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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
古代技術を守護せし豹と虎の拠点
416/503

最後の守護者は、燃え上がる仁義と共に

闘技場にド派手と姿を見せたチャンピオン・レオパル!

ミラリアは軽く置いてけぼりだが……?

 羊羹と溶岩を間違えたことに呆れ顔でツッコまれつつも、これにて戦うための舞台は整った。

 二刀の魔剣を携えた私に、ポン刀を握ったレオパルさん。喧嘩祭りという名の試練が、今最後の幕を開けようとする。


「キャァァア! レオパル様ぁぁあ!」

「こっち向いてほしいしー!」

「俺にもどうか、その熱い眼差しを……!」

「フッ、慌てるんやないで、マイスイートキャッツ。みんなとのお楽しみは、この決闘が終わった後や。今はその観客席から、ウチの雄姿を見守ってくれや」


 ただ、何と言うか……真面目にやってほしい。

 観客席のスイートキャッツへ向けてポーズを決めて語ってるけど、私だってもうリングの上にいる。

 戦いの場に立ったのなら、対戦相手を無視するのは無礼というもの。アホ毛もイライラでムズムズする。


「レオパルさん、真面目にやって。私、あなたの道楽に付き合うためここへ来たわけじゃない。箱舟という目的のため、用意された試練を超えてここまで来た。……いつものおふざけも、今回ばかりは許容できない」


 内心のイライラも我慢したくないし、ここはハッキリ述べてしまおう。レオパルさんは今も観客席へ万歳しながらアピールしてるけど、私からすればただの道楽おふざけ。

 変態性は鳴りを潜めても、結局レオパルさんはレオパルさんか。こんなのだと、箱舟への期待も薄まって――




「……道楽? おふざけ? ああ、すまんな。ミラリアちゃんにはそない見えたか。せやけど、ウチは本気も本気の大マジや。……こないして用意したステージと歓声で、テンション上げてなんぼやとは思わへんか? あぁ?」

「ッ……!?」




 ――しまうんだけど、背中を反らしてこっちへ顔を向けたレオパルさんに思わずゾッとする。

 変なポーズにビビったとかでもない。ふざけて見えても、語る言葉と表情には気持ちの強さが滲み出てる。


「ウチが守る箱舟の恐ろしさは、誰よりもウチが理解しとる。何も知らん素人が口挟めるもんやない。……それを託すチャンスを与えたったんやで? こんぐらい派手にやらへんと、興が削がれるとかそないなもんやあらへんやろぉお!?」


 どうやら、この舞台こそがレオパルさんの本気を示してるとも言えるみたい。私の方へ体も向き直しつつ、怒号のように声を飛ばしてくる。

 こっちも黙って聞くしかない。口を挟める空気じゃない。何より、レオパルさんは本当の本気で箱舟のためここにいる。


「箱舟っちゅうのは、ただ空飛ぶだけやない! 下手をすれば、この世界の歴史さえひっくり返す脅威を秘めとる! ウチにかて怖いもんはある! コルタ学長と……『箱舟を動かしてしまった未来』や!」

「……コルタ学長が混ざってるのは別として、あなたがそこまで恐れるとは予想外。そこまで凄いものなの?」

「ああ、せや! だからウチはスーサイドの文献でサイボーグといったカラクリの技術に手は出しても、箱舟だけは手を出さんかった! ウチの目的はニャンニャンパラダイスにあり! 世界がどうのなんざはお断りや!」


 レオパルさんは間違いなく箱舟を知ってる。単純に『楽園へ辿り着く手段』ではなく『秘められた脅威という可能性』まで理解してる。

 微妙に変な言葉も混じってるし、同列に扱うのもどうかとは思う。でも、それがレオパルさんにとって本気の基準にもなってる。


「アレを作った人間は『後世が正しく使ってくれること』を願っとった! 他のカラクリとは別格や! ほんなら、ウチもその気持ちを引き継がな気が済まへん! サイボーグという力を与えてくれた恩人に、仁義を欠く真似はウチかてできひん! ニャンニャンパラダイスとは別枠として、箱舟を求める人間が現れれば最初から番人になる所存やった! たとえ相手が何者であれや! ……せやから、覚悟はできとるな?」

「……あなたの本気は理解した。箱舟を守る意志も、番人としての務めも」

【こんな変態でも、通すべき筋はあるってことか。ミラリア相手にここまで啖呵を切るほどにな……!】

「それらを理解した上で、私はレオパルさんへ挑む。……こっちだって、箱舟を前に引き下がれない」


 わざわざ喧嘩祭りなんて試練を用意しただけのことはある。かなり空回りしてたけど。

 今のレオパルさんはまさしくもって、箱舟を守る最後の番人だ。カラクリに手を出した最初の理由がニャンニャンパラダイスってのはどうかと思うけど。

 いや、細かい理屈とかもういらない。やるべきことは一つだけ。


 ――レオパルさんを倒し、箱舟へと辿り着く。リングの上で漲る闘志は途絶えない。




「……ほんなら、ウチも御託抜きで相手さしてもらうで。おい! 火炎タービン回せや! 一気にフルパワーのスーパーハイテンションやでぇぇええ!!」

「ヤンス!」

「ゴンス!」

「アリンス!」




 レオパルさんも私の意志を汲み取り、決闘本番へと移り始める。合図を出すとトラキロさんの時と同様、上の方で幹部トリオが何かをグルグル回し始める。

 それと同時に下方で弾けるように激しくグツグツを始める溶岩。おそらくはこれこそがレオパルさんの切り札か。



 ボゴンッ! ジュオォォォオ!!



「ウチは炎のエネルギーをベースとしたサイボーグ! 滾る溶岩の熱量は、そのままウチが動くための熱量として働く! 見せたるわ! ロードレオ海賊団船長の本気を! 箱舟最後の番人っちゅう……ウチが背負いし仁義と宿命をぉぉおお!!」

「よ、溶岩を……取り込んだ!?」


 リング上まで弾けた溶岩はそのままレオパルさんへと取り込まれていく。それによるダメージがないどころか、トラキロさんと同じくどんどん力が漲っていくのは一目瞭然。

 溶岩という炎のエネルギーを手中に収め、まさに過去最強となったレオパルさん。心根に悪ふざけもなく、心理面でも隙がない。


「最後の番人として、本当に相応しい……! でも……負けない!」

【ここで負けたら、これまでの苦労も水の泡だ。こっちも余計な思考はここまでにするぞ。……闘志を滾らせろ。奴の熱量に負けるな】


 そんな強敵にも臆することなどしない。二刀の魔剣を整え、ツギル兄ちゃんの言葉で気合も込める。

 箱舟は楽園へ至る手段とはいえ、この戦いは激戦が必至となる。ここが一つの局面というのは間違いない。


 ――リングも互いの闘志もまさに絶頂。今、箱舟をかけた最後の戦いが始まる。




「さあ、行くでぇ! トラキロォ! ゴング鳴らせやぁぁああ!! 決闘開始やぁぁああ!!」

「分かってまさァ! オーディエンスにしても、まばたきする暇なんてねェぜェ! はたして勝つのは……番人レオパル船長かァ!? 挑戦者ミラリアちゃんかァ!? レディィ……ファァァイトォオオ!!」



 ゴウゥゥゥウン!!

レオパルだって今回は大真面目の大本気!

箱舟最後の番人として、カラクリ仕掛けの豹が牙を剥く!

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