくれた技か! これなら消耗せずに向かえるな!】


 どうやら事情は伝わってたらしく、ディストールへ安全なルートで案内してくれるみたい。カミヤスさんも以前と違い、即座に風魔法で私の体を運んでくれる。

 本来の街道を逸れ、木々の間を抜けてのショートカット。おそらくは最短ルートで目指してくれてるのだろう。


「トトネ、カミヤス! この先を進め!」

「他のイルフ人でルートは探しておいた! 緑の中ならイルフ人には造作もない!」


 道なき道を進むけど、そこは流石のイルフ人。慣れない林であろうとも、住み慣れた森と同じように把握してる。

 イルフ人のみんなで協力してルートを探し出し、木に乗りながら方角を指差してくれる。

 おかげでカミヤスさんによる案内も素早い。スイスイと木々を抜け、あっという間にエスターシャを後にする。


「この調子なら、ディストールって場所にもすぐ着けます! 外の世界に興味はありますが、世界のためです! イルフ人やツクモだって頑張ります!」

【人間に魔王軍だって頑張ってるんだい! こうして林の中を抜けられるのも、戦ってるみんなのおかげだい!】

「本当……! 道の方でみんなが戦ってる……!」


 素早くも道中は安泰。街道から戦いの声は聞こえても、戦火がここまで伸びることはない。

 風に乗せられながら視線を向ければ、見知った人達の姿が林の中からでも確認できる。


「こ、こいつら!? どれだけの数がいるんだ!?」

「教団から支給された兵器があっても、この数が相手では……!?」

「タタラエッジとスーサイドの連合軍だべ! 鍛え抜いた武器と魔法の軍勢があれば、どんな兵器が相手でも後れは取らないべ!」


 まず見えてくるのは、ホービントさんを筆頭とした戦士と魔術師の連合軍。エステナ教団もライフルみたいな武器を手にしてるけど、全く怯むことなく挑みかかってる。

 数では完全に押してる。近接武器と魔法による連携もできてる。完全に押せ押せといった勢いで、どんどんとエステナ教団を蹴散らしてくれる。


「こ、こいつら……Aランクの連中だろ!? 一緒にいるのはまさかロードレオ海賊団!? おまけに格好もおかしいぞ!?」

「俺らはレオパル様の手で新たな世界の扉を開いて生まれ変わった! お前らSランクがどれだけ強かろうと、熱き忠誠の前では意味を成さない! ロードレオ海賊団の本気を舐めるな!」

「ぜ、全然意味が分からない!? だが、もう勘弁してくれ! 僕らはエステナ教団に脅され、傭兵として従ってただけなんだ!」


 さらに先へ進めば、ロードレオ海賊団の部隊がニャンニャンパラダイスを筆頭に戦ってくれてる。流石にこの規模の戦いとなると、レオパルさんも戦闘許可を出すしかなかったのだろう。

 相手はエステナ教団の人達とは格好が違い、かつてのSランクパーティーといった面々による即席メンバーっぽい。それでも完全に押し返し、どんどん手を挙げて降伏していってる。

 単純に数という戦力差もあるけど、気持ちの面でも負けてない。ただ従ってるだけでは、熱い気持ちを止められるはずもない。


「ど、どうなってるんだ!? ここの地面、そこら中に落とし穴があるぞ!?」

「ダ、ダメだ!? 足を取られてまともに動くことも……!?」

「ピットフォール、ヘルシー! 我々パサラダは日々畑仕事で鍛えている! この程度の落とし穴を作ることぐらい、タマネギを収穫するより容易いことよ!」

「まあ、この作戦を思いついてくれたのはアキント卿じゃがのう」


 見た目的な戦力ではかなり劣ってるパサラダのみんなも健闘してる。大量の落とし穴を道に掘り、エステナ教団をどんどん落としている。

 戦えずとも、作戦次第でこんなに頼りになる。みんなが前向きにこの戦いへ赴いてくれてるからか。


 ――この世界をエステナ教団の好きにされたくないのは誰だって同じ。これ以上、無闇に壊されたくない気持ちが一つとなってる。


「ッ!? 何か大きな壁が見えてきました!」

「あれは……ディストール! もう少し!」

【気を引き締めておくやい! オイラも全速力で飛ばすやい!】


 そうした気持ちが私の道を繋ぎ、とうとうディストールまであと一歩のところまでやって来れた。

 これもまたみんなのおかげ。エステナ教団の本丸と言えるディストールを落とせば、この戦いも終止符を迎える。

 何か問題が起こってるみたいだけど、私も加勢すれば――




 ドゴォォォォオオンッ!!



「ふ、ふえ!? な、何!?」

【城壁の向こうから煙が!?】




 ――すぐに終わると思ったけど、そんな希望さえ打ち砕く騒音。

 ディストールを囲む壁の向こうから、戦慄するような光景が見えてくる。

エステナ教団にはまだ切り札が残っている。

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