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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
強欲との決着をつけるべき約束の地
446/503

◇エスターシャ監獄突入戦

VSエステナ教団、第二フェーズ


いよいよ世界をかけた戦いが始まる!

「ど、どうなってるんだ!? どうして牢屋を出て!?」

「か、構うものか! 脱獄は事実だ! レパス王子にバレる前に始末して――」



 バシュンッ! バギュゥゥウン!



「ガ、ガハッ!?」

「ま、魔法に……武器まで……!?」

「悪いんだが、オレッチ達の導き手に手出しはさせないよ?」

「準備は万全ってね! みんなもミラリアに続くよ!」


 私が先陣で飛び出すと、駆け付けたエステナ教団も槍や魔法で攻撃しようと構えてくる。でも、心配なんて必要ない。

 後方からペイパー警部とランさん親子による援護射撃。凝縮された火炎魔法を正確に放ち、構え始めたエステナ教団をバッタバッタと倒していく。

 こうなるって信じてた。信じてるからこそ、強気に前へ出ることができる。


「わたくしも続きますの! 魔法学都スーサイドで学んだ技、お見せしますの!」

「我々も遅れられません! 近接武器を持った者達はミラリア様と同じく前へ! 後方との連携を維持して、まずは上の階層を目指してください!」

「うおぉぉぉおお!!」

「やってやるぜぇぇええ!!」


 シャニロッテさんも杖を手に魔法で援護に入り、ユーメイトさんの掛け声で剣や槍を持った人達も勇んで前へ出てくれる。

 エステナ教団も増援が駆け付けるものの、初手で出鼻をくじかれた影響は大きい。完全にこちらの勢いが勝り、ドンドンと牢屋を離れて雪崩れ込んでいく。

 目指すは階段を上がった先にある聖堂。私もエスターシャに来た時、少しだけ目にしたことがある。

 事前の作戦ではまずそこを占拠。そこを拠点とできれば、エスターシャを攻め落とすのは造作もない。

 エステナ教団の本拠地であるこの地を抑えれば、ディストールへの足がかりにだってなる。後は先に動いた部隊とも協力し、ディストールまで一気に攻め落とす算段だ。


 ――言うは易く行うは難しってことは理解してる。でも、できないなどとは思ってない。


「私も今回は容赦しない! 邪魔するなら……斬り捨て御免!」



 スパァンッ! スパァンッ!



「ぐぐぅ……!? な、なんだこの剣技は……!?」

「こ、この小娘……! まさか、以前にレパス王子も探していた……!?」


 頼れる味方がたくさんいる。後ろを振り返る心配もなく、前へ進み続けられる理由がある。

 その心強さが魔剣の剣閃をも弾ませる。鋭く居合を走らせて、先頭をひたすら突っ切り続ける。


「ミラリア様! 少しペースを抑えてください! 後続との連携が外れそうです!」

「分かった、ユーメイトさん! 後方は大丈夫!?」

「ご安心くださいませ! エステナ教団を確実に押し返せてますの!」


 少し私が急ぎすぎれば、声をかけて注意もしてもらえる。みんながみんなを支え合うから強くなれる。

 後方についてもシャニロッテさん達が対応してくれて、状況だって教えてくれる。戦況は順調だ。

 繋がったみんなの力は、エステナ教団を確実に圧倒できている。




「マ、マズいぞ……!? このような事態、レパス王子やカーダイス嬢に――う、うぐっ……!?」

「お、おい!? どうしたんだ!? こっちに攻撃は届いて――ゴ、ゴホッ!? きゅ、急に体が……!?」

【ッ!? ミラリア、少し止まれ! 連中の様子がおかしいぞ!?】




 この勢いのまま聖堂を制圧しようとしてたら、突如として苦しみ始めるエステナ教団。まだ攻撃は届いてない人達まで胸を押さえ、その場でうずくまり始める。

 次第に動きまで止めてしまうし、いったい何が起こってるの? ツギル兄ちゃんに言われて攻撃を止めたけど、何が起こってるのか理解できない。


 ――でも、こんな光景には見覚えがある。


「うぐぅ……ウガァァァアア!!」

「グルルルゥゥ……!」

「ッ!? こ、これってまさか……ゾンビ!?」

【スーサイドの時と同じか!? まさか、エステナ教団の人間まで!?】


 頭の中を不安がよぎると、予想通りの変化が現れる。苦しんでたエステナ教団の人達が呻き声と共に起き上がれば、赤く光った目と鋭い牙が見えて嫌でも思い出す。

 かつて偽物のエステナとなったフューティ姉ちゃんを使い、エスターシャを恐怖に陥れたゾンビの軍団。あの時はスーサイドのみんなを犠牲としたのに、今度は元凶であるエステナ教団自身がゾンビとなっている。

 これってもしかして、誰かが意図的にやってるの? エステナ教団の誰かが味方を犠牲にしてるってこと?


「こ、この者達は……!? 魔槍による攻撃も薄いのですか!?」

「オレッチやランの狙撃も効いてないぞ!? まるで苦痛を意に介さず、ひたすらに襲ってきやがる!?」

「みんな、下手に近づかないで! あの人達に噛まれたら同じになっちゃう!」

「う、嘘だろ!? 攻撃もまともに効かないし、だったらどうすれば……!?」


 厄介なことに、体力と言うか『攻撃に怯まない度合』は以前よりも上だ。おかげでせっかく押し上げた戦線も少しずつ戻されてしまう。

 ゾンビに『痛がる』なんててことはない。おまけに下手に接近すれば、逆にこっちが被害を受ける。エステナ教団がゾンビ化したのもこれが狙いっぽい。

 誰がやったか知らないけど、悪質なことこの上ない。ともかく今は噛まれないことだけ考えるしかない。

 ただ、問題はここからどうするか。あの時と同じならゾンビ化の魔力を持った人間を倒せばいいんだけど、どこの誰かも分からない。




「皆様! 頭を下げていてほしいですの! わたくしが何とかしますの!」



 ギュギュ――シュゥゥウウウ



「グガァァ――ゲホッ! ゲホッ! な、何だ……? お、俺は何をしていて……?」

「きゅ、急に体が重くなって……?」

「こ、これって……ゾンビになった人達が元に戻ってる……?」




 ゾンビに対処できず四面楚歌となりかけてたその時、後方にいたシャニロッテさんの声でこちらは一斉に頭を下げる。

 何をするのか分からなかったけど、後ろを振り向けば宝玉を掲げて魔法を唱えるシャニロッテさんの姿。同時に訪れるゾンビ達への変化。

 ゾンビから黒い魔力が抜け出すと、シャニロッテさんの宝玉へどんどん吸収されていく。それにより、ゾンビ化もどんどん解けていく。

 何が起こってるか理解できずとも、確実に言えることが一つ。シャニロッテさんがこの窮地から救ってくれた。




「コルタ学長からこの宝玉を受け取っておいて正解でしたの! ゾンビといえども、根底は魔力の原理! 魔法学都スーサイドの技術があれば対処可能ですの!」

そう何度も同じ手は食らわない!

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