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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
強欲との決着をつけるべき約束の地
441/503

迫る世界の危機を前にして、人も世界も一つとなる

その偉業を一人の少女が成し遂げた。

「まあ、オレッチも少し考えれば必要な選択は見えるさ。そもそもミラリアちゃんに別の意図があったら、こうして世界を繋げる理由が見えてこない。その推理からも――」

「なあ、親父。その推理って……必要?」

「いや、ぶっちゃけ不要。……こっちは囚われの身で迂闊に動けないが、気持ち自体は定まってる! 牢の連中も納得してくれてるぜ! ミラリアちゃんについて行くってよ!」

「もちろん、アタイも同じさ! ミラリア!」


 エスターシャの牢獄と繋がったトンネルから、ペイパー警部といった囚われた人達も笑顔で応えてくれる。

 娘のランさんも含め、呼応する声に導かれるように受け入れてくれた。


「わ、わしもポートファイブの代表として協力したいが……何やら魔物の姿も見えないか? そこだけ不安なんだが?」

「ああ、大丈夫だべ。魔王軍のことなら、オラ達タタラエッジも説明するべよ。味方なのは間違いないべ」

「なんだ、味方なのか。魔王軍までいるのは驚きだが、ここまでの話を聞いたら逆に納得だな! 実に心強い!」

「武器の調達についてもタタラエッジを頼るといいべよ! こうしてトンネルで繋がってくれてるなら、いくらでもそっちへ送り込めるべ!」


 ポートファイブの親方さんにタタラエッジのホービントさんといった人達も、笑いながら声を上げて協力を表明してくれる。

 早速とばかりにタタラエッジから砦へ移る人達も現れ、頼れる戦力も集まってくれる。


「わ、私もミラリアお姉ちゃんと一緒に戦います! に、人間さんがいっぱいは怖いですけど……」

「もはや種族の垣根を気にする場合ではないな。我々イルフ人はもとよりミラリアを信じている。何より、気持ちの向かう先は同じだ」

【人間に魔王軍にイルフ人! 世界が大事なのは一緒だい! ツクモのオイラも後れは取らないやい!】


 普通の人間だけじゃない。イルフの里からはトトネちゃんに長老様、ツクモのカミヤスさんまで出てきてくれる。

 これまで人間は恐れていたのに、世界の破滅を前にして迷ってられないのは確かなこと。その気持ちが言葉だけでも理解できる。


「あ、あれは……パサラダに伝わる精霊伝説の!? そんな者達まで味方するならば……レッツゴー、ヘルシー! このキャプテン・サラダバー、世界のために出陣する! こっちは大農村だ! 食糧調達なら任せてくれ!」

「スペリアスの娘の言葉には、一片の曇りも感じなかったのう。……儂らスーサイドも力の限り協力しよう。まずは手始めとして、この砦の結界を強化させてもらおうか」


 さらにはパサラダのノムーラさんが食料で、スーサイドのコルタ学長が魔法技術で協力してくれた。

 続々とトンネルを抜けて、気が付けば砦の中は大賑わい。みんながみんな、私のお願いを聞いて動いてくれてる。

 場所も種族も関係なく、たくさんの人達が味方してくれる。


「まあ、ウチらは最初っから協力するつもりやったし。むしろ先に準備を進めさせてもらってんで~」

「ヤカタ料理長にネモト料理長ォ! 炊き出しの準備を進めるんだァ! ここに避難した女子供も含め、全員に美味いもんを食わせてやんなァ!」

「てやんでい! べらぼうめい!」

「本日は出血大サービスですねい」

「……さっきの戦いの時から薄々勘付いてはいたが、ミラリアに味方していたのはやはりロードレオ海賊団か。……とはいえ、異種族に魔王軍まで味方してくれて今更か。無論、吾輩もミラリアの助けとなろう。むしろ、こうして繋ぎ合わせた力を頼らせてほしい」


 ロードレオ海賊団にいたっては、いつの間にやらいろいろ準備してたみたい。トンネルを使って箱舟とロード岩流島まで行き来し、武器やご飯の準備をしてくれてる。

 簡単には先に説明したとはいえ、やっぱりこうして助けてくれる姿を見ると胸が熱い。

 砦を仕切るアキント卿も気圧され気味だけど、素直に受け入れてくれる。


「ドラララ。まさに感服ぞ。魔王の我とて、ここまでの人数を繋ぎ合わせることは叶わぬ。なれば我も王として、この者達を守ると約束しよう」

「まさか、人間と共に戦うことになりますとは……」

「……しっかし、本当に魔王軍まで味方してくれんのか。ミラリアの人脈って凄いな……」

「魔王軍につきましては、わたくしも保証しますの! ミラリア教団も一緒となり、まずは打倒エステナ教団ですの!」


 それらは魔王軍についても同じこと。魔界へ戻っていたゼロラージャさんだけでなく、ユーメイトさんも他の人達と同じように姿を見せてくれる。

 志についても同じ。最初は恐る恐るな人もいたけど、シード卿やシャニロッテさんといったみんなと一緒に次第に溶け込んでいく。


 ――気が付けば、砦に集まったのは私が旅先で出会ったみんなの姿。エスカぺ村があった地で、世界が一つになったみたい。


【……やったな、ミラリア。これはお前の功績だ。言葉だけでなくこれまで旅して歩んだ道のりが、こうして一つの大きな力へ繋がったんだ】

「う……うぅ……うああぁ……!」

【ミラリア? ……ああ、そうか。ずっと我慢してたのか。今はいいさ、心のままに泣けばいい。だって、お前は紛れもない人間なんだからな】


 そんな光景を目の当たりにすれば、これまで堪えてた気持ちを溢れさせずにはいられない。みんながエステナ教団と戦うために準備してくれてるのに、その場でうずくまって顔を押さえてしまう。

 でも、今だけは許してほしい。ツギル兄ちゃんの言葉にも甘えたい。

 みんなが私の気持ちを理解してくれた。途方もない声を聞いてくれた。




 ――その事実が頭に浮かべば、気持ちを涙としてどんどん溢れさせるしかない。




「みんな……ありがとう……! うああぁ……! ありがとぉ……!」

さあ、役者は集った!

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