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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
強欲との決着をつけるべき約束の地
440/503

神から生まれた少女は、今の時を人と共に

全て理解した上で戦わないといけない機会。

「エ、エステナ……? いったい、ミラリア様は何を申されて……?」

「……全員、ここは静かに話を聞こうぜ。ミラリアが語り終えるのを待とうじゃねえか」


 私の発言を聞いて、トンネルの向こうも含めたみんながどよめき始める。当然と言えば当然の話だ。

 いきなり『私はエステナ』なんて名乗ったら、ツッコミが飛んで来たっておかしくない。だけど、みんなおとなしく黙って次の言葉を待ってくれる。


 ――ならば私も厚意に甘えさせてもらう。これから必要なことを知ってもらうためにも。


「本当の私は――」


 そこからは私なりに頑張って説明。

 フューティ姉ちゃんやアキント卿といった『人の上に立つ人』みたいに器用な説明まではできない。


「ミ、ミラリア……? きゅ、急に何を言ってんだい……?」

「……だが、話の筋は通ってるか。オレッチも続きを聞きたい。ランもおとなしく聞くべきだな」


 どこから話せばいいのかなんて分かんない。

 だから、時間をかけてでもしっかり『これまでのこと』を口にしていく。

 これまで旅した意味も、お母さんとの経緯も、箱舟のことも、私の正体も全て。


「つ、つまり、ミラリアちゃんは女神エステナの一部だったんべか……? に、にわかには信じがたいべ……」

「……ふざけてヘルシーに語れる内容じゃないな」

「ご先祖様のいた楽園に……そんな秘密が……」

「なんと……スペリアスはすでに故人と……。儂も口惜しいが、それでもミラリア君が語りたいことは……?」


 凄くたどたどしく語ってるのは自分でも理解してる。でも、全部を知ってもらった上でないとダメ。

 『これからのこと』をお願いするには、どうしても必要だってことだけは理解してる。


「……ミラリア。事の真意は吾輩も今は置いておこう。貴様が本当に吾輩達へ望むことを口にしてくれ」


 どこまで理解してもらえたかも、信じてもらえたかも分かんない。だけど、みんな黙って耳にしてくれた。

 そして、これが最後で一番大事な話。これから私がやりたいことで、みんなにも協力してほしいこと。




「私は……楽園から始まった脅威を終わらせたい。エステナ教団もその一つ。そうしないと、この大切な世界が終わっちゃう。……でも、私だけじゃとても足りない。だから……みんなの力を貸して! お願い!」




 精一杯の想いを込めて、トンネルの向こうも含めて頭を下げてのお願い。私にできることなんてこれぐらい。

 どれだけ神様の一部であろうとも、私の力は一人の人間でしかない。創世装置と呼ばれるエステナ本体のような力なんてない。

 魔法も下手くそ。ある意味、ここの誰よりも『ゲンソウが生まれる以前の人間』に近いのかも。

 だからどうしても必要になる。悪意に染まったゲンソウに対抗できる『ゲンソウが根底にある世界の人間』であるみんなの力が。


 ――それらのゴチャゴチャした願いも込めて、涙を浮かべながら必死に頭を下げる。




「……よく頑張って話してくれたな、ミラリア。俺は信じるぜ。他の連中が何を言おうが、俺自身の女神と認めた女の言葉をよ」

「ふ、ふえ……? シード卿……?」




 かなりの時間頭を下げて、訪れていた場の沈黙。それを打ち破るように、私の肩を叩きながら声をかけてくれる男の人が一人。

 実際には人間と違う私に『恋した』と言ってくれて、今もその想いを抱いてくれてるシード卿だ。

 気が付けばトンネルを抜け出し、砦にいる私の傍まで寄り添ってくれてる。


「早い話『俺の女神様が本物の女神様だった』って話だろ? まあ、普通は信じらんねえだろうな。ミラリア本人も含めてよ」

「だけど……信じてくれるの……?」

「当たり前だ。愛する女が苦しそうに涙まで流して語ってくれた言葉を、裏切る男がどこにいるってんだ? ……俺みてえな下流貴族の力が必要なら、いくらでも頼ってくれ。神だ世界だなんてのは関係ねえ。俺は『ミラリアだから』味方してえんだ」


 その言葉の一つ一つから感じるのは、確かに私の味方をしてくれるっていう想い。素っ頓狂に聞こえる話も信じてくれてることは、顔を上げた先に見える笑みからでも感じ取れる。

 それにしても『私だから味方する』って言われると、くすぐったくも嬉しい。その言葉の裏に『私を一人の人間として見てる』って気持ちも見え隠れする。




「シード卿だけにいい顔はさせませんの! わたくしはミラリア教団の創設者にして、崇拝するミラリア様のお友達! お友達が神様であろうとなかろうと、力にならない理由がありませんの!」

「シャ、シャニロッテさん……!」




 さらにはスーサイドにいたシャニロッテさんもトンネルからこちらへ飛び出し、シード卿に呼応するように声を上げる。

 シャニロッテさんも同じだ。私の正体を知ってなお『友達として』協力することを表明してくれる。


 ――なんだろう。胸の奥が温かくなって、目元まで熱くなるのを感じる。


「皆様もよく考えてほしいですの! いえ! 考えるまでもない話のはずですの!」

「ミラリアが言ってることは常識では測れねえだろうが、間違ってる点が一つでもあったか!? 矛盾なんてあったか!? ここで手を取らねえと世界は終わる! 楽園という負の遺産によって、俺達今を生きる人間がくだばってもいいのかよ!?」


 そこから必死に声をかけ、黙って考え込んでるみんなにも訴えてくれる。

 これだけでも嬉しい。嬉しくて涙がポロポロ出てくる。私の言葉を信じてくれる人は確かに存在してくれた。




「ママ! おにーちゃん! わたし、ミラリアさまをしんじたい!」

「ママ! ぼくもおなじ!」

「……ええ、そうね。お母さんも同じ気持ちよ」




 そして、その声はさらに広がりを見せてくれる。

今ここに、人と世界が繋がる。

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