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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
強欲との決着をつけるべき約束の地
429/503

最後の砦は、暴挙への抵抗として

故郷エスカぺ村があった地に建てられた砦こそ、本章の重要拠点。

 ランさんの言う最後の砦と呼ばれる場所。中を完全に隠すほど大きい柵の内側へ入れば、さらに物々しい光景が広がってる。

 槍や大砲といった武器が大量に用意され、いろんな鎧の兵隊さんが戦う準備をしてる。姿がそれぞれ違うのは、それだけ様々な場所から人が集まってるからっぽい。

 兵隊さんだけでなく、戦えない女の人や子供といった一般人も多い。ただ、みんなの表情は一貫してどこか暗い。


「少し前ぐらいから、世界のあちこちでエステナ教団関連の戦いが巻き起こってさ。ポートファイブも標的にされて、住んでたアタイ達は逃げ出すしかなくなってね……」

【ポートファイブは海を隔てて隣の大陸とはいえ、そこまで戦火を広げてるのか……】

「ああ。今でも世界中で、エステナ教団の凶行が起こってるって話さ。正直、どこへ逃げても元凶を倒さないことには終わらない。だから他の都市とも連携して、エステナ教団と戦う道を選んだのさ」

「そのための拠点がこの場所――最後の砦。私達が知らない間に、そこまでの事態が起こってたなんて……。ペイパー警部も一緒なの?」

「いいや。どうにも、親父はエスターシャで囚われてるらしい。だから尚更、アタイも逃げ出したくないのさ。スナイパーライフルはなくても、何かしら役に立てると思ってね」

【スーサイドでも聞いたが、やはりペイパー警部も……】


 ランさんに連れられ、話を聞きつつ砦の中を進んでいく。実際の光景と経験してる人の話を聞くと、これまで聞いたこともより実感となって心に突き刺さってくる。

 ここにいるのはランさんといったポートファイブの人達だけでなく、今いる大陸の人達も含まれてる。ディストールやエスターシャに住んでても、エステナ教団に逆らえば敵と見なされ襲われる。

 もうメチャクチャだ。エステナ教団がやってることは『世界を支配する』なんて言葉でも収まらない。『世界を壊したい』とでも言った方がいい。

 そんな敵がいるからこそ、ランさんを始めとしたみんなは戦う道を選んだ。想像を絶する暴挙を止めない限り、世界のどこへ逃げても明日なんてない。


「なあ……ミラリア。いきなりで悪いんだが、あんたもアタイ達に味方してくれないか? アタイも実力は知ってるから、味方してくれるとマジでありがたくて……」

「元より、私もそのつもりで来た。友達だっているのに、見殺しにはできない」

「あんたならそう言ってくれると思ったが、ありがとうな。だったら早速、今この砦を指揮してくれてる人にも紹介しよう」


 ここまで聞かされて、何もしないというわけにもいかない。楽園の力が暴挙へ繋がってるのなら、それを止めるのも私の役目。

 スペリアス様の願いや私の生い立ちだってある。でも、一番の理由は『私がそうしたい』から。

 力になれるなら力になりたい。ランさんにはポートファイブでお世話になったりされたりしたけど、この繋がりを絶やしたくない。

 ランさんも笑顔で受け入れてくれて、私を砦の奥にある一際大きな建物へ案内してくれる。

 どうやらこの中に砦のリーダーさんがいるみたいだけど――




「……ん? お、おお!? もしや、貴様が連れてきたのはミラリアか!? な、なんというタイミングで……!?」

「ふえ? ア、アキント卿?」




 ――なんと、そこにいたのはカムアーチの上流貴族、アキント卿だった。

 この人も久しぶりで懐かしい。シード卿も交えたカムアーチでの思い出が蘇る。


「え? ふ、二人って知り合いなのか?」

「その様子だと、貴様も知り合いみたいだな。吾輩もミラリアがカムアーチへ立ち寄った時、世話になったものだ。あの日も今にすれば懐かしいが、またこうして危機的状況で再会するのも巡り合わせか」

「砦のリーダーさんって、アキント卿のことだったんだ……」


 ランさんに引き続き、またしても知ってる人との再会。アキント卿も驚きつつ、快く私を受け入れてくれる。

 なんでも、エステナ教団がポートファイブを船で襲った際、アキント卿率いるカムアーチのみんなが助けに入ったとのこと。その流れでエステナ教団への対抗勢力を結成し、現在こうしてアキント卿を筆頭として砦を建設したとのことだ。


「スーサイドへ視察に行っていたシード卿から連絡を受けてな。おかげで吾輩もいち早く動くことができた。確か、ミラリアもスーサイドで一緒だったと聞いてるが?」

「うん。あの時からエステナ教団はかなり危険だった。偽物のエステナを作ったり、みんなをゾンビにしたり……」

【そういえば、そのシード卿はどこに? この砦にはいないんですか?】

「今や世界はエステナ教団の檻へ変貌しつつある。スーサイドからの帰路にあるシード卿もこちらへ向かっているが、中々思うように辿り着けんそうだ。他にも世界各地と連携して戦備を整えてはいるが、現状は劣勢か……」


 ただ、現状としてはよろしくない。アキント卿も苦い顔をしながら語ってくれる。

 ポートファイブとカムアーチ以外の戦力を集めても、エステナ教団はさらに上を行く動きを見せてくる。技術や戦力面で頭一つ抜けてるらしい。

 エステナ教団にはエデン文明がある。かつて世界を滅ぼした楽園の力があれば、数が増えた程度では簡単に揺るがない。

 この世界で神と称されるエステナを生み出すほどの力を前にして、普通の人間が太刀打ちできるとは思えない。


「正直、物資も何も足りてないんだよね……。今は耐えられてるとはいえ、このままじゃジリ貧さ……」

「強いて幸いと言えるのは、この地が守りに適しているということか。ここを見つけることができなければ、もうとっくに前線は崩壊していたであろうな」

「むう? この砦がある場所が何か特別ってこと?」


 それでも戦えてる理由の一つとして、砦のある場所が関係してるらしい。でも、何がどうして?

 ここって、元々はエスカぺ村があっただけだよ? どこがどう特別なの?




「この地は要塞として機能させるには地理的にも適している。おまけにかつて誰かが作ったのか、壊れた結界支柱もある。それを再利用したからこそ、強固な守りを維持できておるのだ」

ここまでの守りを実現できたのは、かつて楽園から逃れた者達の力あってこそ。

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