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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
強欲との決着をつけるべき約束の地
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太古より続く世界は、丸い星として

この世界の名称はあえて出さないスタンス。

【ところでこの箱舟だが、どこまで飛ぶつもりだ?】

「燃料や機能を確認して、ウチの方で適当に考えてみたわ。ちょいと世界をグルッと回っても問題あらへんな。それで行こうと思うとる」


 スペリアス様との話も落ち着いたからか、ツギル兄ちゃんはどれぐらい飛び続けるのか気になったみたい。

 これはあくまで練習で、いつまでもただ飛んでるわけにはいかない。レオパルさんにも算段はあるらしく、地図を見せながら説明してくれる。


「ロード岩流島がこの辺りで、今ウチらがおるのがこの辺や。このままずーっと東に進んで、またロード岩流島に戻る。それが上手いこといけば準備を整え、今度こそ楽園やな。その場所については、またミラリアちゃん達も教えてくれや」

【流れとしては理解したが、この練習ルート自体が大丈夫なのか? ち、地図の端まで行って、それでどうやって戻って……?】

「……ハァ。これやから素人はアカン。地図に描いとるだけがルートやないで? ウチらはそもそも海賊。誰よりも世界を回った一団や」


 現在、箱舟は東方向をずっと進んでるみたい。地図で見ると、すでに右端に到達してるとのこと。ただ、そこでツギル兄ちゃんが不安そうに声を漏らす。

 確かに地図の端まで行って、グルッと回る理由が分からない。だけど、レオパルさんは自信満々な語り口。ため息交じりに説明を加えてくる。


「地図の端まで行くとな、今度はほぼほぼ反対方向に出てくるんや。途中に崖も奈落もあらへん。少なくとも、地図の右端と左端は繋がっとる」

「まァ、よっぽど海に精通してねェと知らねェ話かァ。不安がる気持ちはあるだろうが、焦ることなんてねェよォ」

【そ、そうなのか……。こういう地理に関しては、やっぱりロードレオが強いな……】


 驚いた。世界って、そんな風になってるんだ。

 地図の端と端は繋がってて、行き過ぎて落っこちることはない。だからグルッと世界を一周することもできる。不思議。


 ――あっ、でも、私も一つ思い当たる節がある。


「ねえねえ、スペリアス様。あなたが私に見せてくれた青い真ん丸って、もしかしてこの世界だったの?」

【ほう、気付いたか。その通りじゃ。昔の世では当然じゃったが、世界とは球体のように丸いのじゃよ】

【成程……。世界が丸いから、端というものは存在しない。地図で示されてるのは、あくまで見やすくしただけってことか】


 浮島で見せてもらった歴史の記憶でも、最初に青い真ん丸が出て来てそこへ侵入するように映し出されてた。

 どうやら、昔の人は世界をもっと遠くから見ることができたらしい。世界の形までハッキリ確認できるなんて、実に興味深い。


「やっぱり、世界って広い。まだまだ知らないことや見れてないこともたくさんある。……全部が終わったら、まだ行けてない世界にも行きたい。その時はツギル兄ちゃんとスペリアス様も一緒」

【……ああ、そうだな。それこそお前が人間として思い描く夢だもんな】

【ほう、ワシも一緒させてくれるのか? それは面白いものじゃ。浮島からでは限度があるのでのう】


 そんな世界をもう一度歩みたい。全てが終わって平和になった後で、気兼ねなく旅に出たい。

 まだ知らない場所へ行って、まだ会ってない人に会う。旅は辛いものだけど、新しい発見は好奇心をそそる。

 今度は旅先の風景で絵を描いたりしても面白いかもしれない。そうした未来を思い描くと、一層身も引き締まる。


 ――この世界に二度目の破滅は歩ませない。私自身のためにも食い止めたい。




「へっ!? 今サラッと聞こえたんやが、この世界って丸いんかいな!? せ、せやったら、下の方におったらアカンで!?」

「お、おいィ! 総員、世界の上の方を目指すんだァ! だ、だがどっちだァ!? あ、焦って分からねェ!?」

【……安心せよ。落ちることがあるならば、とっくに海などは干上がっておる】




 そうしたしんみりとした誓いも、レオパルさんとトラキロさんの大慌てで流れちゃう。気持ちは分かるけど落ち着いてほしい。

 スペリアス様も言ってるけど、多分世界は左右どころか上下の概念も思ってるのとは違うっぽい。

 私が見た青い真ん丸だって、暗闇の中に浮かんでた。世界の摂理とは、私達では想像もできないものなのだろう。


「二人とも、お話を聞くのもいいけど、箱舟の方も意識してほしい。詳細は任せるしかないから」

「あ、ああ、せやな。ミラリアちゃんがこない落ち着いてんのに、ウチらが慌てとったら世話ないで」

「周囲の様子も確認しとかねェとなァ……。オレとしたことが、焦っちまったか」

「いや、お前って大概焦りまくって――ん? 何や、あれ? けったいなもんが見えんで?」


 まあ、摂理だ何だは今考えることでもない。箱舟も安定してるとはいえ、きちんと進んでるのか気になる。

 ちょっと偉そうだけど、これに関してはロードレオを頼るしかない。変に騒いでも信用はしてる。

 期待も込めてお願いすると、落ち着きを取り戻したレオパルさんが何かを見つけたみたい。望遠鏡を取り出し、前方の確認を始める。


「大丈夫? 箱舟に問題?」

「いや、箱舟は関係あらへん。ただ進行方向にあんのは……煙か? えらい激しく上がっとるな?」

「今、地図の座標とも合わせてみせまさァ」


 どうやら、箱舟の進行方向にある大陸で煙が上がってるみたい。遠目だけど、私にもいくらか確認できる。

 煙は一本だけではなく、何本も上がってるみたい。もしかして、火事なのかな? だとしても、激しすぎないかな?

 箱舟が飛んでるのはかなり上空で、なのに確認できるほど立ち上る黒々とした煙。なんだか、見てると胸騒ぎがしてくる。


 ――それに煙が上がってる大陸だけど、遠目でも私には覚えがある。




「あそこは……ディストール王国やエスターシャ神聖国のある大陸みてェでさァ」

「ディストールに……エスターシャ……!?」

【つまり、俺とミラリアが旅立った大陸……!?】

世界を回り、ついに始まりの地に戻って来たが……?

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