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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
強欲との決着をつけるべき約束の地
433/503

◇エスカぺ要塞防衛戦Ⅲ

かつてポートファイブでロードレオとあれこれあった武器が、再びランの手中へ。

「なんでこれがあるのか――は、今考えてる場合でもないか! 何にせよ、使えるものは使わせてもらうよ!」


 箱舟から送られたスナイパーライフルを受け取ったランさんの行動は素早い。傘みたいなのを取り外し、怪物軍団へ先端を構える。

 付属の望遠鏡に目を当てて狙う姿は、かつて私が見たものと同じ。久しぶりに使うことになっても、腕が衰えた様子はない。



 バギュゥウンッ! ――ドスンッ!



「よっしゃ! 眉間に一発命中! これなら行ける!」

「それはライフルか!? 吾輩が知るものとは少々異なるが、戦力としては確かだな! 怪物どもも眉間を撃ち抜かれれば流石に耐えられぬようだ! その隙を狙って追い打ちせよ!」


 実際の腕前も見事。今回の怪物は以前のカラフライと違って空を飛ばず、地上をゆっくり進軍するものばかり。スナイパーライフルで狙えばまさにマトだ。

 精密に怪物の眉間を撃ち抜く凝縮された火炎魔法。ペイパー警部譲りの腕前が炸裂し、後続も続いてくれる。


「この調子なら、奥の連中も行けそうだね! よっと!」

「お、おい!? 前へ出るのは流石に危ないぞ!?」


 ただ、久しぶりのスナイパーライフルでランさんのテンションも上がりすぎちゃったみたい。後方から前線へ飛び出してしまい、さらに奥の怪物を狙おうとし始める。

 アキント卿が止めた時にはもう遅い。前線でスナイパーライフルを構えるランさんの横から――


「ゲギャァァア!!」

「や、やば!? 前に出過ぎ――」



 スパァァアンッ! ――ドサッ



「前に出過ぎ。その武器、後方支援の方が向いてる」

「ミ、ミラリア!? 悪い! 助かった!」


 ――怪物が迫ってたので、すぐさま私が斬り捨て御免。こっちが守ってたラインまで出て来ちゃったから、かえって都合よく援護へ入れた。

 今のはランさんのミスだけど、それまでの攻撃でだいぶ怪物を倒してはくれた。成果自体は上々だし、私も過度の言及は避けよう。

 ランさんも理解してくれてるし、調子としては悪くない。


「もう少しだけ耐えれば秘策がある。それまで時間を使って怪物を近づけないこと優先で」

「へへ。なんだか、ポートファイブ近くで狩りをした頃と逆だな。ミラリアが凄く頼もしいや。……願わくば、また一緒に狩りへ出かけたいもんだ」

「それは私も是非ご一緒したい。だからこそ、この場を切り抜けること優先で。私達が掴もうとしてるのは、そういった日常ができる未来だから」


 ランさんに背中を預ける形で周囲を警戒。その際にちょっとした話で思い浮かべるのは、こうした戦いが終わった後にやりたいこと。

 旅もいいけど、友達と一緒に狩りというのも悪くない。世界を守ることができれば、そういったことに時間を割くのも一興か。

 そんな未来を思い描くからこそ、なおのこと気を抜いてはいられない。怪物達もこっちを警戒し始めてるし、時間としてもそろそろ頃合いだろう。




【ミラリアちゃん、準備できたで! 味方を全員一度下がらせるんや!】

「分かった! みんな、砦まで急いで戻って!」

「さっき言ってた秘策か! 了解さ!」




 いいタイミングでレオパルさんから準備完了の連絡も届いた。シーバーの声を聞いたら、みんなにも促して一斉に砦までダッシュで戻る。

 怪物達も反応できておらず、前線となってる平原に丁度集まった形。それを狙っていたかのように、シーバーの向こうでレオパルさんが声を張り上げる。


天閃理槍(てんせんりそう)……発射(ファイア)ァァアア!!】



 カッ――ズゥグオォォォオオンッッ!!



【こ、これは……光の槍か!? 箱舟にこんな兵器が仕込まれてたなんて!?】

「す、凄い威力だ……!? こんな魔法、吾輩も見たことがない……!?」


 合図とともに箱舟から落とされたのは、魔力による巨大な光の槍。砦まで離れた私達でさえ、その眩さと衝撃に顔を隠してしまう。

 威力も絶大で、範囲は平原の広い範囲まで至ってる。さっきまで私達が戦ってた場所へ直撃だ。

 ここまで凄いのなら、事前に規模ぐらいは教えてほしかった。アホ毛までピンとするドッキリ感が走ってしまう。


 ――とはいえ、狙いは完璧だ。


「見て! 怪物達がほとんど倒れた!」

【あれだけの威力となれば、闇瘴による強化も関係ないか……!】

「よっしゃ! アタイにはよく分かんないが、ミラリアの作戦通りってことだね!」

「だが、まだ油断はできんぞ! 大半が片付いたとはいえ、奥の方にはまだ後続が残っておる! 警戒を怠るな!」


 平原にいた怪物は倒され、残るは後方森の中に控えてたもののみ。箱舟との連携が噛み合い、上手く有利へ働いてくれた。

 だけど、怪物はまだ残ってる。数もそれなりに残ってるし、こっちだけで倒しきるのは厳しいものがある。


【ニャーハハハ! これぞ箱舟が切り札、天閃理槍(てんせんりそう)や! 箱舟でチャージされた太陽の光エネルギーを、槍へと変えてドカンと一発やで! ……つっても、まだ残った連中はおるみたいやな】

「レオパルさん! さっきのをもう一度放つことはできる!?」

【ああ、ウチもそのつもりや。ただ、またしばらくチャージする時間が必要になる。それまでの間、さっきみたいに粘ってくれや】


 天閃理槍という一撃がもう一度使えるならば、次でトドメとすることができる。レオパルさんも事態は把握してるらしく、すぐさま準備にとりかかってくれる。

 怪物も迫って来るし、こっちだって疲れが見えてる。でも、ここさえ凌げば勝利は目前だ。


「みんな! 頑張って! さっきの攻撃をもう一度するから、同じように――」

「ミ、ミラリア……!? 森の奥から、誰か出てくるぞ……!? 人の影だ……!?」

「おそらくはこの怪物どもを操る指揮官だろうが、あの姿には吾輩も見覚えが……?」


 みんなにも声掛けして挑もうとするも、ランさんの声で一斉に森の方を注視してみる。

 確かにさっきまでの怪物と違い、服を着た人の姿が見える。アキント卿と同じく、私にも見覚えがある。

 この怪物達を操ってるって推察にも同感。あの人なら、闇瘴の怪物のことも理解してておかしくない。


 ――この軍勢の総大将とも言うべき人が、とうとうその姿を現した。




「おやおや、これは予想外ですね。闇瘴で強化した怪物がここまでやられるとは、私も計算外でしたよ」

「リ、リースト司祭……!?」

第一陣総大将、リースト司祭。無情のままに怪物を仕向けた張本人自ら参陣。

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