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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
強欲との決着をつけるべき約束の地
439/503

最初のゲンソウは、本当の意味で世界を繋げて

今ここに、これまでの旅路が収束する。

 ブゥゥゥウン ブゥゥゥウン



「な、何事だ!? 急に魔法陣が……それも大量に!?」

「こ、今度は何が起こってるのさ!? まさか、またエステナ教団が!?」

「安心して。これは私が呼び起した力。今からこの砦を他の土地とも繋いでみせる」


 スペリアス様が唱えたルーンスクリプトと共に、砦内へ壁のように配置される魔法陣。数も一つではない。

 いくつもの魔法陣がまるで門のように出現するから、みんなは焦って戸惑ってしまう。

 とはいえ私は元がエステナだからなのか、何が起こってるのか不思議と理解できる。


 ――今ここに、博士さんが最初に作った魔法が再現されようとしてる。



 ブゥゥゥウン



「ッ!? シ、シード卿!? 何やら空間に穴が!?」

「こ、これは……ゲートとでも言うべきものか!? しかも先に見えるのは……アキント卿じゃねえか!?」

「な、なんと!? シード卿か!? まだここまでは遠いと聞いていたが……魔法陣が遠方と繋いだのか!?」


 魔法陣の展開が終わると、そこに開かれるのは空間ごと飛び越えるトンネルのようなもの。

 一つ目はまだこちらへ向かっている最中のシード卿のもとへ。



 ブゥゥゥウン



「ッ!? ペイパー警部! 何やら壁に奇怪な穴が!?」

「な、何だこの空間に空いた穴みたいな――って、ラン!? ランなのか!? ど、どうして穴の向こうに!?」

「お、親父!? 嘘だろ!? エスターシャで捕まってるはずなのに!?」


 二つ目はエスターシャの牢獄に囚われてるペイパー警部達のもとへ。



 ブゥゥゥウン ブゥゥゥウン



「ニャハッ!? きゅ、急に何や出てきた思うたら、ミラリアちゃんの姿が見えるやないかい!?」

「て、てやんでい!? どうして向こうの穴にレオパル船長達がいるんでい!?」

「これは……空間ごと別の場所へ繋がってるんですかねい……?」

「おいおいィ……ロード岩流島も見えるじゃねェかァ。焦って声も出ねェぞォ……」


 三つ目と四つ目はそれぞれ箱舟とロード岩流島へ。

 全然違う場所同士なのに、砦の中でトンネルを通して繋がっていく。



 ブゥゥゥウン ブゥゥゥウン



「ど、どうなってんだべ!? どうしてタタラエッジが別の場所と繋がったんだべ!?」

「ホワッツ、ヘルシー!? まるで畑のモグラが掘ったが如く、空間を繋ぐトンネルが!?」

「カ、カミヤスさん! 長老様! この先に別の空間が見えます! しかも、その先にいるのは……!?」

「あっ! ミ、ミラリア様ですの! これはもしや、ミラリア様の御業ですの!?」

「なんと……!? 転移魔法が道となり、別の場所と繋いだということか……!? 儂も腰が抜けそうじゃ……!?」


 続々と開通していく空間のトンネル。その先に見えるのは、私もお世話になった人達の姿。

 タタラエッジのホービントさん、パサラダのノムーラさん、イルフの里のトトネちゃん、スーサイドのシャニロッテさんにコルタ学長。

 まさにスペリアス様が言った通りだ。この砦を起点として、一つへ繋げる道が出来上がっていく。


「ゼロラージャ様……!? この力は……!?」

「……うむ。恐れるでない。どうやら、ミラリアがまた一つ駒を進めたようぞ」

「魔界にも繋がってくれた……!」

【凄いな……! これが『一番最初のゲンソウ』――『一番最初に望まれた力』ってことか……!】


 魔界とも繋がり、それこそ私がこれまで旅した道が一つとなった瞬間だ。思わず涙が零れそうになる。

 きっと、博士さんも本当はこういった使い道のためにゲンソウを開発したのだろう。

 困ってどうしようもなくなった時、必要となるのは他の人の助け。その助けを得るための手段こそ、今ここに発現した空間のトンネルということか。

 楽園やエステナの発端となった力だけど、今は感謝して使いたい。使い方さえ間違えなければ、こうして世界中を繋げてくれたことは確かな力になる。


【ミラリアよ。ワシにできるのはここまでじゃ。後はどうか――正しき目的のため――】

「うん、ありがとう。スペリアス様は休んでて。ここからは私の仕事だから」


 これも太古の記憶と力の導きか。スペリアス様もこれ以上は関与できないらしいし、事情は私から説明する他ない。

 こうして世界を繋いでくれたのはあくまできっかけ。本当に必要なことは私がやらないといけない。


「こ、これって……ミラリアがやったのか? でも、どうやって……?」

「ミラリアは魔法が使えねえはずだろ? なのに、こんな世界ごと繋ぐような魔法……魔剣の兄貴がいても無理じゃねえか?」

「オーバー、ヘルシー!? よく見ると、別の穴から見えるのは魔王じゃないか!?」

「ああ、それは安心するべよ。魔王さんは話の分かる人だべ」

「魔王さんもですが、海賊の人達もいませんか!?」

「ニョホッ!? いつぞやの長耳ちゃんも見っけたでぇえ!」

「ちょっと皆様落ち着くですの! 話がゴチャゴチャですの!」


 とはいえ、いきなりの事態にみんなは大混乱。まずは落ち着いてもらわないと話にならない。

 穴から出てくる気配もないし、警戒されてるのは明白だ。このままでは協力してもらえそうにない。




「……みんな、落ち着いて聞いて欲しい。あなた達の助けがほしくて、世界を繋いだのは私。今から、私の正体も含めて話をする。長くなるけど、聞いたうえで判断してほしい」




 ならば、難しい語り口はなしで語るのみ。必要なのは今ここにいるみんなに『私が呼び出した理由』を説明すること。

 そのためには『私が本当は何者なのか』という理由も含め、しっかり説明する必要がある。言いづらいけど、言わないことには始まらない。


 ――『立場も理由も明確にして話す』ことが必要なのは、これまでの旅で何度も学んできた。




「私のもう一つの名前は……エステナ。ここにみんなを呼び集めた理由も、私の正体と関わってくる」

ただ助けてほしい。そのためならば、神であっても頭を下げる。

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