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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
古代技術を守護せし豹と虎の拠点
424/503

{暴挙が形となる時}

章終わり三人称幕間。


楽園の脅威は現代で今も牙を剥く。

◇ ◇ ◇



「首尾はどうだ? カーダイス」

「ご安心くださいませ、レパス王子。すでに各大陸へも牽制を行い、必要な戦力もここディストールへ集結しつつあります」


 ここはディストール王国にある王城の中。かつてミラリアが処刑されかけた玉座の間で言葉を交わすのは、現在のエステナ教団を動かすレパスとカーダイス。

 互いに情報交換しつつ、顔に浮かぶは不気味な笑み。その身をエデン文明で人外へと成らせた者達は、今もなお人の道を外れた強欲のままに歩みを続けている。


「生体改造により、妾どもに従順な下僕も増えております。かつて聖女だったエステナについても、スーサイドの時より安定してきました。このまま行けば、世界そのものを手にする日も遠くはないでしょう」

「エデン文明――楽園の力は素晴らしいな。これほどの力を有して、何故に楽園という小さな箱に留まるのか。……まあ、そんなことはどうでもいい。いずれ世界を手にした後、楽園にだって攻め入ってみせるさ。僕達ならば、世界の全てを手中に収められる」


 苦痛を阻害し、永遠を生きられる肉体。それらを手にしても、レパスとカーダイスの欲望は止まらない。暴走した欲望は世界へと手を伸ばし、全ての支配を望ませて行く。

 今や世界のそこかしこでエステナ教団の暴挙が巻き起こり、戦火が今の時代を包んでいく。ミラリア達の手が届かないところで、どんどんと破滅の未来は広がっている。

 その姿はかつてゲンソウに欲を抱き、怠惰の破滅を進んだ世界と同じもの。太古の意志が恐れて止めようとした力を使い、再び同じ過ちを繰り返そうとしている。

 痛みを感じないのは肉体だけでなく、心さえも同じとなったまさに怪物。レパスとカーダイスを筆頭に、楽園の狂気は暴走を続ける。


「この調子ならば、私も役目を果たせそうです。あなたにも頑張ってもらいますよ」

「…………」

「ああ、そうでした。もう返事もできないのでした。……本物もあなたと同じぐらい従順であれば良かったのですがね」


 それらを横で目にするのは、エステナ教団司祭にして引き金となったエデン文明を与えたリースト。傍らには偽神となったフューティが控えるも、まさに傀儡として佇まうのみ。

 そのためなのか、リーストが語るのはほぼ独り言。ここまでしてレパスやカーダイスに力を与え、エステナ教団に世界へ牙を向けさせる理由を述べ始める。


「私は痛い思いも辛い思いも嫌なんです。かつて楽園で一人の魔女にそそのかされ、地上へ降り立ったのは過ちでした。簡単に帰ることはできなかったものの、一つだけチャンスをもらえました。……ようやく、その時が近づいているのです。楽園の力を外の世界へ至るまで示せる日が」


 誰も聞き耳など立ててはいない。それでもリーストは一人吐露するように言葉を紡ぐ。


「エステナの変化は想定外でしたが、この約束を果たせれば私の願いは叶います。楽園の皆様も随分面倒を押し付けてくれましたし、こんなことをやる意味も分かりません。……ですが、あと少しです。あと少しで私もかの地へ戻ることが――」


 リーストが願うはエステナ教団でなければ、レパスやカーダイスのことでもない。黙って動かないフューティに対し、自らの決意を改めるように語り続ける。

 ただ、その姿を決意と評するのはあまりに横暴か。リーストが案じるは己の身のみ。


 ――リーストがここまで事を進めた理由がそこにある。




「さあ、始めましょう。全ては私があるべき場所に――楽園に帰るための布石です」



◇ ◇ ◇

この章はここまでです。

100万字超えてしまいましたが、もうちょっとだけ物語は続きます。

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